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長編版5人の女たち【長編・連載中】  作者: 草壁なつ帆
第三幕 ネズミは何者?(視点:ファールーデ)
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ドンドゥルマの様子

 私たち四人は、ドンドゥルマが遅れて来たことについて何も言いがかりを付けなかった。

 あの怒りを露わにしていたソルベも黙っていたし、場の空気に惑わされずに発言できるクルフィも黙っていた。

 グラニータは下を向いていた。私はその三人の顔を伺ってばかり。

 そんな様子にドンドゥルマは溜め息をつく。

「まるで葬式みたいじゃないの。私のことを幽霊みたいに見て。酷いわ」

 ドンドゥルマが嘆いている。だけどあながち私は間違っていないと思った。

 だって彼女らしくない身のこなし。ドレスの色はドンドゥルマに似合っているけれど、型は古い時代のもの。

 鈍い光を放つアクセサリーは本当に彼女の持ち物なのかと疑った。ソルベじゃなくて私でもすぐに気が付ける。その宝石の純度が低くて切り出しも甘い代物だって事。

 皆の視線にドンドゥルマは気付いた。

「ああ、これ?」

 自身の衣服を示す。

「掘り出し物よ? いいでしょ? やっぱり私のスタイルってどんな型でも似合ってしまうのよね。そう思わない?」

 私と目を合わせたドンドゥルマ。

「う、うん。とっても似合っているわ」

 間違ってはいないもの。視界の端でソルベがまた不機嫌になっていくけれど。

「それからこれも素敵でしょう?」

 大きなカバンをドンドゥルマは探る。するとそこから出てきたのはツバの曲がった帽子だった。帽子を頭に乗せてカフェに来ないで、カバンの中から取り出すというのはつまり、ドンドゥルマが私たちに見せ付けるためにそうしている。

「良いでしょ! リーデッヒに貰ったの!!」

「……!?」

 その瞬間の、ひりつくような空気がまた私の肌には痛いわ。

 けれども帽子はドンドゥルマに似合っている。とはいえ、これもまた古い型の帽子。今はこんなにツバが曲がった帽子は流行じゃ無い。

「あ、そうだ」

 ドンドゥルマは突然、その帽子に細工をしだした。

 帽子にブローチを刺したのだった。ブローチというのは彼女がハンカチで大事に包んでいたもの。

 虹色に光るスプーン。私や皆がもらった金色に光るスプーンとは全然違う輝きのものだ。

 あの日、スプーンが配布されてからドンドゥルマが騒動の中心にいた。その時に彼女が持っていた、美しい輝きだ……。

 私たちは全員何を思っただろう。ソルベもクルフィも、虹色に輝くスプーンを見て何を思っているんだろう。

 私はこの二人のように自分を制御していられないわ。初めて目の当たりにした虹色の輝きは直視していられないもの。だから自分で目を瞑った。

「どう?」と、改めてかぶって見せるドンドゥルマ。だけど誰も何も言わないものだからドンドゥルマは溜め息をつくしかなかった。

 見る目が無いのねと軽蔑して、帽子は再びカバンの中に丁寧に仕舞われた。

 さて、まだドンドゥルマの暑さが紛れていないみたい。顔を仰ぎながら、ぐるりと私たちの顔を見回す。顔色の悪いこの四人の顔を。

 そして得意げに一度笑った。

「ちょっと私ね旅行に行っていたのよ。日焼けしたかしら? ねえ、どこに行ったと思う? リーデッヒのご実家よ。あらやだ絶対に場所は言わないわ。あそこは私だけの穴場なの。あなた達以外にも誰にも踏み入れて欲しくない聖地ね。ねえソルベ?」

 いつにも増してよく喋るドンドゥルマだった。

 ソルベは無視を貫いた。

「ねえ、ファールーデ?」

 私は……。

「あ……そう、なのね……」

 ふふんとドンドゥルマが勝ち誇って笑う。その後ドンドゥルマが使いの人を寄こして私たちにお土産を配った。私たちは最低限のお礼を言いながら形だけでは受け取っていたけれど、心はどうだか分からないわ。

 しばらくしてから口を開いた人物がひとり。

「……あんた、ドンドゥルマじゃ無いでしょ」

 腕を組むソルベが、お土産を突っぱねてそう言った。このひと言に、まるでこの席が凍り付いたかのように冷えている。

「は? 何言ってるの?」と、ドンドゥルマが怪訝な顔をするけれど、私たち四人は少しだけ恐ろしさに戸惑っているの。

 明らかに調子付いたドンドゥルマ。その奇妙な様子に口出しできるのはソルベだけ。……なのにソルベは追求しなかった。

「はぁ、何でも良いわ。それより話があるんでしょ? 遅れて来たんだから早く言いなさい」

 今日私たちがここに集められた理由。聞かせてくれるとあれば、下を向きっぱなしだったグラニータも自ら顔を上げた。

 私も、ドンドゥルマの衣服の話じゃなく折り入った話ならば聞きたい。

 この状況にドンドゥルマは気を良くした。

「あら珍しい。私を主人公として扱ってくれるなんて」

 ソルベと目を合わせてからはこう付け足す。

「あなたこそ偽物のソルベなんじゃない?」

 ドンドゥルマとソルベは睨み合ったけれど、二人で視線を外したよう。

「別に折り入った話っていう程でも無いわ。でも、せっかくだからあなた達にも協力してもらえないかしらと思って呼んだのよ。だって実は私、リーデッヒに会う約束をしたの!」


(((次話は来週月曜17時に投稿します


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