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侍女は敏腕ネゴシエーター?

 弟のティンクトリウスを身代わり……げふげふ、料理人として推薦するという方向で話を進めようということが決まりました(私たちの中で)。あとは私が上手く話を運ぶだけです。


「じゃあステラリア。旦那様たちをよろしくね」


 奥様奥様! 本音がダダ漏れてますよ!

 旦那様とユリダリス様だけに任せるのを不安がってましたもんね。

「違う! ヴィー、そうじゃない。逆逆!」

「ああ、失礼しました。サーシス様、交渉頑張ってください」

 出かける前に旦那様とじゃれ合う奥様は、昨日よりも元気そうです。

「リア、今日は大丈夫?」

 仲良くじゃれ合う主人たちをほのぼのしながら見ていると、ユリダリス様がこっそり耳打ちしてきました。


「もちろんですわ。お任せあれ」


 大丈夫。この交渉は絶対に成功させますから。




 久しぶりの王宮。かれこれ何年ぶりかしら?

 今回は『奥向き』の女官の雇用に関してなので、王妃様と一の姫君・アルテミシア様と話をつける……じゃなくて、話をすることになりました。

「私たちで話をつけようか?」

「ありがとうございます、旦那様。できればわたくしが話すのをお許しくださいますか?」

「ああ、いいけど……」

「大丈夫ですわ。姫様たちの扱いには慣れてますもの」

「そうだな」

 そう言うと旦那様とユリダリス様はクスッと笑いました。

 旦那様のお気遣いはありがたいですけど、ほんとに私一人で大丈夫ですのよ。きっと旦那様は優しく姫様たちに言い含めるでしょうけど(いや、絶対そんなことない byユリダリス)、あの方たちにはズバッとハッキリ言わないといけないんです。


「急にお召しがかかってびっくりしてます。女官でしたら他にもたくさんいるでしょうに、なぜわたくしなんですか?」


 遠回しは時間の無駄。私は直球で聞きました。

「だってできる女官はアリーが連れて行っちゃうんだもの、こちらの締まりがなくなると思って〜」

 王妃様が笑顔で言ってるけど、笑って誤魔化そうって魂胆が丸見えですからね。

「こちらの女官は一流の者ばかりです」

「リアほどハッキリズバズバ意見できる子がいないから〜」

「誰のせいでこんなキャラになったと思ってるんです?」

 そう言ってちらりとアルテミシア姫を見ると、

「ごめんなさ〜い!」

 キャッと言って首をすくめています。自覚あればいんですよ。

「それに、わたくしはこちらにいますユリダリス様と結婚しましたので、そう簡単にロージアを離れるわけにはいかないんですよ? そのことも加味しましたか?」

「「ごめんなさい。すっかり忘れてました」」

「やっぱり」

 うなだれる王妃様と姫君。こんなことだろうと思ってましたよ。

「ほら、でも、王宮なら通えるじゃないの」

 めげない王妃様がトライしてきました。

「家が公爵家の敷地内にあるというのに、王宮に通うんですか? 公爵夫人が(・・・・・)肝煎りで建ててくださった家から、公爵夫人に会わずして王宮に通え、と。ああ……奥様が悲しみます……」

 王妃様たちお気に入りの奥様のことを出すと、

「それはいけないわ! そうね、今やリアはヴィオラ付きの侍女ですものね」

 ごめんごめんと慌てる王妃様たち。

 まあこれで王宮に戻ってこいと言われることはないでしょう。


 しかし、ここは完璧に諦めておいてもらわないと……ね!


「わたくしが公爵家にいれば、姫君お気に入りの公爵夫人の近況を、いつでもお伝えすることができますのよ?」

「なん……ですって……!?」

「公爵夫人だけではございません。天使のような公爵令嬢のご様子もご報告できるんです」

「まあ……!」

「公爵様や公爵夫人の許可が下りれば、お茶会などのセッティングも可能!」

「「魅力的!!」」


 私は、私が公爵家にいることによるメリットを挙げました。

 ピシャーンと雷に打たれたように固まるお二人。どうです? 魅力的でしょう?

 しかし、まだもう少し追いメリットしときましょう。

「無下に断るのも忍びないので、わたくしのかわりに弟を参上させます」

「弟?」

「はい。今回のお輿入れに際して、料理人もお連れするとお聞きしました」

「ええ……そうなのよ。まったくわがままなんだから」

「む、向こうの料理に慣れるまでなんだから!」

 王妃様の氷の視線にうろたえる姫君。

「まあまあ。我が弟は料理を極めるために修行してまいりました」

「あら、そうなの」

「その腕を今発揮しないでいつするというのでしょうか?」

「そうねぇ」

「きっと陛下や王妃様の舌を満足させるに違いありません!」

 ……多分。

 ややハッタリ気味だけど、ティンなら大丈夫でしょ。

 私は王妃様と姫君をじっと見ました。


 さあ、ご決断を!


「確かにリアの言う通り、減った分の料理人も募集しないといけないところだったから、渡りに船ね。その弟を王宮に呼んでちょうだいな」

「わかりました!」

 

 王妃様は即決してくれました。

 これで私の王宮行きの回避、そしてティンクトリウスの王宮就職が決定です。

 なぜか旦那様とユリダリス様が小さく拍手していました。




「では早速捕まえて献上いたしますね」

「「え? 捕まえるの?」」




*** おまけ ***


サ「お茶会を開いて姫たちを呼ぶとか、絶対許さんからな」(*`へ´*)

ユ「黙れ」

ありがとうございました(*^ー^*)

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