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program-9- 平行

1階の北校舎にある教室、″生徒相談室″。

体育館前の廊下の突き当たり、生徒玄関の前のその教室で猿川航大は目覚めた。

生徒相談室は、普通の教室よりは保健室に近い。

主に生徒のカウンセリングや悩み事の相談を行っている。

航大は目覚めてすぐに記憶を辿った。

学校に登校した後、タブレットの更新があって、先生とゴーグルをつけた大人が2年3組の教室に入ってきた。それ以降の記憶が全く無い。

(???どこだ?)

見覚えのない教室で見覚えのない赤いタブレット端末が机に置いてある。

航大は早速タブレットの電源をつけてみた。

押してから2秒ほどで電源はついたようだが、画面は真っ黒のまま。が、すぐに青い文字で


ルール説明


と表示された。

妙な字体で書かれたその字に航大は薄気味悪さを感じていた。

何故か震えているその右手の指先で恐る恐るその文字をタッチする。


長々と文が表示された。

一行一行指先でなぞってゆっくりと読んだ。



<ルール説明>

:今から学校内にいる2年3組の生徒37人で戦います。

:一人一人、この"タブレット"に書かれた能力を使えます。

:能力は身体の一部分が横の数字分強化されます。

:勝利条件は相手のタブレットを破壊(UP)すること。破壊されたものは消滅(DOWN)します。

:このタブレットは縦12cm.横7cmまで縮小できます。側面のボタンで変更可能です。

:勝負時間は50時間です。

:最終勝利者一人には多額の賞金が与えられます。

以上、健闘を祈ります。

2年3組 15番 猿川 航大

能力・NAIL ↑17




最初は疑っていた航大だが、校舎内の妙な静けさに感化され、信じ始めていた。

(戦うのか!?しかも負けたら消滅!?)

航大は普段からあまり人を疑うことができない性格で、いたずらかもしれないという発想はなかった。

ずっといい人と言われ続けてきた航大だが、自分では疑うことをしないほど臆病なだけ、と考えている。


航大はNAILと↑17の意味、戦いについて、消滅などさまざまな仮説を立ててみた。

5分ほど深く考えたとき、前の扉を開けて蜂須直幸が生徒相談室に入ってきた。


「オッス!航大!」

「ハッチじゃん!」

蜂須と合流した航大は、一気に安心した。

だが、クラスメイトと会った事で戦いについてリアリティを帯びてきたため、少しの不安要素もあった。


「航大さ、、良かったら協力しない?」

「全然いいよ。俺もよくわかんないし」

生徒会副会長の頭の良さとバスケ部副部長の体力、おまけに整った顔立ちで女子の人気もある蜂須

が一緒なら百人力である、そう考えた航大はすぐ承諾した。


「実は俺さ、、このゲームのこと結構知ってるんだよね。」

蜂須のその言葉に航大は驚きを隠せなかった。

「え、それマジで?」

「まー信じてくれるかわかんないけど。俺と協力してくれるんなら話しとく。」


航大は食い気味で聞いた。

「信じるよ!色々教えてくんない?」

蜂須が一瞬困った顔で答えた。

「じゃあその前にあと何人か仲間に入れようぜ。」

「あぁ、オッケー。」


蜂須が生徒相談室を出たので、航大もタブレットを大事そうに抱えて蜂須について行った。

隣の生徒会特務室を指差した蜂須は

「ここが俺の最初の教室ね。」

と言った。

生徒会特務室は他の教室と違って扉に窓がついていない。しかも廊下から教室を見る窓もない為、情報を話し合うには最適であろう。


生徒会特務室を越えて、階段をはさみ1年4組の教室がある。

その1年4組には豹原真優美がいた。

豹原はすぐに蜂須と航大に気づく。

「おっ、蜂須と猿川じゃん。」

その明るい声に航大は更に安心した。

「おうす豹原~。良かったら俺と航大と協力しねぇ?」

豹原は首を素早く上下に振った。

「決定だな。俺的にはあと1人仲間、ってか協力者が欲しいかな。」

1年4組をでた3人は一度、生徒会特務室の中で作戦を立てる事にした。

3人は入ってすぐの灰色の大きめのテーブルに少し腰をかけ、タブレットを置いた。

航大が聞いた。

「そろそろハッチの情報教えてよ~」

「ウチもしりたーい。」

窓際を見ていた蜂須の目は少し虚ろだった。

しばらく黙っていた蜂須が口を開いた。

「、、、もう一人、もう一人仲間ができたら言うから。ちょっと俺探してくるわ。待ってて。」

「あ、、おい!」

航大が止めるのも聞かず蜂須は足早に去っていった。

扉が閉まる音が静かに響いた。

さっきまで元気いっぱいだった豹原がおとなしくなっている。

そんな気まずい空気を打破しようと航大が言った。

「ハッチ、本当に知ってんのかなぁ?」

「どうだろ?」

豹原が首を傾げる。

「でも蜂須しか頼れないしね。」

航大がゆっくりと頷く。

起きてから多少の時間が経ったようで、窓から射し込む夕日がより一層強く光っている。

その光が窓枠に反射して航大の目に入る。

「でもさぁ、、、。」

目を細めながら航大が言った。

「ハッチの言い方だと4人いればなんかできるみたいだったよな。」

「確かにね。本当に抜けられたらいいのに、、、。」

航大はうつむき加減でそう言った豹原を心配の眼差しで見ていた。

「なんか豹原らしくないなぁ。大丈夫だって!なんかあったら俺が守る、、から。」

「、、、猿川いい奴じゃん。ありがとう!」

豹原が再び元気を取り戻した安心感と誉められた喜びで航大は笑顔を隠しきれなかった。

そのにやけた顔を見て豹原が笑った。

しばらく和やかな雰囲気で二人が話していると、生徒会特務室の扉が開いた。

二人に緊張が走り、一瞬無言になる。

が、その不安も一気に無くなった。

扉から入ってきたのは蜂須だった。

その後ろを一人の男子生徒が歩いている。

「仲間見つかったぜ~。竜崎~。」

蜂須と一緒に入ってきたのは竜崎我心りゅうざき がしんだった。

黒渕のメガネをかけてインテリな雰囲気の竜崎だが、明るく誰とでも話せる社交的な性格が特徴である。成績は平均的だが、物事を思慮深く考えられ、頭の回転は速い。

「俺なんかで力になるかなぁ?まぁよろしくね。」

「竜崎なら頭いいし全然力になるよ!」

さすが竜崎、女子の豹原からの評価も高い。

「4人になったし、、、俺の知ってる事話す、、か。」

思いつめたような表情で蜂須が語りだした。

「俺が知ってる情報は3つ。まず、今いるここは恐らく″俺らの学校″じゃない。」

「え?それって、、」

皆の頭の中にハテナが浮かび上がっている。

「ちょっと待って。質問は全部話した後な。」

蜂須が話を続ける。

「どこかってのわからないけど、、精巧に作られた簡易的な建物かもしれない。戦いの中で建物が壊れたら困るだろうからな。ただ、地形は完全に同じだと思う。」

身振り手振りをしながら話す蜂須を3人は真剣な眼差しで見つめている。

「二つ目は、このゲームについて。いや、、これはゲームというより、、殺しあいだな。」

3人の顔が一気に強ばる。

「このタブレットはいわば命を具現化したような物。これが壊れたら、消えてなくなるんだ。正確には死ぬんじゃない、だが、どこにいくかも分からない。それと能力。これは個人差があってなんとも言えないな、、俺の能力はEAR。耳強化だけど、詳しくは分からない。

最後は、、この4人で協力する意味だ。疑ってる訳じゃないけど、へたに人数を増やして裏切られるのは一番まずいからな。」

4人がお互いの顔を見る。

「それに4人だけなら、この殺しあいから抜けられる、、。クラスメイト全員が殺し合わずとも4人だけなら生き残れる。その方法は、、、悪い。まだ言えない。」

蜂須が申し訳なさそうな表情をした。

「じゃあ、、。」

両手をパチンと叩くと、蜂須が言った。

「質問ある?、、よな。」

「じゃあさ、」

航大が手を少し挙げる。

「俺の、、能力なんだけどさ、、」

航大はタブレットの画面を指さした。

「ネイルって、爪だよな、、。能力の出しかたとかあるの?」

「そうだ、いい忘れてた。能力は常に発動されてるのと、きっかけがあれば発動するタイプの二つに分けられる。航大の能力は多分きっかけタイプ。頭の中で爪が強化されるのをイメージするんだ。」

「イメージ、、か。」

航大は自分の右手を見つめる強くイメージした。

「ネイル!!」

航大がそう言うと、澄んだ金属音が鳴り、両手の爪は長い刃となった。

豹原がきゃっ、と驚いて仰け反る。

竜崎と蜂須は顔には出していないが、内心結構驚いている。

「スゲぇな、、イメージを声に出すのも大事かもな。」

蜂須が頷いて言った。

不思議そうな顔の蜂須は、航大の手と爪をベタベタ触っている。

そして、10秒ほどで爪は元に戻った。

「じゃあさ、うちも質問いい?」

「いいよ豹原。何?」

「あのさ、蜂須はこの色んな情報をどこでゲットしたの?」

「それ俺も思った。」

竜崎がメガネをクイッとあげた。

「それなんだけどさ、昨日俺にメールがきたんだ。知らないアドレスから。それには今日の戦いの事が色々書いてあった。で、いたずらだと思ってたんだけど本当なんだなって。」

「なるほど、、。でもなんでハッチにだけメール送ったんだ??」

頭の中に疑問が増えるばかりの航大が喋った時、蜂須が急に驚いた。

「うぉっっ!」

「どうした?」

航大が心配している。

「いや、ゴメン。なんでもない。、、にしても、なんで俺にメールが来たんだろうな、、。」

「最後にひとついい?」

「オッケー竜崎。」

「ここが俺らの学校じゃないってのはメールで来た訳じゃないでしょ?」

「あ、ああ。そう、それはあくまで予想。俺は生徒会だからわかるんだけどさ、この部屋って普段メッチャ物があんの。でもこの部屋は何もない。生徒会心得みたいなのを書いた紙とかも壁に貼ってあるはずなんだけどな。てか、なんでわかったの?」

「さっきこの学校の説明したとき″恐らく″って言ってたから、ちょっと引っ掛かってて。」

竜崎の洞察力はもはや高校生の域を越えている。その頭脳を活かしてこのゲームを攻略する方法を見つけてくれそうだ。

「なるほど、竜崎頭いいね!ホント頼りになる!」

豹原が竜崎に向ける眼差しは尊敬に似たものを感じさせる。

「じゃあ、、これからやる事を、、、」

蜂須が仕切ろうとした時、体育館の方から凄まじい轟音がした。

「きゃっ!」

豹原が女子特有の甲高い悲鳴をあげる。

「おいおい、かなりデカイ音だぞ。だれかが能力で戦ってんのか。」

さすがの蜂須も困惑気味である。

「そんなすぐ戦う奴なんて、、、あ。」

竜崎が何かに気付いた。が3人は竜崎の声に気付かなかった。

「俺、見てくるよ。」

そう言って生徒会特務室を出ていこうとする航大の後ろを豹原がついて歩いた。

航大が後ろを向くと豹原と目があった。

「うちもついていくよ。」

「いいけど、、恐くないの?」

「大丈夫!かな、、へへ。」

少し笑った豹原の顔を見て航大もにやける。

二人は特務室を出ていった。



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