第29話≡だから落ち着けと
「…なんだよこれ…許せねぇ…」
…ん?このドクロって…
桜が何やら考えている横で聖は何かを決めたかのように立ち上がった
「あいつをぶっ殺してくる。萩のともらい合戦だ!!」
「まあ、落ち着け聖」
桜はドクロを見ながら聖にそう言った
「お前はなんでそんなに落ち着いてるんだよ!!萩が死んだんだぞ!!」
「勝手に殺してやるなって。まだ死んだ確信があるわけじゃないだろ」
桜のその言葉に聖が青筋を立てる
「ふざけんなよ!!ここに証拠ならあるじゃねーか!!」
「だから落ち着けって言ってるだろ」
桜は聖の足を凍らせた
「まずは俺の話を聞け。それでも考えが変わらないなら好きに動け」
「……ちっ。わかったよ」
聖はそう言ってしゃがんで足の氷を砕いた
こいつ、本当にパワーだけは凄いよな
「で、どういうことだ」
「それはな…」
桜はこの前の夜にあった事を聖に話した
「ていう事があったんだが、その時のドクロがこのドクロと一緒だったらって考えたら…」
「…その時誰か人質でもいたんじゃないのか?」
「それならあんなに俊敏に動けるはずないだろ。それにあの女の人が消えた理由にならない」
桜はその言葉の後に「それに」と付け足した
「俺の仮説の方が萩が生きてるかもしれないしな」
「…そうか。…わかった。お前に乗ってみる。
で、これからどうするんだ?」
聖の言葉に固まる桜
……考えてなかった
「…お前まさか何も考えてないとか」
「仕方ないだろ!!俺はまだ新人で何も知らないんだぞ!!」
桜が聖にそう言うと聖も頭を抱えだした
「あの…ご主人様」
「ん?ジャイアントか。どうかしたのか?」
二人がどうすることも出来ないでいると聖の影からジャイアントが頭だけ出してきた
「水奈ちゃんに聞けばわかるかも知れないです」
「…水奈?」
「…確かにあいつなら。
ありがとう、ジャイアントちゃん」
桜が礼を言うとジャイアントは影の中に引っ込んだ
「おい、水奈って誰だよ」
「俺の家族の事だ。あの青髪の」
「あー、あの巨乳っ子」
おい、てめぇ、水奈になんて呼び名を
桜はそんな事を思いながらドクロを手に取りそこら辺にあったビニール袋に入れた
「それじゃ行くぞ」
「わかったよ」
二人は萩の家をでて自転車に乗り2、3分で桜の家に着いた
「はやっ!!」
「なんせ御近所さんだからな」
桜はドクロを持って家に入った
「ただいまー」
「おかえり!!」
「ゴルブ!?」
あ、朱音。なんでそんな鳩尾にピンポイントで入れてくるんだよ
「わ、悪いけど今回はふざけられないんだ。
朱音、水奈を急いでリビングに呼び出して」
「…わかった」
桜が途中から声色を本気にして言うと朱音も真面目になり水奈を呼び出しに走った
「お前いつもあんなの食らってよく平気だな」
「痛いものは痛いけどな。さ、入れよ」
「お邪魔します」
桜と聖がリビングに入るとすでに朱音と水奈が雰囲気を変えながら待っていた
「おかえりなさい、クー君。真面目な話と聞きましたが」
「ああ、結構真面目な話だ」
桜と聖は椅子に座った。
その時ジャイアントも影から出して朱音に並ばして座らせた
「それでどういう事ですか?」
「それがな…」
桜は萩の家であった事を水奈達に話した
「で、これがその時のドクロだ」
「なるほど…まず一つ言わせて貰うとその萩様は死んではおりません」
水奈のその言葉に桜と聖は安心感からため息をついた
「まず、人をここまで完璧に溶かし骨だけを残す魔術は高度な技術が必要です。
しかし、そこまで高度な魔術を使えるのなら奇襲などかけずにクー君達を襲ったでしょう」
なるほど、確かにそんな力を持ってるなら直接攻撃した方がはやいだろうな
「もう一つの理由として、クー君達が言った強い光の事です」
ん?その光も何か関係してるのか?
「強い光を放ちその後二人がいなくなったのならそれは転移魔術の一種だと思います。
確か転移魔術の一つに媒体と転移する者を入れ換える方法もあるはずです」
「それ、私も聞いたことあります」
水奈が言ったことに賛同するジャイアント
となるとあの時急に見失ったのも理由がつくな
「…しかし現状、萩様の身が危険なのは代わりありません。一刻も早く助け出さなければなりません」
それはわかってるんだけどな
…一体どうやって探せばいいのやら
「クー君はその女性に追跡魔術等をかけたりは…」
「追跡魔術なんて知らないからな…」
「そうですか…
でしたらこれしかありませんね」
お?水奈は何か考えがあるのか?
「朱音、あなたまだ鼻は効きますか?」
「狼になれれば大丈夫だよ」
「…匂いで探すのか?」
桜の問いに水奈は頷いた
「マナで追うことはできません。それなら違う方法で探せばいいんです」
「そこで朱音の嗅覚に頼るって訳か」
「はい。それなら大雑把でもわかるかと思います」
てか、今はその方法に賭けるしかないか
「朱音、お願いできるか?」
「うん!!任せといてよ!!」
朱音はそう言うと体が光だし、光が収まると朱音は銀狼の姿になっていた
おお…懐かしいなこの姿
水奈はドクロを手に取って朱音に嗅がせた
クン…クンクン…
「朱音、大丈夫そうか?」
朱音は桜の問いに首を縦に降って答えた
「流石だな朱音。さ、いきますか」
「はい」「おう」
朱音もこんなに暗いと大型犬と間違われるだろうし俺としても安心だな
桜達は朱音を先頭に萩の元へと走った
朱音はやはり早く桜達が自転車で走ってやっと追い付ける速さで走っていた
そしてたどり着いたのはとある寂れたビルだった
「ここにいるのか?」
朱音は光輝き桜達が目をやられているうちに桜の影に入り込んだ
ちょっ!?朱音いきなり何?
「っと、ここで当たってるよ」
朱音は影から出てくるといつも着ているジャージになっていた
「…なあ朱音。なんで一旦俺の影に入ったんだ?」
「ぜ、全裸なんて…恥ずかしいじゃん」
うん。恥ずかしいのはわかったが…俺の影になんてもの入れてんだよ
「お前らそんなことやってないでさっさと行くぞ」
「…すまんかった」
そうだ今は朱音じゃなくて萩を探しに行かないと
「朱音、匂いはどっちから…いや、いいや」
桜がビルの下を見るとマナが回って魔方陣が見えた
「この下みたいだ。…朱音もしもの時は任せたよ」
「うん!!お兄ちゃんの背中は私だけのものだもん!!」
…なんだろう朱音に背中を任せちゃいけない気がしてきた
聖の方を見るとジャイアントと何か話しているようだった。
その手にはすでにハンマーが握られている
「聖、準備はいいか?」
「おう。いつでも大丈夫だ!!」
「よし。いっちょ助けに行きますか!!」
桜は歩きながらナイフを数本錬成しながら階段を降りていくと一つの扉が見えた
「…よし、開けるぞ」
桜の問いに全員が首を縦に降る
…よし、いくぞ!!
ガチャ!!…ガチャガチャ!!…バターン!!
桜は扉ごとぶっ飛ばして部屋に入った
「鍵がかかってるなんて聞いてねーよ!!」
見ろよ。なんか閉まらない雰囲気になっちゃったじゃん!!
桜の視界にはビックリしてこっちを見てる萩を拐った女の人とぐったりしている萩の姿があった
「てめぇ!!萩に何しやがった!!」
「…うふふ、残念ながらもう終わっちゃったわ」
その言葉を聞いた聖はハンマーで女の人に殴りかかった。
女の人はそれに動じずかわそうとすらしなかった
…何考えてるんだ?
桜は戦闘に参加せず現状を見ていた
女の人は聖のハンマーをもろに食らい胴体の骨や肉が飛び散った
「…なんかあっけなかったな」
女の人は胴体を無くしそのまま地面に倒れた
「これで」
「終わりなんて言わないわよね?」
女の人は胴体の無い上半身を動かしいつのまにか手につけていた獣爪で聖を切りつけた
カンッ!!
「…助かったよジャイアント」
獣爪をジャイアントの狙撃ではじきその間に聖は一旦間を取った
「これなんてバイオだよ」
「あれって胴体消しても動くのか?」
すると女の人の胴体はスライムのようになり破片と繋がり元の体となった
「うふふ、さあ遊びましょ?」
「…なるほど。無限ループって怖くね?」
「こんな時に何言ってるんだよ!!」
聖はハンマーを担ぎ直し女の人に殴りかかり今度は頭を飛ばした。
しかしすぐにスライム化して元通りになってしまった
「お兄ちゃん、私たちも!!」
「あー待つ朱音」
朱音がダッシュしたので桜は朱音を後ろから抱くことで止めた
「お、お兄ちゃんこんなときに…でもいいよ…」
「何がいいんだ?」
桜は朱音を抱きながら周りの状況をよく見た
「…え?なんで?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
桜は萩がほんの少しだけ動いたところを見逃さなかった
「…はぁ、さらに増えるのか」
「だから、どうしたのお兄ちゃん?」
そして集中して見ると萩の体の中でマナが巡回しているのがわかった
…となるとあの二人を止めないとな
「朱音は待っててよ」
「う、うん。わかったけど…」
桜は地面に手をつけレイピアと口の大きな銃を錬成した
あれ?なんかマナの減りが少ない気が…気のせいか
「アシスト:スピード」
桜は目にも止まらぬ速さで聖と女の人の間に割って入りレイピアは聖の喉元に銃口は見えるように女の人に位置取りした
「おい、なんのつもりだよ」
聖は怒りを隠さずに桜聞いた
「ちょっと確認したいことがあってな。何事もまずは話し合いからってね」
「ふざけんな!!こいつが萩を!!」
聖のハンマーを握る手に力が入る
「お前きちんと萩が死んだって確認したのか?」
「…お前ら、勝手に殺すな」
萩が目を覚まし聖達に言ってきた
「萩!!」
「安否確認よろしくー。
で、次は君だね」
桜はレイピアを壊してから女の人に向き直った
「ふ、私はいくら潰されても」
「溶かされるのはアウトなんじゃないかな?」
桜はわざと見えるように銃口の中にマグマの弾を作った
「………」
「やっぱりか。で、どうして萩を拐った?」
桜は銃口を下ろしながら聞いた
「…どうして私を殺さない」
「殺す理由がはっきりしないから」
すると女の人はビックリした表情になった
「お前達は」
「桜ー!!萩の手に烙印があるぞー!!」
やっぱりか…マナの巡りかたがギルドの人たちと似てたからそうかなって思ったんだよな
「おっとすまん。話を続けてくれ」
「…お前達は英雄のメンバーじゃないのか?」
ヒーローズ?何そのドラマみたいな名前?
皆がポカーンとする中、朱音だけはその単語に反応した
「英雄の事知ってるの!?」
「朱音、そのヒーローズってなんだ?」
うーん、なんかの有名なユニットとか?
「お兄ちゃん。ヒーローズのメンバーの一人は勇者“フレイム”だよ」
うわー、あいつらチーム組んでるのかよ。さらに面倒臭くなってきたな
「…どうやらあなたもヒーローズには苦い思いがあるみたいね」
「まあ、俺はあいつらのせいで一回死んだからな。
あ、後、萩は俺たちの友達だから警戒はしなくてもいいら」
桜の殺された発言に女の人は驚きを隠せないようだ
萩も体を動かせるようになり立ち上がっていた
「ま、そういう話は家でするか」
ここに長居するよりは家の方がいいだろうしな
「萩、自転車こげるか?」
「それくらいなら大丈夫だ」
よし、それならやっとあの魔術が使えるな
「俺の自転車使ってくれ」
「お前はどうするんだよ」
「走ってく」
屋根とかを
「お前もやしなのに体力とか大丈夫かよ。もやしなのに」
「ま、鍛えてるからなってもやしを強調するな!!」
このためではないけどな
「魔術使えばいけるし大丈夫だろ」
「…誰か説明してくれないか?」
萩が桜や聖を見ながらそう言ってくる
「だから家で話すからまずは帰ろうと言ってるだろ」
「あー、まあ、了解」
女の人は桜達が話してる間に萩の影に潜り、ジャイアントも聖の影に潜りった
あ、やっぱりあの女の人って萩の奴隷だったか
「朱音も今は潜っててくれ」
「はーい」
全員の影に奴隷が入ったのを確認すると桜達はビルを出た
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