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親子の再会

「レイアが、来たのか。」

 エリオットは枯れた声を振り絞る。


「はい。レジアス国軍とヴォルクウェイン王国軍を引き連れて来ています。」

「旦那様、ここは一時それがしにお任せあれ。」

「少しの間だけだ。ヘクター、頼んだぞ!」

「おうよっ!」

 エリオットは城壁を下り、兵が駐屯する幕舎の方に行くと、そこには懐かしい娘の姿が。


「レイアか・・・よく、戻って来てくれた。」

「お父様・・・」

 二人は長く抱き合い、再会を喜んだ。


「しかし、会えたのは嬉しいが、何もこんな危ない所にまで来んでも・・・」

「いても立ってもいられず、来てしまいました。」

「辺境伯殿。お初にお目に掛かります。ヴォルクウェイン王、ジュスタールにございます。」

「これは国王陛下。レイアの父、エリオット・ハースティングでございます。」

「我が民の為、よくぞ耐えてくれた。援軍が来たからには、もう大丈夫だ。」

「ご助力に感謝いたします。」

「ここにいるのは皆、ヴォルクウェイン軍だ。者共、城壁に旗を掲げよ。我が軍が健在であることをロナスに示してやれ。」


 程なく、ダンテ関門に多くの真新しいレジアス国旗が翻る。

 それだけでなく、バーケット家やバレット、スレイブといった王国を代表する将軍や近衛騎士団の旗も掲げられ、多くの兵が鬨の声を上げる。

 これを見たロナス軍は一旦兵を退いた。


「何とか間に合いましたな。」

「かつてロナスに遅れを取ったことのない強兵が未だ健在ということが分かれば、奴らも侵攻を諦めるでしょうな。」

「それにもうすぐ冬です。」

「王国を代表する将軍がこれだけそろい踏みすることも珍しいですからな。ロナスも今頃肝を冷やしていることでしょう。」

「王家としても、エブロンやサリーに同盟に基づく威嚇を要請している。彼らもこれ以上介入することの愚を悟るだろう。」


 そして夜になった。久しぶりに静かな夜だ。

「もう、会えぬものと覚悟しておったが、こうしてまた話が出来て嬉しいぞ。」

「私もです。お別れも言えずに国を去ってしまいましたので。」

「陛下には、何と感謝してよいやら。」

「お気になさらず。私はただ、人柄が良く、見目麗しい方に結婚を申し込んだだけです。」

「いや、親元を離れて以来、娘がこれほど晴れやかな顔を見せることは無かった。これだけで、満足でございます。」

「ちょっとした手違いで、レジアスという国を無くしてしまいましたが。」

「それがしは気にしておりませんぞ。そもそもあの若造との婚約にも反対でしたし、あの国への愛想は尽きかけておりましたからな。」

「そうおっしゃていただけると、少し気が楽になります。ところで、私は辺境伯殿を何とお呼びすればよろしいでしょう。」

「それがし、叶うことならヴォルクウェインの一員として認めていただきたいのですが。」

「いや、そうではなく、その、妻の父親ですので・・・」

「いつかは義父と呼んでいただけると、嬉しいですな。」

「お義父様、今後とも末永く、よろしくお願いいたします。」

「早いな・・・」

「我が弟には、エリオット・ハースティング辺境伯様を徹底させます。」

「まあ!それは酷いことです。」

「アイツはそれくらいが丁度いいと思うんだけど。」


「それはそうとレイア、ポーラには会ったか。」

「申し訳ございません。急いでおりましたので、こちらに直接来てしまいました。」

「ならば明日、陛下とアンドリューとともに会ってあげなさい。あれ以来、ずっとふさぎ込んでいるのじゃ。」

「それはいけません。早速、ご挨拶に伺ってまいりまあす。」

「陛下におかれましても、ここは我々に任せて、我が城でごゆるりとなさいますよう、お願いします。」

「わかりました。」


「それにしても、幼き日のレイアが戻って来たみたいで嬉しいぞ。」

「お父様もこれから益々お元気でいていただかなければなりません。」

「そうだな。孫の顔も見ないといけないからな。」

「・・・・」

「うん?」

「大変申し訳ないことなのですが、夫は少し・・・」

「ああ・・・そういう殿方も意外に多いからな。」


 和やかな時間はゆっくり過ぎ、次の日、レイアたちは辺境伯家の居城に向かった。


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