前公爵夫妻の証言 ~襲撃したよ♪~
活動報告より加筆修正。
本編56、57話目の裏話♪
お義父様とお義母様がにやにやと見守っていますw
「なんと?!」
ロータスから来た最新の報告書を手に、思わず震えてしまった前公爵。
「いきなりそんな大声を出されて、どうなさったんですか?」
そして、夫のただならぬ雰囲気に、持っていたティーカップを取り落しそうになる夫人。
フィサリス公爵家の領地にある別荘は、先程まではいつもと同じ穏やかな昼下がりの時間だったのが、王都の公爵家からもたらされた手紙のせいで一変した。
夫人に見守られながら食い入るように、何度も何度も手紙の文面を読み返した前公爵は、それでもなんだか狐につままれたような、呆然とした面持ちで紙面から顔を上げた。
そして、じっと自分を見つめる夫人の、何事かと言わんばかりに揺れたスターサファイアの瞳をまっすぐに見ると。
「これが驚かずにいられるかってんですか!! あいつが……サーシスがとうとう愛人と別れたっていうんだよ!!」
「えええっ!? 本当ですの?!」
手紙の内容を要約して妻に伝えると、口に手を当て、目を最大限にまで見開き驚く夫人。
「ああ、ロータスの報告書にしっかりはっきり書いてあるよ!! 読んでみるといい」
驚き固まる夫人に手紙を差し出すと、夫人は黙ってそれを受け取り目を走らせた。
先程公爵家から届いたばかりのロータスからの報告書には、数日前に息子とその愛人が公爵家のエントランスで繰り広げたという修羅場のことが、しっかりはっきり事細かく記されていたのだった。
シュラバを経て数日後には愛人は屋敷を出ていったこと、二人はきっぱりと関係を清算してしまったこと――サーシスが捨てられる形になったのはご愛嬌だが。
今はもはや誰の目から見ても、サーシスがヴィオラにご執心だということ。
報告書を読む夫人の手も震える――。
「「これは、この目で確かめなくてはいけませんねっ!!!」」
そして、二人の瞳が爛々と輝いた。
臨戦態勢の息子夫婦よりも、むしろナチュラルな普段の二人を見てみたいと考えて、自分たちの公爵家訪問はギリギリまで伏せておくことにした。急に王宮に呼び出されたという野暮用も、いい口実になった。
ワクワクしながら公爵家に着けば、今回はサーシスとヴィオラに仲良く揃って出迎えられた。
前回サーシスは、遅れての登場だったのに。しかも庭園の方からなんて、それまでどこにいたのかバレバレすぎるという。
ヴィオラの肩を抱きご満悦なサーシスに、いつも通り朗らかに微笑むヴィオラ。
「ふむ。えらく距離が近づいてますな」
「ほんとほんと。サーシスの顔がだらしないわ、やーねぇ」
こそこそニヤニヤしながらひそかに二人を観察する前公爵夫妻。
さらに観察を続けると、サーシスが、ヴィオラの機微に敏感になっているのが目に見えて明らかだった。ヴィオラの、ちょっとの表情の変化も見逃さないのだ。それはいつも気にかけているからこそできるというもの。
「あいつが人を気遣ってるぞ!」
「まあ!」
「……自分の息子なのに、何この反応って思うけど」
「……そうですわね」
ヴィオラはこれまでと変わりなかったのに、サーシスの変化が著しくて驚く二人。
ヴィオラのために改装されたと聞いていた別棟にもお邪魔したが、愛人がいた形跡はきれいさっぱりなくなっていた。別棟を改装するにあたっても、ヴィオラの好みを使用人たちから聞き込みリサーチして取り入れたというのも驚いた(ロータス情報)。
「まさかの使用人全員グルでの愛人隠しも疑ったけど、本当に影も形もなくなっていたな」
「まるで最初から存在していなかったのようでしたわね」
「それに、なんだろう……。あいつの様子が変わった、よな?」
「ええ!! ヴィーちゃんにすっかりメロメロになってますわね、あの子」
「ああ。ロータスの報告でも、ヴィオラの存在のおかげで、あいつが屋敷のことに関心を示してきているらしいし、仕事も、前よりきっちりこなして、いい方向に向かってきているようだし?」
「ほんと、ヴィーちゃんにはいい意味で裏切られっぱなしね~。また綺麗になってましたよ!」
「会う度に変わっていくね、ヴィオラは。そしてとうとう、あいつまで陥落させてしまったとは! いやはや、面白い子だ」
息子の株はちょっと回復傾向かな? くらいなのに対して、ヴィオラ株はうなぎのぼり。
完全に義両親をも陥落させた――。
「こんなにできたお嬢さんは他にはいないよ」
「あんな子が私の娘だなんて、鼻が高いわぁ! うふふふふ」
「この先、またあいつが何かしでかした時は、しっかり私たちでフォローしてあげようね」
「当然ですわ!!!」
そしてここでも『ヴィオラ>サーシス』という格付けが確定したのだった。
今日もありがとうございました(*^-^*)




