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ある貴族の証言 ~あの日の夜会~

活動報告より

「フィサリス公爵殿、今日はご正妻様と一緒に参加するそうですよ」

「ほう! ご結婚なされてから初めてお目にかかりますね。いや、なんともお美しい奥様でしたなぁ!」

 

 そんな会話が、そこかしこでされている。

 今日は国王主催の夜会。王宮内の大広間には、国中の貴族がひしめき合っていた。

 ド派手に結婚したくせに、結婚後も正妻をうっちゃって相変わらず愛人を夜会に同伴していたフィサリス公爵が、初めて正妻をともなって夜会に参加していると聞いてみんな興味津々だ。かくいう自分もそうだけど。まあ王宮での夜会だから、格式を考えたら正妻同伴なんて当たり前のことなんだけど。


 ざわつきが一瞬静まり返り招待客が入ってきた。――噂のフィサリス公爵夫妻だ。


 ホリゾンブルーのお揃いの衣装を着た二人に、会場はくぎ付けになった。主に公爵夫人に。

 公爵は相変わらず無駄にキラキラしい美形だが、その横に立つ夫人の凛とした佇まい、その美少女っぷりに、皆の視線は吸い寄せられた。


「こんなに綺麗な令嬢いたか?」

「夜会、初登場デビュー?」

「いや? 確かユーフォルビア家の令嬢だろ? あんまり社交界に顔出してなかったから、正直どんな人かよく知らなかったなあ。まさかこんなに綺麗な人だったなんて!」


 そんな感嘆の声が男どもから囁かれれば、


「まあ! なんて素敵な方なんでしょう!」

「あの美形公爵様のお隣に並んでも、少しも引けを取らないなんて!」


 いつもなら公爵を見てキャーキャーと黄色い声を上げている女どもですら夫人に見とれ、なおかつ称賛までも捧げている。

 いつも公爵が連れいている艶めかしい愛人とは正反対の正妻に興をそそられた私は、さっそくダンスの申し込みをした。ああ、順番待ちしたともさ!

 少しはにかみながら、それでもふわりと微笑み快くダンスの申し入れを受け入れる公爵夫人のかわいらしさに、私は一瞬めまいがした。


 めっちゃかわええ~!! ……こほん。つい本音が出てしまった。


 少し儚げな雰囲気をまとう夫人に、ここは私がしっかりとエスコートせねば、と心に誓ったのだが。

 

 ……おい。どういうことだよ。めちゃくちゃダンス上手いじゃねーか!! エスコートどころか、余裕ぶっこいてたらこっちが恥かくっつーの!!


 どんな曲でもダンスのステップは完璧、ややもすればリードされてしまうくらいに上手。交わす会話も控え目で好感が持てる。何気ないしぐさも上品で隙がない。

 

 結論から言うと、正妻殿は完璧なレディであった。

 

 なんであんな浮気者の嫁がこんなにできた女なんだろう? ……結局世の中顔と金ということか。そうなのか。

 やさぐれた気分になったのは致し方あるまい。うん、私もあの奥方のような上玉を探そう。……身の程をわきまえてだけど。


今日もありがとうございました(*^-^*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] >結局世の中顔と金ということか。そうなのか。 金で買ったようなものだから、半分は正しい。 ただ奥方の格を【ここまで】上げさせたのは 愚夫ではなくデキる使用人一同だ。 ……雇用してる訳だ…
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