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レジアス王国、仕切り直しを図る

 国王に対するクーデター成功と、ルシアン処刑の報は瞬く間に全土を駆け抜け、民衆は歓喜に沸き立った。


 王弟ジェラードは暫定王位に就き、その正当性を広く宣伝しつつ、事態の収束宣言を出し、沈静化に努めた。


 そして、各方面軍の司令官を据え置きつつ、引き続き従前の任務を遂行するよう命じた。

 各方面軍も、クーデターが完遂してしまった以上、それに異を唱えることは出来ないし、元々、王の危機に駆けつけることができなかった司令官たちだ。今さら文句を言える立場には無い。


 また、王都や周辺の都市においても、目的を達成したことと、将来への明るい兆しが見えたからか、治安も回復傾向にあるという。


 ただし、実際には何も変わっていない。


 雨が降らない状況はまだ続いており、6月以降、王都で雨量が観測されたのは僅か三日で、それも僅かな降水があったに過ぎない。

 当然、農業は壊滅的であり、昨年は軍の備蓄食料があったが、今年はそれも無い。

 クーデターこそ成功させたが、幹部の不安はこれが原因である。


「とにかく、教会とも連携して、民が再び暴動に走らないようにせねばな。」

「しかし、食糧供給のあてはございませんな。」

「まずは辺境伯との交渉だ。兄上は謝罪を渋っていたようだが、私はいくらでも頭を下げよう。それに、彼にとっても、娘の名誉が回復されるのだ。門を閉ざす理由は無くなるだろう。」

「そうですな。早速、内務卿を派遣し、交渉を再開しましょう。」


「それと、チェスター伯爵との交渉もだ。とにかく、少しでも王都に食料を供給してもらわなければ、政府がもたん。」

「応じるでしょうか。」

「その代わり、流民の排除については、何ら咎めんことを条件にせよ。」

「なるほど。それならヤツに恩を売れますな。」


「それと、外交ルートを復活させ、ヴォルクウェインに王妃の来訪を要請せよ。」

「来てくれますか?」

「なに。ここまで来なくてもダレン港まででよいのだ。軍とチェスター伯の私兵で厳重に警護すればよい。」

「そのままこちらに連れ帰ることはお考えにならないのですか?」

「それをやると、海路を使わざるを得ない国との国交が絶えてしまう。ただでさえ、隣国がロナスとジッダルなのに。」

「そうですな。現状で外交的に孤立することは避けるべきですな。」

「それに、聖女はダレンの市民に見せれば十分だろう。後は良く似た人間を聖女に仕立て上げておけばいい。」

「しかし、隣国の公人ですぞ?すぐにバレるのでは?」

「その隣国に渡るレジアス人が年間何人いるんだ?」

「そうですな。」

「教会が認定すれば、それは聖女だ。」

「しかし、陛下はその女性と結婚するのですぞ?」

「彼女はあくまで兄の元婚約者だ。結婚しない理由はある。」

「分かりました。では、外務卿にはヴォルクウェインに行ってもらいましょう。」


「他にも、人事、軍の再編案など、急ぐ案件がたくさんございます。」

「人事は基本的に全員留任だ。今回、功績のあった者については、追って沙汰する。現状ではいかに滞り無く体制移行できるかが優先されるべきだろう。」

「そうですな。では、陣営内の諸侯には、そのように伝えておきます。」


「それとリデリアだが、当面は王都から遠ざけろ。」

「リデリア派の引き締めですな。」

「妹は本当に気の毒だと思うが、城内にいてもらっては困る。」

「ではどこにいたしますか?」

「シンクレア領内はダメか?」

「婚約は破棄されてしまいましたし、今さらシンクレア派を取り込まなくてもよろしいかと。」

「確かに、ベッドフォードとテンセルが公爵になるなら、シンクレアは用済みとも言えるな。」

「元々、信頼できる御仁ではありませんので。」

「しかし、そなたの領地では、ヤツも不審がるな。」

「では、ハースティングに押しつけましょうか。」

「そうだな。あそこはアーヴィング派だったな。」

「はい。」

「ならば、あの一派を取り込むことにも役立つだろうし、何なら王家からの詫びとして、そのまま嫁がせても良い。」

「そこは、状況が落ち着いてからということで。」


「しかし、時間が足りんな。民のガス抜きはしたが、その効果は長続きするものではない。」

「はい。今度は我々が矢面に立つ番ですので。」

「今はそなたしか頼る者がいない。宰相としてよろしく頼むぞ。」

「御意。」


 こうして、慌ただしく新体制はスタートする。


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