お花のキモチ
活動報告より♪
本編53話目あたりのお話。壊れたお飾りの代わりに持ってこられた鉢植えさん視点(無生物!!w)
私は花。
低木樹とでもいうのかしら、背はそんなに高くなくて、小さな丸い葉っぱは青々と、その間に小ぶりな桃色の花をみっしりとつけている。ティアカスっていう名前なんだけど、そんなマイナーな名前、庭師チームの人くらいしか知らないでしょ。
気が付けば私はこのおうちの温室にいたわ。
年中同じ暖かさで快適なのよ。寒すぎるとか暑すぎるって、私には向かないの。
ベリスさんという男前さんが私の世話をしてくれる。男前なんだけど無愛想。でも私を手入れするときの扱いはすごく丁寧だから心地いい。うん、サービスして花を二割増しで咲かせるか。ついでに若干の延命。
いつもはベリスさんと庭師さんくらいしかこの温室にいなかったのに、ある時から女の人がやってくるようになった。若い、かわいい人。新しい庭師さんかしら?
新人さんだからか花には触らせてもらってないみたい。せっせと雑草なんかを抜いている。
あの綺麗な手で手入れされたら、きっと気持ちいいだろうなぁ~。
あ、ベリスさんもいいんだよ。ほら、庭師チームは男の人ばっかりだからね、たまにはね、女の子もいいなぁって。
楽しそうに雑草を抜いたり、名もない花(これは触れてもいいみたい)を大切そうにどこかに持っていったり(※1)している。
ごくたまーに、私の下に生えた小さな雑草を抜いてくれたりもするんだけど、とっても丁寧に、根っこが残らないよう慎重に抜いてくれるのよね。なかなかやるじゃない。
しばらくして、私が植え替えられることになった。
ちょっと前にベリスさんと誰か、ベリスさんよりもキラキラしたカッコイイ男の人が、温室を見て回って私を見つけてそう決まったのだ。
植え替えられたら、あの女の人に会えなくなるのかなぁ。ちょっと寂しいなぁ、と思っているうちに、いつもの素焼きの素っ気ない植木鉢から、綺麗な模様が浮き彫りにされた真っ白の素敵な鉢に植え替えられてしまっていた。
あ、おめかし。ちょっとテンション上がったわ。
しばらくすると、あのキラキラの男の人と、あの女の人が私のところにやってきた。
あら、あの女の人とキラキラの男の人は知り合いなのかしら。キラキラの男の人の、女の人を見つめるまなざしが柔らかいところを見ると、これは惚れてますな。
「これ、ですか?」
「そうです。これをエントランスに飾ってはどうかと思いましてね」
二人の話からすると、どうやら私は『エントランス』というところに引越しをするみたいねぇ。温室のように快適ならいいけど。
「……はい! すっごくいいと思います!」
他にも何かいろいろ話してたみたいだけど、とりあえず女の人は大賛成したみたいで、花がほころぶように笑っている。かわいいわね、この子。それを見たキラキラさんも嬉しそうに微笑んでる。あら、意外といい感じなんじゃない? この二人。
でもそこなキラキラの男の人! 花より綺麗な微笑みってどうよ。
そのまま、私はお屋敷のエントランスといわれるところに引越しした。
あれから毎日私の世話は、あの女の人がしてくれる。
そしてこまめに形を整えるために、ベリスさんもやってくる。うん、なかなか快適よ。よし、出血大サービス。五割増しで花を咲かせちゃうよ!
そして。
「ただいま帰りました、ヴィオラ!」
「お帰りなさいませ、旦那様」
キラキラさんと女の人の距離も観察中。いい感じなんだけど、微妙な距離を感じるのよねぇ。
まったく。いつになったらゼロになるのかしら。
※1 ヴィオラ専用の庭に持って行ってます
今日もありがとうございました(*^-^*)