「惡魔教」信者求ム!!
〈漏る漏ると云ひつ尿する冷えの冬 涙次〉
【ⅰ】
* オリュンポスの神々はまだ富士山に居坐つてゐた。ゼウスは月の女神セレーネーに、日本の美靑年・河邊寅美(前回參照)を永遠の眠りに就けると約しながら、カンテラ・じろさんコンビに負け、結局寅美は目醒めてしまつた。約束不履行をセレーネーは責めた。その内紛の調停役には、何故か果野睦夢が収まつた。彼女は、先日の『夢雀・POMの助のハチャハチャ大行進!!』内「イつちやん's Room」で大方の事情を知つた。水晶玉でなく人間界のテレビが情報源である事は、彼女自身を傷付けたのだが、自分の妖力が至らない事で、水晶玉の魔術さへ使へない- こんな事では、彼女が鰐革Jr.の遺髪を嗣ぎ、自分の「思念」の力で「新魔界」を復活させる事は、遠く及ばない。
* 當該シリーズ第177話參照。
【ⅱ】
で、睦夢が思ひ付いた事- それはオリュンポスの神々の力を借り、黑ミサを人間界にゐながらにして取り行ふ、詰まり、人間界の「惡魔教信者」逹を集め、既成事實としての黑ミサで、自分が「魔女王」に(人間界で)返り咲く、と云ふ事だつた。黑ミサさへ開催すれば、後はだうにかなる、と彼女は考へてゐたのだ。その為には、セレーネーと手を組む必要がある。即ち、寅美を眠らせた儘で黑ミサ「祭壇」として利用するのだ。その為には、ゼウスとセレーネーが互ひの鉾先を収める事が肝要だつた。それには、オリュンポスの内紛は邪魔だつた...
【ⅲ】
で、スマホを使ひ、SNSで「惡魔教」の宣傳を彼女はしたのだが、その呼び掛けに應じ、信者逹が多數集まつた。人間界にも「新魔界」に參画し、「本場」の黑ミサを目撃したい者らは、澤山ゐるのだ。ゼウスは、【魔】の力で内紛を解決する、と云ふ事には難色を示したが(そんな事は彼のプライドが許さない)、事は睦夢とセレーネーに拠つて、着々と進行し、このオリュンポス主神、折れざるを得ない。だが、寅美のマンションの部屋には、先の一件に懲りたカンテラが、強力な結界を張つてゐた。豫防策はあるに越した事はない。
※※※※
〈おゝ寒と云つたら小寒が付いて來る全く嫌だ冬の雨など 平手みき〉
【ⅳ】
ゼウスは寅美の許へ赴いたが、結界のせゐで中には入れない。彼は【魔】ではない。だが、【魔】の謂はゞ手先として動いてゐたので、結界は有効なのだつた。いかなゼウスとて、寅美本人の顔を見ずに彼に眠りの術を掛ける事は出來ない。この儘では、彼の面子は丸潰れである。ゼウスは(彼は意外にも單細胞で)カンテラ(こんな「結界」などゝ云ふ技を使ふのは、カンテラを措いて他にない、と云ふ事は分かつてゐた)と直談判に及んだ。「カンテラよ、今度ばかりは儂の顔を立てゝはくれんか?」-カンテラの答へは勿論、「No」だつた。カンテラの水晶玉に映つたゼウスの顔色は、憔悴し切つてゐた。
【ⅴ】
「オリュンポスの主神がそれぢや、他の神さん逹に示しが付かないぜ」-カンテラは呆れてゐたのだ。この日本以外に行くところがないゼウスは、行く当て處ない睦夢と、同じやうな顔をしてゐたからだ。
【ⅵ】
然し、その儘で収まりが付かないのは、集まつた「惡魔教」信者逹だつた。結果として、睦夢主宰の黑ミサは無期延期。で、突き上げを喰らつたのは、ゼウスならぬ睦夢だつた。「飛んだ食はせ者だぜ、何が『新魔界』盟主だ!」、彼らは睦夢に嚙み付いて來た... 睦夢、やはり「カンテラ様」に縋るしかないのか(前々回參照)。カンテラはこの騒ぎに乘じて、じろさんと「惡魔教」信者逹を退治した-「しええええええいつ!!」。人間とは云へ、だうせ【魔】候補生だ。カンテラには彼らは目障りだつた。*「無辜の人」逹とは、彼らは云へなかつた。
* 當該シリーズ第189話參照。
※※※※
〈立ちんぼにならざるを得ない冬の雨 涙次〉
【ⅶ】
ちと乱暴だが、これが「オリュンポスと睦夢」の繋がりを断ち切つた事は云ふ迄もない。仕事の代金は寅美とイつちやん(自分逹の他愛もないお喋りが騒ぎに火を着けた、と云ふ事で)が支拂つてくれた。さてさて、ゼウス逹は圖々しくも富士の山に留まつたが、睦夢は如何に。と云つたところで、このエピソオド、終はりにしたいと思ふ。ぢやまた。




