使用人さんsの訓練風景
書籍掲載分ですので、加筆なしです
〜早朝〜
カンカンカン、と小気味よく公爵家の裏庭に響くのは、木刀のぶつかり合う音—ではなく。
「ほらほら脇甘い!」
「なんのこれしき!」
二人が手にしているのは、掃除などに使うホウキ。
攻め入られ態勢不利かと思われた侍女が巻き返す。カカカカカッと目にも留まらぬ早業で打ち返して、またイーブンの形勢に持ち直した。
朝の体操……ならぬ体慣らしの手合わせ。
そこかしこで二人三人組となり、手にしたホウキで打ち合いの稽古をする侍女たち。
「練習、やめ!」
凛々しいダリアの掛け声でピタリと打ち合いは終わり、
「では今日も一日頑張りましょう。全員持ち場につくように」
「「「「「はい!」」」」」
次の一声で各々仕事場に散っていった。
〜午前中〜
シネンシスの木の下に佇むロータス・カルタム・ベリス。それぞれ手には得意の武器、長剣・包丁・斧(!)。
「これでいいんですね」
ロータスがベリスに確認すれば、
「はい」
頷くベリス。
「ではさっさとやっちゃいましょうか」
ニヤリと笑うカルタム。
そして−−。
ダンッ! ベリスが重々しく斧を木の幹に打ちこめば、バラバラと落ちてくるシネンシスの実。
それをめがけて、
シャラン! ロータスが剣を一閃、二閃とさせる。
シュッシュシュ! カルタムが次々に包丁やナイフ、フォークを投げた。
ズ……ン、と重い音を立てて倒れるシネンシスの木。
「「「またつまらぬものを切ってしまった……」」」
そう言って三人が元の態勢に戻った時、その足元に転がってきたのは、すっぱり半分に切られたものやナイフやフォークの刺さったシネンシスの実だった。
「植え替えたい古木はこれだけですか?」
ロータスが剣を鞘にしまいながらベリスに聞けば、
「はい」
頷くベリス。
「これだけあれば当分掃除に困らなさそうですね。奥様が喜ばれます」
「果汁はデザートにでもしましょうか。奥様が喜ばれます」
「種を蒔くのを奥様にお願いすれば、喜ばれますね」
男たちはいそいそとシネンシスの実を拾い上げて、本館に戻っていくのだった。
ありがとうございました(*^ー^*)




