そしてまた、いつもの光景
活動報告より♪
ただまったりしているヴィオラと旦那様。本編172話目の旦那様視点。
いつもならとっくに目を覚まし、朝食をとろうかという時間。
「おはよう」
「……おはようございます……むにゃ……」
懐妊発覚から、いつも睡魔に襲われているヴィオラは、僕のおはようにも半眠りのまま答えてる。
僕の腕枕に頬を摺り寄せ、まだ眠そうにしているヴィオラに自然と笑みがこぼれた。
「まだ眠い?」
「眠いです……」
答えながらも目を閉じているヴィオラ。これ、もはや起きる気がないな。
「じゃあまだ寝てようか。今日は僕も休みだし、一緒に微睡んでいよう」
「ロータスに怒られませんかぁ?」
「大丈夫大丈夫」
僕はそう言って、腕の中のヴィオラを抱えなおす。ヴィオラの重みが幸せの重みだと思う。
ロータスといえば、領地から上がってくる資料がたくさんあるとかなんとか言ってたけど……きっと山積みされてるんだろうな。まあいいや。後で何とかする。今はこの幸せな時間を堪能させてほしい。
そしてもう一度、幸せな微睡に落ちて行った。
お昼近くになって、ようやく起き出したヴィオラは、
「わぁ~……また寝すぎちゃいました……」
とうなだれている。
「別に、たまにはいいじゃない」
「よくないですよ〜。朝寝すぎると夜眠れなくなって、また悪い夢を見る悪循環が待ってます!」
「それは困る」
またおかしな夢を見てうなされてしまうのはよくない!
「でしょう?」
「……というのは冗談。今はゆっくりしろって、お腹の子が言ってるんだよ」
いつも僕が起き出して仕事に行く時間は体調が悪いのかあまり顔色がよくないんだけど、昼近くになると調子が出てくるようだ。少し安心した。
「……そういうことにします」
渋々だけど納得したようだ。眠いのを無理して動く必要もないし、そもそも無理をしないでほしい。
「よろしい。今日はいい天気だし、庭に出ようか。気分も晴れるだろう」
「そうですね!」
「何か食べれそう?」
「……」
悪阻というモノのせいで、すっかり食が細くなってしまった。もともと小食なのに、こればかりは僕だけでなく使用人たちも心配している。
今も僕の問いかけに、つつーっと視線を逸らせてしらばっくれている。
「無理にたくさん食べなくてもいいから、食べられるものを食べなさい」
「はあい」
「じゃあ今日はヴィーの庭で食べようか」
「いいですね!」
ヴィオラが嬉しそうに微笑んだ。
ヴィオラの庭に敷物を敷き、比較的食べやすい果物を持ってくる。「フルーツなどは食べやすいようで、よくお召し上がりになっておられます。無理に食べさせても戻したりしますから、食べられるものを食べられるだけでよろしいと思います」と、カルタムが言っていたのだ。
クッションをたくさん置き、冷えないように気を付ける。
そうっとそこに座らせると、僕はヴィオラを後ろから抱えるようにして座った。これならヴィオラの背中も寒くないし、僕も暖かいし幸せだしで一石三鳥だ。
「あら? お花、増えてます?」
新しく土が掘り返された後のある区画を見て、ヴィオラが首を傾げた。
そこには赤から桃色にグラデーションする花と、桃色からしろにグラデーションする花が植えられていた。さすがはヴィオラ、自分の庭の変化をすぐに察知した。
「うん、増えたよ。この間の出張の時にかわいい花を見つけてね。隣国特産の花だっていうから、分けてもらってきたんだ。それが昨日着いて、ベリスに植えてもらっておいたんだよ。ヴィオラへのお土産。遅くなってごめん」
「わあ! うれしいです!! ありがとうございます!!」
そう言って僕の腕にキュッと抱き付くヴィオラは、きっと今頃満面の笑みなんだろうな。
『新しい種類の花が欲しいとおっしゃっていましたから、これは喜ばれると思います。気分転換すれば悪阻のつらさも軽減できます』とはベリスの助言だ。
「気分がよくなったところで、果物でもどう?」
「はい! いただきます。でもこれじゃ届きませんよ~」
ヴィオラは僕に後ろから抱えられているから、動けないのはわかってる。
もちろん。
「はい、口開けて~」
「ええ~?! 自分で食べれます~!!」
「だーめ」
そう言って果物の載った皿を僕だけが届くところに置き、一つつまんでヴィオラの口に持っていく。
「もうっ」
口ではそう言いながらも、ぱくっと口に入れるヴィオラ。耳が赤くなっているのもかわいいな。
こうして何でもない、でも幸せな一日はまったりと過ぎていく――。
「あっ…………」
「どうした!?」
「食べ過ぎて気持ち悪いです」
ええ……。ダリア、助けてくれ!
ありがとうございました(*^ー^*)




