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Program-1- 転送

西暦2046年、日本の科学技術は過去20年で大きく進歩を遂げた。

特に、学校の授業形態はタブレット端末を使用した″サイバー・プログラム″と呼ばれるものが主となった。

これにより、教科書を製作する紙代が減り、教科書はデータとして購入できるようになった。

2023年より1つの都と16の州で構成されたこの国では、議員の数が大幅に削減され、一度は下がった景気も回復傾向にある。

そんな国″日本″の唯一の都、東京都。

タブレットでの授業が最も発達している東京にある都立堂能学園。

近未来的デザインの白い校舎が快晴の青い空に映えている。




11月9日。

シューン シューン シューン

学園特有の授業を終わらせるチャイムが、2年3組の教室前の大きいスピーカーから聞こえ、獅子岡勇牙(ししおか ゆうが)は教科書兼タブレット端末を白い机にまった。

正午になり、クラスの皆が待ちに待ったお昼ご飯の時間になった。

お腹が空いているのは勇牙も例外ではない。

「勇牙ー、飯買いにいこーぜー」

お調子者らしい笑顔と声で熊井瑞季(くまい みずき)が呼んでいる。


「オッケー、購買な」

席を立ち、瑞季と校舎1階の購買へと向かった。


高校に入ってはや1年半。勇牙はなに不自由なく、学校生活を送っている。

勉強 、運動、外見、身長、ほとんどが平均的で退屈な時もあるが何か大きな事が起きて欲しいとは思っていない。

強いて言えば、青春らしい事をしていない事が気にかかる。


勇牙はが購買で買ったパンを食べながら瑞季と教室で喋っていた。

「てかさぁー、そろそろ彼女欲しいよな~」

瑞季がうなだれている。

「瑞季のキャラと外見ならモテるだろ。」

勇牙は少し冷たく言った。

瑞季は、そーかな?、というような表情をする。

瑞季と同じクラスになって半年、一度も彼女を作っていない瑞季を少し疑問に思っていたぐらいだ。

多分鈍感なのだろう、と勇牙は思った。

「そういえば、あのストーカーの話聞いた?」

瑞季が急に話を変えた。

「知ってるよ。その話100回は聞いたから。」

勇牙が少し笑いながら言った。

すぐさま、そんなに言ってねーよ!、と瑞季がツッこむ。


長く喋っていると、教室の前の扉から2年4組の鳩宮光一(はとみや こういち)が入って来た。

バスケ部エースの鳩宮。身長が180cmほどある。

教室の真ん中らへんで昼飯を食べている勇牙達の前まで歩いて来た鳩宮に

「よう、鳩宮じゃん。」

と、勇牙が少し驚き気味にリアクションをとると

「オッス勇牙ー、こっちのクラスの学級委員って誰だっけ?」

少し焦りながら鳩宮が聞いてきた。

「学級委員?あー、瑞季じゃん」

瑞季が、そういえば俺だった、というような顔をした。

「熊井か。何か学級委員は今日の放課後集まるらしいよー。場所は2階の会議室だって。」

「オッケー。うちの担任何も言ってなかったな」

「忘れてたんじゃね。」

「まーいいや。鳩宮ありがとーね。」

瑞季が少し微笑むと、鳩宮は早足で前の扉から教室を出ていった。

「あれ?そういえば、」

瑞季が疑問めいた表情で聞いてきた。

「勇牙って鳩宮と知り合いだったんだ。」

「あぁ、まぁね」

一瞬感じた違和感、がすぐにそれは消え去った。


あっという間に終わってしまった昼休み。

午後の授業開始のチャイムが鳴った。

次の授業は日本史か、とタブレットを机の中からだした。

そして、電源をつけた。中には数学、国語等全ての教科のデータが入っている。

勇牙はそこで日本史の教科書データをタッチした。

データで様々な時代の日本史を知る事ができる。

まさに歴史のデータベースのようだ。

教室の前の扉から日本史の教師が入ってくる。

皆ダルそうに席についた。


全ての授業が終わり、ホームルームの最後に勇牙の担任が言った。

「そうだいい忘れてた。学級委員の熊井、放課後に」

「知ってますよ。友達に聞いたんで。」

担任が言い終える前に瑞季がすぐ言った。


放課後、部活に入っていない勇牙は一直線に家に帰る。

勇牙にとって一番落ち着けるのはやはり家だ。

部屋で一人でベッドに寝っ転がっていると、瑞季からメールが来ているのに気づいた。

あまりにもぼうっとして携帯をいじっていなかったので、2時間近くそのメールに気づかなかった。

勇牙はすぐに開いてみた。


今日の学級委員会議で話した事についてのようだ。

仰向けで携帯を上に向けながら読んでみた。

どうやら明日、学校のタブレット端末のデータ更新があるらしい。

主にテスト前期間になると、問題集のデータが配布される事がよくある。

テスト範囲のみの問題集が作られ、場合によってはそれが課題になる事もある。

といっても、データ更新自体には10分もかからないので、勇牙にとって気にするほどの事ではない。

勇牙は、適当な返事のメールを瑞季にだして携帯を机に置くと、瞼を閉じて眠りについた。


翌朝、目を覚ました勇牙は、時間を見て焦りに焦った。

いつもより起きる時間が20分以上遅い。

いつも携帯の目覚まし機能を使っている勇牙にとって、一気に機械への信頼を無くした瞬間だった。


遅刻寸前で教室に入ると勇牙以外は皆席に着いていた。

いつも騒いでいるクラスメイトや瑞季までもが、おとなしくしている。


なんか真面目なクラスだな、と思いながら自分の席に着くと、直後に担任の玄武木げんぶぎが入ってきた。

そして、玄武木の後ろをピッタリくっついて歩くようにゴーグルをつけ、白衣を来ているという奇妙な格好の男が歩いていた。

一瞬、教室がざわつく。

玄武木は白い教卓に手をつき、その横を白衣の人が立ち止まり生徒の方を向いた。

「静かに。、、、えーっと、知ってる人もいるかもしれないけど、タブレットの更新を行います。今回のは、いままでと少し違う特別なデータ更新です。」

皆、横の白衣の男に気を取られて、全然玄武木の話が入ってこないようだ。

思っている事はただひとつ、あれは誰だ。

ゴーグル越しで表情が確認できないうえ、白衣を着ているのがより一層気味悪さを引き立てている。


さっきまでのざわざわとした教室が少しずつ落ち着いてきた。

「では、このタブレットから更新データを配信するから。」

玄武木がそう言うと、白衣の男はタブレットを上にかざした。

「本体設定から更新データ受信をタッチして下さい。その後、学校データをタッチして下さい。」

データ更新は初めてではないため、皆スラスラ行えている。

勿論勇牙も。

そのタイミングで、玄武木は白衣の男と同じゴーグルをポケットから出すと、それをかけた。

勇牙はすぐに不審に思ったが、皆タブレットに集中しているせいで気づいていない。

「皆更新できたようですね。ではデータを開いて下さい。」

タブレットの画面に表示された、開く、の文字をタッチした。

その直後、強すぎて直視できないような光が教室を包んだ。

勇牙は意識を失い、机の上のタブレットに頭をぶつけた。


その光景をみた白衣の男は、一人一人意識がない事を確認するため教室内をまわった。

「ふぅ。にしても、なんでうちなんでしょうかね。東京の中ならいくらでも高校はあるのに。」

玄武木が言った。

「そうですねぇ。お答えはできませんが、ヒントくらいなら。このクラスである″意味″があるんですよ。」

白衣の男が言った意味深な発言に玄武木は困惑を隠せなかった。

「あの方々の為にね。」



初投稿です。まだまだ未完成ですが、定期的に更新頑張ります。よければ色々コメント下さい。

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