うちの娘(こ)に限って
活動報告より♪
ユーフォルビア伯爵家にて、ヴィオラ父とヴィオラ母の会話♪
ほぼ会話のみです。
~ユーフォルビア伯爵家・夫婦の私室にて~
夫婦の私室の長いすで、シスルとフリージアの服の繕いものをする伯爵夫人の元に、ちょっと心ここにあらずな伯爵がふらふら~と寄ってきた。
「ねえ、母さん」
「なんですか? あなた。えらく冴えない顔色ですね。あ、あんまり近くに来たら針で刺しますよ」
ちらりと夫の顔を見て、また繕いものに戻る夫人。
刺されるのは御免なので針の届かない距離に腰かけた伯爵は、ふうぅぅぅ~と大きくため息をついてから口を開いた。
「突然だけどヴィオラに縁談が来てるんだよ」
「ええ? うちのヴィオラに? よそのヴィオラさんじゃなくて?」
「いや、今のところ社交界の若い子でヴィオラはうちの子一人しかいないでしょ」
「あ、そうだったかしら。最近社交界なんて疎くって~、おほほ☆ で、どちらからですの?」
一瞬驚いて手を止め夫の方を見たけれど、すぐ通常運転に戻り、また手元に視線を戻しながら夫人は夫に聞いた。
「切り替え早いね! ……まあそれはいい。それがさぁ、あのフィサリス公爵家からなんだよ」
困惑した声で伯爵が娘の縁談相手を口にすると。
「フィサリス公爵家ぇ?! あの超名門超金持ちしかも当主は美形で有名の?! それ絶対他所のヴィオラさんですわよ、ヴィオラ違いですよ!」
カターンと手にしていた針ごと服を床に落とし、驚愕の面もちになる夫人。
「いやいや、いないって。いても婆さんだし。ちゃーんとうちの、ヴィオラ・マンジェリカ・ユーフォルビアになんだよ」
苦笑いしながら妻をたしなめる伯爵だが。
「まあああ?! 何この天変地異の予感!!」
「え? また領地が危機に瀕しちゃうのか?!」
普段は冷静な妻の動揺に、自分の一緒につられてしまった。
「……落ち着きましょうか」
「……そうだね」
「でもヴィオラはそんなに社交界に出たことありませんよ? 公爵様と面識なんてなかったと思うんですけど」
「そうだよね」
「それにうちの娘、素はいいけどとびぬけて美人だとか天才だとか、そんなもてはやされるような才能は持ってないですよ。社交界の噂なんかに上ったことないし。むしろ存在忘れられてる感じだし」
「うん、何気にひどいけどそうだね」
冷静に自分の娘を評価する夫人と、苦笑いになる伯爵。
「それがなぜ、超名門・超金持ち、しかも超美形で有名な公爵様から縁談が来るんでしょう? 公爵様って、夜会でお見かけするときは、たいていお一人だったりアルゲンテア家のバーベナ様をエスコートしていらっしゃるから、私、てっきりバーベナ様とご結婚されるんだと思ってたんですけど」(※1)
「う~ん。ちょっとワケありっぽいからかなぁ」
「ワケあり?」
「うん。職場(※2)でチラッと聞いたところによると、公爵様、どうやら愛人がいるらしいんだよ」
「え?! 愛人?!」
「そう。もう結構長い付き合いらしい」
「……それはワケありですね」
「だからかな。縁談が成立すれば、我が家の借金を肩代わりしてくれるという条件を提示してきてるんだよ」
「……ますますワケありですね」
「どうしたもんかねぇ」
「そうですねぇ」
二人して考え込む。
「……ここは本人に決断してもらおうか。私たちがどうこう言うのも気が引けるし。いやなら断ってもらっていいしさ」
「そうね。お金のことならこれからまた頑張ればいいことだもの。ヴィオラの気持ちを優先しましょう」
そう決断した伯爵夫妻だった。
~そして~
あっさりと縁談を受けてしまったヴィオラに驚く伯爵夫妻。
「……受けちゃったね、縁談」
「ほんとですね」
「大丈夫かなぁ?」
「社交マナーも、ダンスも、『いちおうできますレベル』でしか身につけさせてないけど、大丈夫かしら」
「え、そこ?!」
「というのは冗談だけど」
「あ~びっくりした」
「まあ、あの子のことだから上手くやりそうでけど。結構飄々としてるもの」
「そうだね。見守ってあげようね」
「ですね」
※1 ヴィーちゃんちは貧乏なので、公爵様が愛人さんを伴って出席するようなちょっとフランクな夜会にはでていません。
※2 ヴィーちゃんのお父さんは、いちおう王宮に職があります。王宮の庶務的部署で、はっきり言って閑職・薄給ですw 窓際です。
ありがとうございました(*^-^*)