表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【夢幻の大陸詩】 月姫楽土の子供たち  作者: 水城杏楠
三章  揺るぎなき決意
12/51

 一筋の光も届かない闇の中に、チェザは身を置いている。

 静謐をもって語られるこの地は、月霊ルーシファーの娘システィザーナが地上の男性と住んでいた場所であるという。

 神秘が作り出したこの洞窟は、名を聖月の祠と言った。

 冷涼な風が、肌に触れた。

 チェザがここで頼れるものは何もない。

 左手に火を灯した木杖を持って、腰に二本の短剣を差して、あとはこの身ひとつだけだった。

 誰もいない。諒闇のように重く暗く、だのに真実の神性を感じる大気。

「これが儀式かよー」

 人ひとりがようやく通れるかどうかという狭い洞窟を歩みながら、彼はそうひとりごちる。

 小柄な彼でさえ少し前かがみになって歩かなければ頭をぶつけてしまうほど天井も低い。カリなど這っていかねばなるまい。

 これがあの有名な聖月の祠なのだ。

 月霊ルーシファーの娘システィザーナが母なる月より与えられし二本の短剣。聖月の御剣と総称される金の御剣、銀の御剣を奉ってあるという祠。

 その中に入り御剣を手にせよ、というのが銀の儀式だった。

 銀の儀式は月姫の巫女が自ら、大人になる子供たちに適切な職業を与えると言われている。どんな儀式なのかは、恐れ多いことだから誰も口にしない。

(ずっと一本道なのか……?)

 ふとよぎる疑問。だが、今のチェザにはこれが最重要問題に思えた。もし分かれ道があったらどちらに進むべきか。

 それでも歩みを止めることはない。引き下がるわけにも、もちろんいかない。チェザは前に進むだけだった。

 ただひたすらに、チェザの藍色の瞳が見つめるものは眼前に広がる闇だけ。

 恐怖はなかった。

 この先にあるものを、少年はきっとどこかで知っていたのだろうから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ