団長と副団長
活動報告より
特務師団の団長執務室で、旦那様とユリダリスさんの会話。
本編30話目くらいかな?
「なんかさ、あれなんだよ」
書類を団長の執務机の上に山ほど乗っけて部屋を辞そうとしたら団長が声をかけてきた。勤務時間中だがタメで話しかけてくるってことはプライベートなこと。オレとサーシスは仕事でこそ上司・部下の関係だが、同時に気の置けない友人でもある。
「何だよ、急に」
開けかけたドアをまた閉めながら、オレは問い返した。なんだよそのチラチラ。言いたいことがるならさっさと言っちまえよな。
「うん、まあ、釣った魚がでかかったってことだ」
「はあ?」
これまたいきなりものすごい漠然とした事を言われた。んなもん、生返事しかできねーだろ。それでも構わずサーシスは続ける。
「今まで全然気にもならなかったことがどんどん気になるわけよ」
「で?」
まだ曖昧模糊としたもの。もう少し吐かせれば何かわかるかもしれないと思い先を促す。
「それもいい方向にさ」
「ふーん」
「で、元々持っている方の粗が目立ってきてさ」
釣った魚で、実はそれが大物で。元から持ってるもののあらが目立ってきた? ふふん、なるほど。
「それさぁ、ひょっとして奥さんと愛人の話?」
「……」
沈黙は肯定だよな?
「あ、図星か」
「……」
「まあ要するに奥さんが実はめっちゃいい子だったということに気付いちまったってわけか」
そーいや、こないだ王宮で行われた夜会でこいつの奥さん、すっげー株上げてたよなぁ。中身もよくて、社交もこなせて、おまけに美少女ってか。そりゃ気になるわな。男だもの、そこは否定しねー。
「……そうだ」
「で悩んでるってわけ?」
「まあな」
「そりゃ、どう考えても奥さんだろ」
「なんでだ?」
「文句の一つも言わずに健気に家を守ってくれてるんだろ? えらいよなぁ。それに世間に認められた正妻だし?」
できた正妻と、楽しみだけを追う愛人。そりゃどっちがいいかわかるだろ。今まで自分のやってきたきたこと、ちったー反省すりゃ、正解なんてすぐ出るでしょ。それにうすうす気づき始めたからこそ、こうして悩むんであって。
「そうだな」
「ま、こんなところでぐだぐだ考えててもよくないぞ~。さっさと決断しねーと大変なことになると思うけどな~」
あの気の強そうな愛人のことだ。正妻ンとこに堂々乗り込んでいって修羅場演じんじゃね?
「ぐぐっ……」
「そんな健気な奥さんに愛想つかされる前に何とかしろよ~」
いろいろ思い当たることがあるのか、呻る団長に「じゃな~」と後ろ手バイバイしながら、オレは団長室を後にした。
きょうもありがとうございました(*^-^*)




