「票田惑星」
米が高ぃぃいいいい ( ˘ω˘ )
銀河帝国の辺境宙域に、ひときわ不思議な惑星があった。名は宇宙農政第三区、通称「ケンギョウ」。
表向きは米の生産惑星とされ、帝国中へ主食を供給する重要な農業基地だった。
しかし、惑星を訪れた観測官たちはすぐに奇妙なことに気づいた。帝国のどの惑星にも必ずあるはずの食品市場が、ここでは活気を失っているのだ。
代わりに人々が長い列を作るのは投票所である。
票はあらゆる価値を代替した。票があれば補助金が出て、票があれば税制が優遇され、票があれば政務官が笑顔になり、票があれば予算が増える。米を育てるのは儀式であり、票を育てることこそが経済活動だった。
帝国政府は当初、この惑星の特異な構造に困惑した。
なにしろ、住民は週末だけしか農業をしないのだ。
当然に経済指標は上がらず、生産性は停滞し、若者は都市惑星へ流出し、需要は縮小しているのに、なぜか惑星は政務官から高く評価されるのである。
観測官が帳簿を調べてようやく理解した。
この惑星の主産業は食料ではなく、実は票を生産していたのだ。
稲作惑星というのは、表向きだけの姿だったのである。
票はこの惑星で最も希少で価値の高い資源だった。企業惑星では鉱石が、商都惑星では通貨が、軍事惑星では艦艇が利益を生む。しかしこの惑星では票が利益を生んだ。票は利権を生み、利権は保護を生み、保護は補助金を生み、補助金が票を再生産した。完璧な資源循環サイクルである。
帝国の人口政策官は驚きの事実を報告した。
「この惑星では、帝国の誰が何を食べるかより、誰が誰に投票するかの方が重要です」
惑星の住民は腹が減ると市場に行く代わりに、地方政務官の応接室に行く。彼らは本当に票で生きていたのだ。
そしてこの惑星がさらに特異なのは、票は消費されても死なず、統計となって政務官の生命線を支え続けることだ。商品は消費され、税は吸われ、米は腐る。
しかし票は腐らない。票だけが純粋で、票だけが永遠だった。
帝国の経済学者はこの惑星に新しい名称を与えた。
「票田惑星」
票田惑星は帝国全体の利益に貢献してはいなかったが、帝国政務官の生存には貢献していた。その一点において、この惑星の価値は疑いようがなかった。
市場では価値がなくても、政務では価値がある。それが票田惑星の経済原理であった。
最後に帝国の観測官は報告書の末尾にこう記した。
「生産されるものが米」であると勘違いしてはならない。
実際に収穫されるのは「票」なのである。
そしてそれこそが、この惑星が長らく保護され続けた理由だった。
銀河経済において、票は実に栄養豊富なのである ( ˘ω˘ )
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