レジアス救済に向けて
「そうですか。ついに王家がそこまで・・・」
この日、ダレン港で貿易を行っている商人伝いに、レジアス王家が首都を放棄し、事実上滅亡したことが伝えられたのだ。
「それで叔父上、今後のレジアスとの関係はどうなるのです?」
「現王家が主権を維持、あるいは主張するのか。あるいは、首都を制圧した者のリーダーが王として立つかで対応は変わります。」
「我が国がどちらを正当な政府として認めるか、ということだな。」
「そのとおりでございます。」
「商取引はどうなる。」
「レジアス政府との取引は当面、停止した方が良いでしょうし、商人も手を引っ込めるでしょう。」
「政府以外なら、問題無いということだな。」
「商人は高い契約保証金を設定するでしょうな。」
「そうだな。それだけの危険はあるよね。」
「そして、それでも売れると思います。」
「同時に、我が国には過去に例が無いほど、食料が溢れている。」
「というより、行き場の無い食品がうなっておりますな。」
「ダレンの領主相手なら、販売できるのでは無いか?」
「では、産業担当を急ぎダレンに派遣しましょうか。」
「そうだね。本来なら、外交ルートを通じるべきだろうけど、相手政府が無いからね。」
「陛下、ありがとうございます。」
「いや、我が国にもメリットはあるから、気にしなくて良いよ。」
こうして、レジアスに担当者が入り、現地領主との交渉や、国内の現況について調査が行われた。
その結果、ダレンの領主アーノルド・チェスター伯爵は、引き続いで取引を行う意思があることと、王家も当地に避難しており、彼らも我が国の支援を望んでいることが伝えられた。
「レジアスの状況もそれとなく分かってきたねえ。」
「そうですな。北部山岳地帯と港町周辺は持ちこたえているようですが、それ以外は無政府状態のようですな。」
「何とか、レジアスの民を救う手立ては無いものでしょうか。」
「海路での輸送は限界があるからねえ。いくら我が国に余裕があると言っても、とても運びきれるものじゃない。」
「至急、シェンドラの船をチャーターいたしましょう。商人の協力も得られると思います。」
「そうだね。ポルテン港を常時利用している船だけでも10隻を越えるはずだからね。」
「しかし、それだけでは抜本的な解決にはほど遠いと考えます。」
「そうは言っても、天候不順が原因である以上、何も出来ない。」
「そうでしょうか?」
「叔父上、何かあるの?」
「はい。レジアスを我が国に併合してしまえば、天候はたちどころに回復するのではありませんか?」
「確かに、それはそうかも知れないけど・・・」
「陛下、何とかできないものでしょうか。」
「まず、向こうの王家がそれを飲むかが問題だね。それに、安全が確保され、相手が誠実に対応してくれないとレイアを行かせる訳にはいかないよ。」
「そこは、外交担当を派遣して調整させましょう。」
「陛下、私はレジアスに行きたいです。たとえ、どんな困難が待ち受けていようとも。」
「できるだけ行けるようにするし、その時は私も行く。というより、祈るなら私もいないとね。」
「本当に、ありがとうございます。」
そこで三人は手順を検討する。
レジアス王家がその条件を飲むなら問題は無いが、普通はあり得ない条件である。
このため、最初はダレン領主であるチェスター伯爵領のみで試し、上手く行かない場合は併合宣言を取り下げる方向で調整することにした。
そして、レイアの安全確保のため、事前にヴォルクウェイン軍の上陸を条件とすることも決められた。
「では、細部の事務は外交担当が行うこととして、ジェラード国王との会見は私が行かねばならないでしょうな。」
「叔父上、行ってくれるか。」
「はい。交渉の行方は保証しかねますが。」
「よろしく頼む。」
「それと、ロナスが動いた場合の対応も決めておかねばなりません。」
「シェンドラ、サリー、エブロンとの同盟はどうなってる?」
「はい。元々三国は同盟関係にあります。我が国がそれに加われるかどうかですので、すぐに条約文書の各国持ち回りと調印が思われると聞いております。」
「みんなで集まらないんだね。」
「急を要しますので。」
「しかし、うちとロナスとの関係は悪くないと思うんだけど。」
「彼我の国力差から見て、ロナスがこちらの要請をまともに聞いてくれる公算も低いですな。」
「もしロナスがレジアスに攻め込みそうになれば、何とか泣き落としで矛を収めてもらうしかないね。」
「それこそ、非常に望み薄ではございますが。」
こうして、摂政ファンバステン・オリオールはダレン行きの船に乗る。




