潜入捜査
活動報告より。
旦那様と騎士団メンツのお仕事ぶり♪
~フルール王国騎士団・特務師団屯所にて~
緊急に集められた特務師団メンツが会議をしている。
「南隣の国にいるカレンから手紙が来た」
何の変哲もない安っぽい生成りの封筒を見せながら、サーシスが言う。
「うおっ?! 復縁か?!」
「うわー。団長やっぱり鬼畜!」
「奥様に謝れ~!!」
「違うわっ!! ……ごほん。落ち着け。カレンが、南隣の国の怪しげな動きについて連絡を寄越してきたんだ!」
団員たちの暴走に、ついむきになるサーシス。
「なーんだー」
「よかったー」
「オレ、奥様を慰めて差し上げようかなぁって思ったんだけどなぁ」
「要らんわっ!!」
またもやつっこむサーシス。
「で? 元カノは何て言ってきたんですか」
「ああ、そうだった」
このままでは話が進まないと思った冷静なユリダリスの言葉に、サーシスが落ち着きを取り戻す。
「南隣の国が我が国を侵略しようと企てているらしい。あちらの第二王子がしきりに洩らしてるそうだ」
「はあ? 第二王子って、いちおう向こうの軍のトップですよね? それが、団長の元カノ……酒場のオンナに漏らしてるんですか? 団長の元カノに入れ込んでるんですか?」
「元カノ元カノ連呼するな! ……まあ、そういうことだ」
サーシスとユリダリスの会話を聞いて、それまでゆるい雰囲気だった特務師団メンツが、きりっと真面目な顔つきに変わった。
「でも、団長」
サッとアンゼリカが手を上げて発言を乞う。
「なんだ、アンゼリカ?」
「その情報、確かなんでしょうか? 敵国の陽動作戦かもしれませんよ」
「まあ、確かに。それは否めないから、こうして会議を開いているんだろ」
「失礼いたしました。まさかそのタレコミを盲目的に信じて、まんまと向こうの術中に嵌るとかはないとは思いましたが」
「……お前、毒含みすぎだろ」
「いえ~?」
何気に毒まみれの発言をするアンゼリカ。
じと目で睨むサーシスだが、アンゼリカはしれっとそっぽを向いて知らん顔をする。
「……まあ、とりあえず。火のないところに煙は立たない。ということで、これからしばらくは裏取り捜査に専念してもらう」
「「「「「ラジャ―!!」」」」」
~王都郊外・作戦のための基地にて~
「商用でやってきている商人ということで。なるべく目立たないように」
ちょっとくたびれた感じの衣装に身をやつす、特務師団員たち。
「多分団長が一番目立つって」
「そんな美形の商人、一発で顔を覚えられますよ~」
「もっとモサイ変装しないと。ということで、ハイこれ!」
というわけで、もっさい黒縁瓶底メガネをつけられるサーシス。
その姿を見て項垂れる団員(男ども)。
「もさいはずの黒縁瓶底メガネをも凌駕するキラキラ補正……」
「くそう! どういうことだよ?!」
ガスッガスッと、手近にあったクッションを殴る団員たち。
「まあお前たち、そう落ち込むな。ほら、いつもより『ちょっと』はキラキラオーラが減ってるだろうが」
「副団長。激減するはずのアイテムをつけても微減ですよ? 俺ら泣いちゃいます」
「ま、ちょっとは変身できたということで、よしとしとけ」
もさいメガネをも素敵アイテムに変え、インテリメガネ男子に変身したサーシスに、悔し涙を流す団員たち。ユリダリスは苦笑しながら団員たちを宥めた。
~潜入・酒場にて~
「意外といい身なりしてるやつらも多いんだな」
密談を終えて、それとはなしにまわりを観察してポツリとこぼすサーシス。
「そうね。ここはわりと上客の来るいい店だからね。旅行客も多いし。だからあなたたちもちっとも目立たないわよ。むしろ馴染んでいるというか。……さすがね」
フッと微笑みをこぼすカレンデュラ。
ポツリポツリと会話を交わす二人を、変装した団員たちが見ている。
この店には、サーシスと男性騎士二名と男装したカモミールとアルカネットが、いつも一緒に来ている。
「この方たちも、ホント、綺麗な男の人にしか見えないわ。ここはそっちもイケる人が多いから、気を付けてね」
カレンデュラが、男装した二人を見て意味ありげに微笑む。
「大丈夫ですよ。返り討ちで再起不能にしますから」
しれっと無表情のまま怖い事を言うカモミール。
「できる実力があるから怖い」
「だよな」
ボソッとつぶやく男性騎士。だがすぐさまカモミールにぎろりと睨まれてすくみ上る。
「ちゃんと男に見えてよかったです」
大ジョッキになみなみと入った発泡酒を豪快にあおるアルカネット。こちらも無愛想。
「どう見ても『男』だよな」
「どちらかっつーと『漢』だけどな」
「それに、団長の元カノを見る目がギラギラしてっから、どう見ても元カノ狙いの男にしか見えねぇ」
「「なんだと?!」」←いちおう変装中なので男言葉。
カレンデュラを見る目がギラギラするのは、サーシスとカレンデュラに間違いがあってはならないと監視するためだったのだが。ギラギラ違いである。
今日もありがとうございました(*^-^*)




