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近衛副隊長とちびっこ王太子様

活動報告より♪

本編172話目に出てきた、旦那様とちびっこ王太子様のやり取り。

「フィサリスこーしゃく。さいきんヴィオラを見ていないが、ヴィオラはどうしてるんだ?」


 僕が王宮の廊下を歩いている時にガキンチョ……もとい、ディアンツ王太子殿下に出会ってしまって開口一番がこれだった。

 後ろに教育係の爺さんを従えているので、これから図書館にでも行って勉強するのだろう。

「屋敷で元気にしておりますよ」

 今は悪阻で体調が悪いだけで、病気というわけではない。

 僕は殿下に心配をかけないよう、悪阻のことは伏せておいた。

「じゃあなぜパーティーにこない?」

「ヴィオラはあまりそういう催し物が好きではありませんのでね」

「う〜ん。じゃあきょうせいてきに参加させたらいいのか?」

「無理強いはよくありません」


 殿下がヴィオラに会いたいと駄々をこねた。

 懐妊が発覚してからは大事をとって屋敷で安静にしているので、最近はどこのパーティーにも参加していない。悪阻がひどいので参加する気もなさそうだし。

 しかし殿下、そろそろヴィオラを諦めろよ。十以上年上で、しかもすでに人妻なんだぞこら。

「そもそもなんでヴィオラはこーしゃくなんかがいいんだろう? 顔か? 金か?」

「………………」

 真剣な顔して言う殿下。ナニこの子コワイ。

 僕が呆れてものも言えない間に、

「顔ならまけないぞ。ぼくだってみんなにかわいいかわいいってモテモテだ!」

「…………」

「お金だっていっぱいある!」

「……それ、ほぼ他人の金ですからね」

 さらに言い募る殿下だけど、こら教育係のジジイ。もっとちゃんと教育しないと、とんでもない子になるぞ。

 僕が殿下の後ろに控える教育係のジジイをじとんと見ると、苦笑いを返してきた。笑ってる場合じゃないからな! ジジイには後でしっかり話をしておこう。

 そんな殿下の頭越しの僕と教育係の無言のやり取りの間にも、殿下はいろいろ作戦を考えている模様。

「おくりものをしようかな。ヴィオラの好きなものを」

「ヴィオラはものにつられませんよ」

「う〜ん、じゃあやっぱり呼び出してあまえるさくせんで……」

「だから、強制はよくありませんから」

 下手な考え休みに似たり。僕が次々に殿下の案を却下するもんだから、


「じゃあ、どうしたらヴィオラはぼくのお嫁さんになってくれるんだ!?」


 とうとうキレる殿下。


「…………はぁ」


 もはやこの生意気ちびっこがバカワイイとすら思えてきた。

 やれやれ。仕方ないなぁ。

「ヴィオラはすでに私の妻ですからね、殿下のお妃にはなれないんですよ」

「じゃあきょうせいてきに……」

「強制はよくありません、ってさっきから何回も言ってますよね? 聞いてました?」

「聞いてたけど無視した」

「やっぱりか! こほん……まあいいでしょう。そもそもヴィオラは今懐妊中なんです。だから王宮での催し物に来れないんです」

「かいにん、ってなんだ?」

「赤ちゃんができたのです」

 首を傾げてキョトンとする殿下に僕が『懐妊』の意味を教えると、みるみる顔色を変えた殿下。

「ヴィオラに……赤ちゃん……? 誰の子だ!?」

「私のに決まってるでしょう!!!」

 よその子だったら大問題だ!! 僕が若干イラっとして叫ぶと、


「ヴィオラがこーしゃくのものになってしまった〜〜〜!!」


 そう叫び、突然ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた殿下。ふむ、ちびっこには衝撃の事実だったか。

 殿下はびゃーっと泣きながら、教育係の爺さんに抱きついた。

「ヴィオラがぁ……エグッ、こーしゃくのぉ……」

 しゃくりあげながら爺さんに泣きついているが、

「はいはい、ヴィオラ様はとっくに公爵様の奥様ですよ。殿下がどんなにヴィオラ様をお好きでも、それは叶わぬ恋というものなのですよ。赤さまがおできになられたなんてとても喜ばしいことではありませんか。公爵様とヴィオラ様のお子様なら、きっと可愛らしい赤さまでしょうね」

 としっかり釘を刺してくれた。ナイス、爺さん! 今回はいい働きしたな。

 爺さんが味方してくれないと知った殿下は、泣くのをやめてムクッと顔を上げ、そして。

「ヴィオラが来れないならぼくが会いに行けばいいんだな」

 なんて言い出した。


 いやいや、なんでそうなる。


 ほんとに殿下は突拍子もない。

 僕は一つ大きなため息をついた。もちろん聞こえよがしに。

「殿下の外出となれば、手続きだの警備だのという手配に時間がかかりますからやめてください。それに妻は悪阻で体調がよくありませんから、しばらくゆっくりさせてやってください」

 余計な仕事増やすな、と言外に含めつつぴしゃりとはねつける。

「ぼくが行けばきっと体調もよくな……「りませんよ」」

 まだ足掻く殿下にかぶせる。


 はあ、もう。


「殿下を縛り付けてもいいからしっかり見張っておけ」

「わかりました」

「近衛からもお守りをつけておく」

「よろしくお願いします」

 僕が爺さんに言うと、爺さんも大きく頷いた。多分同じことを考えたよな。このガキンチョなら、こっそり抜け出すとかやりかねない。

 近衛から誰か……そうだな、アルカネットたちをつけておくか。あいつらならチビッコの扱いも上手いし、何よりヴィオラの体調最優先するからな!


ありがとうございました(*^ー^*)

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