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「……あっ」
東の森をちょうど抜けたところで、最後尾を走っていたラフィが声を上げて立ち止まった。チェザとアストは立ち止まり、何事かと振り返った。
「ジュオンの葉、忘れてきちゃった……」
「え~っ」
子供たちにとっても、任された仕事は責任を持ってやりとげなければならないものだ。いくら正体不明の男がいたからといっても、それはいいわけにしかならないし、そもそもそんなことを信じてはくれまいと彼らは一様に思った。
「ど、どうしよう……」
ラフィは少しだけ森を振り返った。いつも来ているはずの森なのに、それが想像の中にある南の森と重なった。恐ろしくて、まるで黒い雲がかかっているようにすら感じる。
「よし、戻ろう!」
即座にそう断言したのはチェザだ。
怖いもの知らずの上に、人一倍プライドの高いチェザは、先ほど走って逃げ出してしまったことをいまさらながらに後悔していた。なぜあそこで逃げ出したのか、もしかしたら月からの使者かもしれない高貴なひとを置いて。怪我をして動けなかったのかもしれない。だのに、そんな彼を放ってきてしまった。
「……そうだなァ。おれも戻るよ」
「アストさままで!」
「じゃあラフィはここに残る?」
「……ううん。行く」
アストの意地の悪い笑みに、ラフィはついそう口走ってしまった。言ってからはっと気づいた。
「ずるいー!」
「ほら行くよ~」
チェザを先頭に、アストとラフィが続いた。
三人の白い背中を、暮れかけた太陽が橙色に染めていた。