第60話≡いつのまにか飼い主に
「さて、お兄ちゃん。ちょっとごめんね」
朱音はそう言うと桜の影に入って行った
ドンッドンッ…
桜の影からいくつもの鞄が飛び出してきた
「……えー」
「これで最後っと」
朱音はバックを抱えて飛び出した
「兄上の影は本当に便利じゃの」
「いつも重宝させてもらってます」
二人はそう言うと自分の荷物を分け始めた
「…兄上よ。手伝ってくれると助かるんじゃが」
「…はぁ。ちょっと出てくるな」
「流石お兄ちゃん。やっさしー」
桜は持ちきれない荷物を影に収納してから部屋を出て朱音達の部屋を訪れた
「造りは変わんないんだな」
「そうですね。できるだけクー君と近い部屋を選ばせてもらいました」
桜は荷物を全部出してもらってから部屋に戻った
ガチャ、ガン!!
はぁ…内側にも鍵かかってるし
桜は闇の魔術を使って扉をすり抜け部屋に入った
「すぐ戻るんだからやめとけよ」
「…気持ち悪い魔術持ってるな」
桜は手のひらに水の玉を作った
「じょーだんじょーだん」
「はぁ…疲れた」
桜はベットにダイブした
飛行機がなかなか疲れる…
「そうだな。ジャイアント出てきていいぞ」
「はい」
聖がそう言うと巫女服ジャイアントが影からよじ登ってきた
「とう」
「呼んでないが」
するとやけに露出の高い服を着たゾンビまで登場した
「萩…お前ってやつは…」
「正直、幻滅した」
「ゾンビ、お前その服なんだよ」
桜と聖は弁解をする前に引いていた
「えへへ、新調しました。
どうですか?可愛いですか?ムラムラしますか?襲いたくなりますか?GO TO BED」
ゾンビはそのまま萩をベットに押し倒した
ゴスッ
「乙女の頭に…酷いですよ」
「話を聞かないやつが悪い」
萩の手には“死者の書”があった
どうやら本の角で殴ったようだ
ピンポーン…
桜は誰かわかっているためすぐに出た
「お邪魔しまーす」
来たのはやはり朱音達だった
「俺、今日は疲れてるから早く寝るつもりなんだけど」
「同じく」
「あー、ジャイアント。もうちょっと踏んで」
「んしょ…んしょ」
部屋に行くと息を荒くするゾンビを押さえている萩にジャイアントに背中を踏んでもらっている聖の画があった
「わー、ゾンビちゃん。その服可愛いですね」
「でしょ?このために新調したんだ」
すると、ジャイアントを抜いた女の子達はガールズトークを始めた
「で、今何時だっけ?」
「12時30分…おはようございます」
「おはよう」
実は桜達がホテルについた時すでに12時を回っていた
「ふぁ…眠」
「お兄ちゃん」
いきなり抱きついてきた朱音を見ると服装が変わっていた
「似合う?」
「な、なかなか」
朱音は猫の着ぐるみのようなパジャマを着ていた
「………」
周りを見ると皆、いつものパジャマではなかった
水奈はベビードールを着ていた
その光景に目を奪われた萩はゾンビに抱きつかれていたが桜は無視していた
神楽に関してはパンツにYシャツという格好だった
「すぅ…はぁ…兄上に包まれてるようじゃ」
「それ恥ずかしいから禁止な」
ピトッ
「わ、私には何かないんですか?」
「その…似合ってるよ」
「う、嬉しいです」
微妙な空気がその場を支配した
「お兄ちゃん、寝るんじゃなかったかのー」
「おー、そうだったな。俺は寝るからよろしく」
と、聖を見るとジャイアントを抱きながらすでに寝ていた
「兄上、寝るのじゃ」
「…せやな」
桜はベットに横になった
「お兄ちゃん、腕広げて」
「…なぜ?」
「私も寝たいから」
朱音はそう言うと桜の横に寝転がった
「いや、朱音さん?」
「はーやーくー」
桜は諦めて両腕を広げた
「えへへ、おやすみお兄ちゃん」
「お、おう。おやすみ」
「では、私はこちらに」
水奈も朱音の反対の腕に頭をのせた
「ずるいのじゃ」
「早いもの勝ちですよ」
「うー。わらわはここにするぞ」
神楽は水奈と桜の間に。
桜を抱き枕にする形で収まった
「そこの団子。電気消すぞ」
「頼んだ」
萩が部屋の電気を消した
「こんな形で寝るなんて久しぶりですね」
「これ水奈よ、積めるでないわ」
…俺の寝相で潰れたりしないようにしないとな
「はぁ…はぁ…ご主人様…」
「早く寝ろ」
隣で起きてることは無視して桜は寝た
それから観光する場所は桜の影に水奈達は隠れてバスに乗って移動して水奈達と見て回った
「えー、では時間が余ったので一時間ほど見て回ってください。
集合場所はここにします。絶対に遅れないように」
すると観光だけでは時間が余り繁華街を見ることができるようになった
「さて、ひとまずはぐれて」
桜は始まった早々人混みに紛れてクラスメイトから離れた
「よし、出てきていいぞ」
「今日見たところは私の国の城壁のようでした」
水奈達は影から出て繁華街を見た
「わぁ…面白そうだね」
「はぐれるなよ?」
すると朱音と水奈は手を握り、神楽は髪の毛を使って桜から離れないようにした
「…デートとはほど遠いな」
桜がそう言うと3人はビクリと体を震わせた
「、お兄ちゃんあっち楽しそう!!」
「っと、朱音引っ張るな!!」
桜は朱音、水奈、神楽に引っ張られながら繁華街を回った
「お前ら引っ張りすぎだ」
桜は体力が無くなり近くの露店でジュースを買って休んでいた
「すいません、楽しくなってしまって」
「「ごめんなさい」」
まあ、謝ってし悪気はないからな
「いいって。それより残り時間は?」
「えーと…後10分ほどです」
「それじゃその10分くらい…は?」
桜は魔術がかけられた携帯を手にしている背広を着た男を見かけた
「どうしたんですか?」
「…悪い、後10分は俺にくれ」
その時の桜は悪い笑みを浮かべていた
「だから何があったんじゃ?」
「魔術師っぽい人を見つけたから尾行」
「…いいね、楽しそう!!どの人?」
桜は背広の人を指差した
「なんというか…見るからに怪しいですね」
「だろ?」
と言ったところで男が動き出したので桜も尾行を開始した
「どこに行くんでしょう」
「それを追うのが楽しいんじゃん」
男はどんどん路地裏の奥の方に向かって行った
「後5分です」
「3分になったら教えてくれ」
男は曲がり角を曲がり桜も影から覗こうとした
スッ…ベキベキベキ!!
男は飛ばされて木の箱を完全に壊した
「!?…少し待ってくれ」
桜が覗き見ると一人のボロボロの布を羽織った幼い女の子が5人の男に囲まれていた
「…武器の用意」
桜がそう言ったのも無理はない。
何故なら女の子は腕や頭から血を流していたからだ
「兄上よ。わらわは武器を持ってないんじゃが」
「扇だよな?」
神楽のイメージカラーは…黄色だな
扇に黄色で桜や龍をあしらった渡した
「おお!!兄上、わかっているのじゃ」
「まあね」
「クー君、始まりました」
見ると男達はそれぞれ武器を持って女の子を襲い始めた
「さて、行くぞ!!」
桜は角から出てくるなり石を蹴って風で加速させて一人吹っ飛ばした
「な、なんだ!?」
「通りすがりの邪魔者かな?
皆、後はよろしく」
桜は後ろに下がるとカバーするように2人が出てきた
「ちっ、こいつらも魔術師か!!
構わねぇ殺すぞ!!」
女の子から意識が離れたうちに桜は女の子に駆けつけた
「……」
「こんにちは」
桜は微笑んだが動こうとはしなかった
「こいつ…死ねぇ!!」
男は持っていた刀で桜を斬ろうとするが桜は女の子の顔を覆うように抱き締めた
ガキンッ!!
「お兄ちゃん、ビックリさせないでよね」
男の攻撃は槍に阻まれた。
朱音は男に蹴りを決めて遠くに飛ばした
「わらわも久々にやってるぞ」
神楽が扇を振るうと壁に傷が作られた
「朱音、俺の後ろに」
「うん」
神楽の攻撃は残っている男を切り刻みながら吹っ飛ばした
「神楽、全域魔術は聞いてない」
桜は風の魔術を発動させ安全地帯を作った
「クフフ…わらわにかかればこの通りじゃ!!」
神楽の攻撃の後は壁にいくつもの傷を着け、男達も体中から血を流して気絶していた
「はぁ…水奈手当てよろしく」
「わかりました」
はぁ…神楽も少しは加減しろよな
桜は抱き締めている女の子の様子をみた
「大丈夫か?」
「………」
まあ、この子も大変な目にあってるんだもんな
桜は全体を見ようと腕を動かすと違和感があった
「あー、この子も」
「………すぅ」
女の子は桜の腕の中で気絶し、そのまま袖を握りながら寝ていた
「終わりました」
「水奈。すまないけど、この子にもお願い」
「はい」
水奈の緑色の癒しの力が女の子の傷を治していく
「クー君。3分前になりましたけど…どうするんですか?」
「このままにもできないからひとまず連れていくよ」
桜は女の子を抱き直して光の魔術をかけた
「これで見えなくなったし大丈夫だろ」
「そうでしょうか…」
「これで行くしかないさ」
桜は水奈に案内を頼みながら集合場所に向かった
「よし、全員いるな。バスに乗るぞ」
「桜。どうしたんだ、その腕?」
「ぶつかって痛くてな」
桜は腕組をするように女の子を抱き抱えていた
「ほら、乗るぞ」
桜はバスの通路側に乗せてもらってジャンパーを体にかけた
「…寒いんだ」
「着てた方が暖かくないか?」
「こっちの方が全身暖まるんだよ。言わせんな恥ずかしい」
こうやって誤魔化すしかないよな
桜はバレないか内心慌てながらホテルにバレることなくついた
「離れないからこっちの部屋で寝かせとくよ」
「わかりました。私達もすぐにいきます」
「ありがとう」
桜は部屋に行き女の子に布団をかけてベットに横になった
「おう、桜。早いな」
「まあな」
「布団までかけてるって事は寝るのか?」
その時もぞっと布団が動いた
「ん?桜今」
「ん?どうした?」
「…桜の布団怪しくないか?」
萩がそう言うと聖も疑うような視線を桜に送った
「桜布団をあげてくれ」
「えー、寒いじゃん」
「部屋温度22度で少し暑いくらいだぞ」
桜は視線をそらしながらそう言った
ピンポーン
「桜、お前の家族が来たぞ。出なくていいのか?」
「理由は後で話すから出てくれ」
萩はため息をつきながら扉を開けて朱音達を部屋に入れた
「お兄ちゃん、女の子は?」
「「女の子?」」
桜は布団を顔だけ出るようにして見せた
「桜お前…」
「待ってろ今警察に」
「静かにな。この子が目を覚ますから」
説明は水奈にしてもらい桜はゴロゴロとしていた
「お兄ちゃん」
「ん?」
寝ている女の子の目から涙が流れた
「……怖いよ」
桜は女の子の手を握った
「………」
女の子の顔は少しだけ穏やかになってまた眠り始めた
「…ここにいるときだけでも守ってやるか」
「クー君、説明終わりました」
「そうか。
てなわけでなかなか危ないから魔法石は携帯しておけよ」
桜は何かあるといけないと思い四人にSランク級の魔法石を配っていたのだ
あの時のシオンの驚きっぷりはすごかったな…
「俺には関係ないがケンカ吹っ掛けてきたら潰すから大丈夫だ」
お前の場合潰す(物理)だからな…
冗談じゃなくなるんだよ
「俺も平気だ。ちゃんと食べるから」
ん?食べるから?
俺よりも危ないんじゃないか?
「お兄ちゃん、今日はどうするの?」
「この子が起きてるのに俺が寝てるって訳にもいかないだろ」
一夜漬けくらいなら慣れてるしな
「わらわたちも」
「いいって。3人はゆっくり寝てくれ」
「でも」
「肌にも悪いぞ」
桜がそう言うと3人とも何も言わなくなった
「俺達がついてるから」
「今日も寝てくれ」
桜の言葉に二人とも「え?」みたいな顔をする
「灯りがあるとよく寝れないし、この子が目を覚ましたときにビックリするかも知れないからな」
「…わかったが俺と萩は1時過ぎまではゲームしてるぞ」
「え?」
聖の言葉にビックリしたのは萩だった
「羨ましいんだが」
「拾ったお前が悪い。飼い主なら最後まで面倒見ろよ」
…はぁ、飼い主ねぇ
「人間なんだからそんな犬みたく」
「その子、人間じゃないよ」
「「「え?」」」
朱音は女の子の近くでクンクンと鼻を鳴らした
「うん。この子から魔物の臭いがするもん」
「…マジ?」
「マジマジ」
桜は少し考えてから手錠を作った
「保険はかけとこう。
神楽、これに負荷でマナを魔素に還元するやつかけて」
「わかったのじゃ」
手錠は黒い煙が染み込み少し黒ずんだ手錠ができた
カチャカチャ
「…桜。お前、その子が魔物ってわかったから」
「最低だ」
「違うて」
黒い煙が手錠から発生し桜と女の子に染み込んでいく
「…ん……すぅ」
黒い煙が発生しなくなったら桜は手錠を粒子化させた
「これでよし」
「何したんだ?」
桜は魔物が人間を襲う理由やら魔物に関する事を二人に話した
「…どうしよう。魔物が狩りづらくなった」
「やらないとやられるし、被害も拡大するかもだから手段がないなら殺してあげるのも優しさだぞ」
桜は当たり前のように語った
「お前…意外と外道だな」
「だけど、一理あるな」
てかそうしないとこっちが殺されるじゃん
「ふぁ…」
ここで朱音がうとうとし始めて、神楽に関しては桜の腕を枕にして寝ていた
「水奈、悪いけど」
「はい、わかっています」
水奈は朱音を起こして、神楽を背負って自室に帰っていった
「さて、俺達も」
と、言ったところで聖の影が揺らぎジャイアントがいつもよりもよたよたして出てきた
「ご主人様…眠いよぉ…」
「萩、悪いな。俺は寝る」
聖はそう言うとジャイアントを布団の中に入れて寝てしまった
「ご主人様、我々も今日は寝ましょう」
いつのまにかゾンビも萩の影から出てきて萩の隣に座っていた
「あれ?ゾンビちゃん、いつものテンションじゃないんだね」
「桜様…女の子が隣にいるのにそんなことして興奮しますけど今は違いますよ。
私だって空気くらい読めます」
あ、そこは興奮しちゃうんだ
ゾンビも萩を押し倒すようにベットに入り電気を消して就寝してしまった
「さて、俺は俺で魔方陣でもいじってるか」
桜は、女の子が起きたときのために一人黙々と魔術の研究に励んでいた
読んでいただきありがとうございます!!
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