第40話≡逃亡するのも一苦労だ
テストも終わって、受験も終わり!!
今日は休日だからお兄ちゃん頑張っちゃうぞー!!
ザッ…ザッ…
桜は落葉の上を歩きながら魔物を探しているが見つかる気配はまだない
うーん…争った跡でも見つけれればなー
『…あ、そうだ』
桜は一つ思い付きで霧の魔術を使った
えーと…これでよし
桜の周りには2つの黒い霧が漂っていた
ミストダーク
霧魔術のCランクの魔術
白の霧を黒にしただけだが視界を遮りやすくなった
『これで怪しさもアップして魔物と間違えやすくなっただろう』
桜は正体を隠すため魔物に近い格好をすればと思ったのだ
さて、捜索を再開しますか
ドコォォ…
森の奥から轟音が響く
『そうそう、こんな風にしてくれたら見つけやすいんだよ』
桜は仮面の奥でニヤリと笑いながら轟音の発生源急いだ
『地の魔術かな?』
発生源と思われる場所は地面が抉れひび割れ棘のように変化している所がいくつか見えた
「ぅ…」
ん?声?
声の聞こえた方に行くと男が血を流して倒れていた
…ひとまず傷の具合だけみるか
よくわかんないけどね
血は足と脇腹から流れているようだった。
足は土の棘が刺さり、脇腹は何かに切り裂かれたような傷だった
…止血だけでもしておくか
桜は男に向かって手を伸ばし傷口だけを凍らせようとした
ザッザッ…
っと人が来たか
悪いな男の人
桜は急いで近くの木に登って光の魔術を使って姿を消した
桜が木に登ってすぐに四人の男達が姿を現した
「派手にやるじゃねーか」
「これから毎日地面を抉ろうぜ」
…この二人からは同じ臭いがするぞ
「馬鹿な事言ってないで辺りを捜索しろ。怪我人がいるかも知れないんだぞ」
「はいはい。やりますよーやりますとも」
男達はそう言うと辺りの捜索を始めた
「おい!!怪我人がいたぞ!!」
「マジか!?どっちだ?」
「…俺らのパーティーだ」
「となるとお前らのパーティー残り3人って訳だ。
少し待ってくれよ止血くらいできる」
「…すまないな」
こいつ実は真面目キャラだろ。
ん?どちらも?
桜は男達の会話に疑問を持ち始めた。
するとさっきまでふざけてた一人が事態の深刻さに気づいたようだ
「これって共闘した方がよくないか?」
「…俺もそれは思ったところだ」
共闘って事は違うパーティーがクエスト被ったって事か
「それにラピがもう一匹魔物がいるって言ってたしな」
…マジで?さらに面倒になるの?
「お前のパーティーの弓使いはいつ戻ってくるんだ?」
「腹を殴られただけだからすぐに戻るって言ってるぞ」
あー、あの弓使いさん
…あれ?もう一匹の魔物って俺の事じゃね?
「これからどうする?これまで通り動きの速い人達に単独で探してもらうか?」
「それはないだろ?俺らのパーティーで一人やられてるんだ。動きじゃ負けるって事だろ?」
ずっと黙ったままだった強面の男が話始めた
「今回の魔物は素早いのも狙えるんだ。
それに二匹いるとなると一人ではなく集団で動くのがいいと思うんだがどうだ?」
強面の男は試すように他の男達を見る
「俺は賛成だ。早速離れてるやつらを収集しよう」
あの強面…能筋に見えたけど頭働くんだな
「今日ほどクエストが被って良かったと思った日は無いよ」
「奇遇だな、俺もだ」
そう言うと強面は見張り、一人は応急措置、残り二人は収集するため連絡を取り出した
さて、ここにいるのがもしばれたら大変だから、魔物探すがてらぶらつくか
桜はばれないよう木から木へと飛び移ってその場を離れた
「ん?今何か」
「止血終わったがどうすればいいんだ?」
「あ、ああ。後は任せてくれ…気のせいか」
桜が木を移動してある程度離れると地面に降りたった
『ふぅ…仮面は蒸れるぜ」
仮面を外して桜は空気を吸っていた
「で、俺は敵扱いだと」
桜はすぐ手元にナイフを作り構えるとナイフから火花が散った
「やっと見つけた」
「お主もわらわを殺しに来たのか!!」
あらら。完全に敵扱い
桜の視線の先には和服を何枚も着重ねた背の小さな金髪、黒目の女の子がいた
「やあ、こんばんは。俺は戦う意思がないんだけど?」
「人間なんぞ信用できる訳があるまい!!
わらわは…わらわはまだ生きたいんじゃ!!」
はぁ…憑き物だったらどんなに楽だったか…
女の子はそう言うと大きな扇を広げて桜に向かって振った
「なるほど、それで切り裂いてたのか」
扇から生まれた風は刃となって桜に向かう
「お主なんぞにわらわが抜かせると思うたか!!」
桜はナイフを捨ててての甲から氷の剣を生やしてすべての刃を流した
ガキン!!
ギギギギ…バタン!!
弾かれた風の刃は桜の後ろで他の木を斬り倒していた。
ついでに防いでいた氷の刃も折れていた
おー、結構な威力じゃん
「な、なんじゃと!?」
「さて、まずは話し合いから始めようか!!」
今の音で来るかもしれないし
桜は二本の氷の刃作ってを体の前に持っていっき女の子に向かってダッシュした。
その時桜の体が一瞬ぶれたのに女の子は気がつかなかった
「来るな…来るでないわー!!」
女の子がもう一度扇を振ると地面から棘が生え桜に向かった。
桜はそのまま、成す術もなく棘に飲まれてしまった
「はぁはぁ…どうじゃ。わらわだってまだ動けるんじゃぞ」
「息上がってるけど大丈夫?」
桜の声は女の子のすぐ後ろから聞こえてきた。
棘に串刺しにされている桜はすぐに土に戻り何も残っていなかった
「!?おぬ」
「はい。動かない」
桜は作り直したナイフを女の子の首に着けた。
勿論、刃は潰してある
「…殺せ。頼みを聞いてくれるなら苦しませずに殺してくれ」
「なら、武器を渡してくれ」
女の子は閉じた扇を桜の後ろに投げ、目を閉じた
「さ、これで…お主何をしておる?」
「…は!?すまんつい」
桜はナイフを収めて女の子の頭を撫でていた
「…わらわを玩具にすると言うならここで舌を噛みきるぞ」
「まあ、落ち着けって。俺は戦う意思が無いって言ってるだろ?」
桜は女の子から一歩下がって扇を手にした
「嘘じゃ!!わらわは信用なんぞせんぞ!!」
「それじゃ信用しなくてもいい。
1つだけ質問しよう。この世界で生きたいか?」
桜の質問に女の子はポカーンとしてしまった
「えーと、元居た世界に帰りたいか、そうじゃないか?って聞いてるんだが…」
「お主は一体何を言っておるんじゃ?
わらわはここでお主に殺されて終わり。そうじゃろ?」
桜は微かな音に気づいて仮面を用意した
「いくつか話しておくと
俺はお前を殺す気なんてない
そして今ここには最高七人の魔術師が向かっている。相手にすればお前は殺されるだろう」
「…わらわは…」
女の子の心は揺れ動いてく
桜は仮面を着けて地面に手を着けた。
それと同時にスラッシュブーツも装備した
『選べよ。俺は手助けするだけだ』
女の子の下の地面が盛り上がり女の子は傾いた
「な!?やはりお主!!」
次の瞬間、女の子の金色の髪に氷のつぶてがぶつかり散らせていた
「ちっ…一匹始末すれば楽になったのにな」
「大丈夫だろ。こっちは六人。あいつらが死ぬのも時間の問題だ」
桜達は包囲されてしまっていた
…最悪、気を失わせてでも安全な所に持ってくか
桜は膝をついてる女の子にかけよって仮面を少しだけ外し声が聞こえるようにした
「少しでも生きたいと思うなら俺の手を掴め」
桜はそう言って手を差し伸べる
「…わらわは……まだ死にとうない!!」
女の子はしっかりと桜の手を掴んだ
「わらわはまだお主を信用した訳じゃない。お主を利用しとるのじゃ」
「それでいいんだよ。さ、逃亡するぞ』
桜は女の子をお姫様抱っこして地形を桜中心に盛り上がるように変動させた
「な!?あいつ面倒な事を!!」
「落ち着け!!魔術が使えるやつは何でもいいからこの中に魔術を…な!?」
桜は混乱してるなか男達の頭上を越えて森に逃げた
「お主空を飛べるならそれで森を飛んだらどうじゃ?」
『…あ。…い、いやほら狙い打ちされるかも知れないじゃん?』
その考えはなかったなんて言えない
『てか、それよりお前重くね?』
「わ、わらわが重いんじゃないわ!!この服が重いんじゃ!!」
てか、重いならこれ使えば良かったじゃん
桜は女の子に重力を軽くする魔術をかけた
「おお?体が軽くなったの」
『これで俺も楽々』
そんな話をしていると後ろから弓矢が飛来した
『おっと。お前後ろよろしく、なんか来たら言って』
「わ、わかったのじゃ」
桜は木を触ってちゃっかり木の根っこを出したりして行く手を遮るように走っていると目の前に人がいるのに気がついた
「ここで足止めすればなんとかなるよな」
目の前にはナイフを構えた怪我人を治療していた男がいた
『…まさか先にいるとはね』
「どうするんじゃ?」
すると周りから炎の壁ができ、桜達を囲った
『どうやら1択みたいだね』
桜は女の子を降ろして氷で女の子を守る箱を作った
「お主わらわをどうするつもりじゃ!!」
『守ってやるからおとなしくしてろよ』
桜は女の子の安全を確保してから男に向き直った
「俺は戦闘は苦手だが他のやつらが来る時間は稼ぐつもりだ」
俺は他のやつらが来るまでに逃げたいんだけどな
桜は棍棒を出して男に無言で近づいた
「な、なめるなよ!!」
男はナイフに火を纏わせて炎の剣を作り桜に斬りかかる
それって棍棒じゃ防げなくね?
桜は棍棒に風を纏わせて炎の剣を防ぎつばぜり合いとなった
「これならどうだ」
桜は男がそう言ったのと同時にバックステップで距離を取ると桜がいた場所に炎柱ができていた
「ちっ…この人型なかなかやるじゃん」
それはどうも
桜は水の弾丸を作り男に向かってかわせるスピードで発射した
「はっ。そんな見えてる攻撃が当たるかよ」
ジュ…
男は意図も簡単にかわし水の弾丸は炎の壁に当たり蒸発した
その時、壁が無くなり森が見えたのを桜は見逃さなかった
なんだ、壁薄いじゃん
桜は女の子の元まで下がりまたお姫様抱っこをした
「…お前、何する気だ?」
「全くじゃ。何をする気なんじゃ?」
ま、見てればわかるって
桜は水の魔術を使って一人分位のだけど厚い壁を作った
「逃げるつもりか!?
そうはさせるかよ!!」
男が一歩前に歩くとその足は地面に埋まり身動きが取れなくなっていた
地の魔術?俺じゃないとすると
『ナイス』
「えっへんなのじゃ」
桜の腕の中で(無い)胸を張って偉そうにする女の子
さて、逃げるか
ジュワァァ…
炎の壁は水の壁とぶつかり蒸気となって消えていったがすぐに戻ろうとする
「い、行けるのか?」
『余裕かな』
桜は女の子を守るように炎の壁を抜けた。
抜けた時、相手も着いたようだった
「大丈夫か!!」
「今助けるぞ!!」
おお、危機一髪
『…火の輪を潜る動物の気持ちがわかった瞬間だった』
「馬鹿な事言ってないで早く逃げるのじゃ!!」
女の子は小さな手で桜の胸板をペシペシと叩く
『はいはい、すぐに逃げますよっと』
桜は逃げるときに発生した蒸気を背に森の中に逃げた
『後ろに追っ手は?』
「大丈夫なのじゃ。
…それよりもお主、良かったのか?」
『…あまり話してると舌噛むじょ』
痛ってー!!思いっきり舌噛んだ!!
なんかもう恥ずかしさやらで死ねる気がする!!
「お主恥ずかしくは無いか?」
『うるしゃい!!…舌にゃおるまで会話はにゃしな』
はぁ…なんで最後の最後で締まらないかな…
そんな桜を見て女の子は初めて笑ってくれた
…ま、こんなのもいいよな
森を抜けられたのはそれから5分もかからなかった
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