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Program-7- 決着

ステージの台車上では鹿沼が暇そうにしていた。

「まだ終わらないの??どうせ負けるんだから俺がタブレット壊してあげよっか??」


「いいか航大、アイツの能力が詳しくわかんない以上、近づく時は気を付けよう。そしてすぐにケリを付ける!」

「おう!」

勇牙と航大は左右に別れステージまで走る。

すぐに鹿沼は両手にパイプ椅子を持ち、航大と勇牙にそれぞれ投げてくる。

勇牙は能力で4mほどジャンプをして避けた。航大は素早く横に移動しかわした。

二人は徐々にステージへと近づいていく。

勇牙より速くステージ前まで来た航大は能力を使った。

「ネイル!!」

まるでフォークとフォークをぶつけたような金属音が鳴り、勇牙の目には赤い液体が吹き出すのが映った。勢い良く流れた血に驚いた勇牙はとっさに目をそらしてしまった。

(航大が鹿沼を切った、!?)

もう一度金属音がし、人が倒れる音がした。

すぐにステージの方を見る。

そこで勇牙が見たのは、上半身から血を流して倒れている航大の姿だった。

「航大!!大丈夫か!?」

「ウゥゥ、、ゆう、が、、逃げ、ろ、、フゥフゥゥ、、かみが、、」

「おい!かみってなんだよ!?お」

勇牙が言い終える前に

シャキィィン

とさっきと同じ音がした。反射的に高くジャンプした勇牙は下を見るとその光景に驚いた。

鹿沼の髪の毛全てが細長い針のように尖っていたのである。

勇牙は着地してすぐに航大をかかえ、後ろへジャンプした。人を抱えているせいで、跳べる全力は出ていないが、その状態で鹿沼との距離を10mほどあける。落ちている床の破片やパイプにつまずき、少し体勢が崩れた。

(クッソ、作戦失敗だ!航大を避難させなきゃヤバイ!)

「なんだよ、、思ってたより弱いなーこの能力。と、猿川。しかも勇牙まで逃げるの??」

鹿沼がにやけながら勇牙を挑発する。

勇牙の頭の中で、一気に鹿沼への憎しみが強くなっていった。

「、、か、しい!、、、なの、、」

「あん??泣いてるの??」

鹿沼は小馬鹿にしたような表情で聞く。

「、、こんなの、おかしいって!!!なんでクラスメイトを傷つけるんだよ鹿沼!!」

勇牙は両目から流れ出る涙を必死にブレザーの袖で拭い、そして叫んだ。

「なるほど、、なんも知らないみたいだな。」

鹿沼の意味深な発言に勇牙は一瞬呼吸を止めた。

「まあ、いっか。」

そういうと鹿沼は 、両手にパイプ椅子を持ち、さっきと同じように勢い良く投げてきた。

素早くジャンプをして、更に距離を離した。体育館の入口まで逃げ、横にそっと航大を下ろした。勇牙は、自分のブレザーのポケットから携帯くらいの大きさに縮小させたタブレットを取りだし、ズボンのポケットにしまった。そしてブレザーを航大の腹部に巻きつけた。正しい方法という自信は無かったが、止血をしなければいけないと思ったからだ。

そして、すぐに航大はふっと笑うと、辛うじて開けていた目を閉じた。

「こ、航大!」

航大の胸に手をあてると、一定のリズムを刻む鼓動が感じられた。どうやら意識を失っているだけのようだ。

勇牙は指に付いた航大の血を拭い、鹿沼の方を睨む。

何も言わず、ゆっくりと鹿沼に近づいていく。

勇牙は、こんな時だからこそ我を失ってはダメということは頭の片隅にはあったが、怒りで今にも自暴自棄になりそうである。

半分くらいまで歩いたとき、鹿沼が一度しゃがんだ。そして、金属の擦れる音をがしゃがしゃとならしながら、両手に3個ずつパイプ椅子を持ち上げ、立ち上がった。

顔を上げて、勇牙の方を向き振りかぶると同時に6個のパイプ椅子を投げた。

さすがに全部を避ける事はできない。が、飛んでる2個は軌道を大きく外れ、勇牙には届かなかった。

勇牙は向かってくる4個のパイプ椅子をかわすように高く跳んだ。空中から下を見たあと、顔を上げた勇牙の目の前に、勢い良く向かってくるもう1個のパイプ椅子が映った。

(このままじゃ、、、!)

なす術がないと感じた勇牙は反射的に右手を握っていた。

空中を飛んでいるパイプ椅子と空中を跳んでいる勇牙。

その右の拳を覆う金属体とパイプ椅子がぶつかり、キーンという高い音が体育館の中を響いた。

砕け散ったパイプ椅子の破片は静かに床へと落ちていった。

その破片に遅れて勇牙も床へ着地した。


「なるほど、、能力を2つ持ってるのね??俺と同じようにクラスメイト消したって事か??」

さっきまで真面目な表情をしていた鹿沼が、口元だけ笑いながら聞いてきた。

鹿沼の言葉を無視して、勇牙はステージへと歩く。

広い体育館で、勇牙のゆっくりな足音だけが鳴り響いている。

ステージ上まであと10mほどの距離まで近づいた時、鹿沼が行動をおこした。

ステージの横へと姿を消した。そしてすぐにまた台車上に戻ってくると、パイプ椅子を2個投げてきた。

1個は高くジャンプしてよけ、勇牙めがけて飛んでくるもう1個は、拳の能力で空中で破壊した。

が、その時更にもう1個のパイプ椅子が勇牙の左半身に向かって飛んできていた。

気づいた時は左腕に激痛が走っていた。

肘と手先の真ん中らへんが横に大きく抉れていたのである。かすっただけでこれでは、もし顔面にでも当たっていたら即死だっただろう。

勇牙は、その痛みのせいで、上手く着地できなかった。

床に落下してすぐは痛みで悶絶していた。

腕からでた血が床に滴り落ちていく。

必死に右手で抑え、そのまま鹿沼へと走っていく。

鹿沼の2~3m手前まで走ったとき

シャキィィン

という金属音がして鹿沼の髪の毛は金属へと変化した。。

勇牙は高くジャンプし、空中で左腕を押さえている右手を離した。

右手に押さえられていた血が、解放されたように一気に空中で流れ出る。

流れ出た血は、鹿沼へと降り注ぐ。

ジュュウゥ

という物が焼けたような音がして、鹿沼の髪の能力が解除され普通に戻った。

「ウッ!?前が、、見えない!!お前何を!?」

どうやら勇牙の血が鹿沼の目に入ったようだ。

一歩一歩鹿沼が後ずさりをしていく。少し台車とステージの段差につまづき、ステージ上に上がった。

着地した勇牙は、鹿沼の顔を見た。

おでこから鼻にかけて、大きく爛れていた。まるで火傷を負ったかのように。髪の毛も一気にボサボサになっている。

勇牙の中でとてつもない罪悪感が芽生えた。

だが同時にコイツは消さなければいけないとも思った。

勇牙が鹿沼に近づいていく。パイプ椅子を踏むがしゃがしゃとした音がなった。鹿沼も、その音に気付き後ずさりをした。

鹿沼がステージの一番奥につき、壁と背中を合わせた。

さっきまでの無表情で冷酷な表情とはうってかわって、恐怖を感じているような顔をしている。

鹿沼を追い詰めた勇牙は、情けない顔の鹿沼に聞いた。

「タブレットは、、どこにある?」

その声で勇牙の居場所を判断した鹿沼は、勇牙の腕を掴み、勇牙の体を飛ばした。

勇牙は一瞬何が起きたか理解出来なかった。

さっきまで近くにいた鹿沼が遠くにいて、勇牙は背中から床に落ちた。

体を上げた鹿沼は、ステージ横へとゆらゆら歩いていった。

「待て鹿沼!逃げるなよ!」

少し物音がした後、鹿沼はすぐにステージ上に戻ってきた。

右手にベージュ色のタブレットを持って。

「逃げるだと??俺がか??」

そういって口元だけ笑うと、右手を振り上げた。

床に叩きつけられたタブレットは、ベージュ色の破片になった。


ザァザァァァザ、ザザァァ


「俺の能力はお前なんかに、、やらない、、俺は、、こんなところで!!」

鹿沼が徐々に透明になりながら言った。

「俺は、、こんなところでやられる人間じゃ、、、!!はっ、、じゃあな、、勇牙!!待ってるぜ!」

「待ってる?お前何か知ってるのか!?」

勇牙の質問に答える事なく、鹿沼は消えていった。


勇牙はベージュ色の破片を少し眺めた後、体育館の入口まで走った。

床に膝まずき、両手で航大を抱える。

「航大!!大丈夫か!!」

「あ、、あぁ、、勇牙か、、鹿沼、は、」

「自分でタブレットを壊していったよ。。」

「そうか、、でも、、ヤバイのは、アイツだけじゃ、、ない」

「え?、、どういう事だよ!?」

勇牙が驚いて聞いた直後、


ザァザァァァザザァザァァァ


と音がした。

その音と同時に航大が徐々に透明になっていった。

「おい!なんで航大が!」

「なるほど、、お見通しってわけだ、、、ゴメン勇牙、、足手まといで、、、」

「全然足手まといなんかじゃないって!!航大!」

航大は、勇牙のその言葉に安心したかのように微笑んだ。

そして両手にかかっていた重さが無くなって、航大の姿が消えた。

(航大が、、、でもなんで、、、タブレットも残ってない、、まさか!!)

勇牙の頭の中で1つの仮説が浮かび上がった。

(誰かが航大のタブレットを持ってた!?それで、、用済みになったから、、消された。でも誰が、、?)

考えれば考えるほど疑問は増えていくばかりである。

勇牙の両目からは勝手に涙が流れ出てきた。

航大のいた場所でしばらく黄昏ていた勇牙は、

ふと思い立ち、タブレットの画面をみてみた。

(鹿沼の能力は、、やっぱり追加されてないか。時間は、始まってから3時間半しか経ってない。。)


勇牙は立ち上がり、振り返る事なく体育館を出た。


体育館を前の廊下には豹原と猫羽がいた。

「「獅子岡!!」」

二人の声が重なって勇牙の耳に届いた。

「大丈夫?鹿沼と猿川は?」

猫羽が不安そうに聞いてきた。

「鹿沼はなんとか倒した、、。航大は、、タブレットを壊された、、、」

「え!?」

豹原が大きくリアクションした。


沈黙が続いた後、勇牙が聞いた。

「航大は他にもヤバイ奴がいるって言ってた。。それを言った後に消されたんだ。豹原は何か知ってるんじゃないのか、、?」


豹原はしばらくうつむいていた。

が、決心をしたように語った。

「実は、、、」



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