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聖女の奪還

 一方、ヴァージル枢機卿の命を受けた枢機卿、ジョン・ブリストルとそのお付き2名、並びにグレッグ公爵が付けた護衛数人は、海路ヴォルクウェインに入った。


 そして、いつも通りブリストルは聖ポルテン教会に逗留することになった。


「これはブリストル枢機卿。度重なるご来訪、大変でございますな。」

「ガレ殿には、何度も面倒を掛ける。」

「何か状況に変化など、ございましたかな。」

「総本山でもいろいろ知恵を出してはみたが、やはり聖女様にお戻り頂くほか無いという結論になった。そこで、聖女様を説得するための使者としてまいったものだ。」

「それは、かなり望み薄な状況とは存じますが、そういうことでございますれば、私が急ぎ登城し、謁見の日取りを決めてまいります。」

 ガレ枢機卿はすぐに登城し、ブリストルの来訪とその目的を伝えた。


「そうか。なかなか諦めてはくれんか。」

 いつもの執務室にジュスタール、レイア、摂政が集まる。


「結論は決まっておりますが、問題は王妃殿下の警備体制でございます。」

「今や私なんか問題にならないくらいの重要人物だからねえ。」

「いや、以前からそうだったと思いますが。」

「そりゃあ、大国の聖女様と小国の王だからね。」

「そんなことはないと思いますが・・・」


「とにかく、無理矢理レジアスに連れて行かれるような事態は最悪だ。」

「そうですな。一度連れ戻されると奪還は至難の業でございます。」

「しかし、海路に限定されるなら、レジアス行きの船については、出港を許可制にしてしまえばいいんじゃないか?」

「それは経済的な観点から、あまりに非効率と言わざるを得ません。」

「じゃあ、当面の間だけというのは?」

「まあ、たったの四隻ですから、できないこともありませんが。」

「あとは、単純に警備を増やし、レイアの単独行動は禁止ね。」

「畏まりました。」

 そうして翌日、ブリストル枢機卿との会見が行われた。


「陛下におかれましては、ご多忙にもかかわらずお目通りが叶い、大変光栄に存じます。」

「うむ。この短期間に相次いでの来訪。事情は察するが、どのような用件であるか?」


「現在、我が国は未曾有の危機に直面し、民は飢え、町は戦乱に巻き込まれているような有様でございます。これも全て、聖女様を失った神罰であり、国の危機をお救いできるのもまた、聖女様のみでございます。国王陛下並びにヴォルクウェイン王国に置かれましても大切な王妃殿下ではございますが、何卒、困窮極める我がレジアスにお返し頂きたく、ここにまいった次第でございます。」


「正直、余としても断腸の思いではあるが、さすがにそれには応じられん。すでに彼女は一国の王妃。はいそうですかとはいかぬ。大変申し訳ないが、要望に応えることはできぬし、これからも考えが変わることはない。」

「ではせめて、一時滞在だけでもお認めになってはいただけませんか。」


「一時とはどのくらいの期間か?」

「それは、私にも分かりかねますが、おそらく年単位、いや、数年単位になるかも知れません。」

「それは長すぎる。自国の公務を数年できない王妃などあり得ないだろう。」

「そこを何とかお願いいできないでしょうか。」

「それに、内戦状態で身の安全が確保できるか?警備が万全と言えるのか?」

「国と教会挙げて、万全の体制をお約束します。」

「そもそも、そんな約束できんであろう。事態がもう少し落ち着き、両国の信頼関係が構築されたなら、王族の訪問もあり得るが、今まで疎遠であった上に、現体制がいつ倒されるか分からない状態で国家間の約束などできぬ。それは将来の話として、今は諦めていただく。」

「王妃様のお気持ちはいかがなのでしょうか。」

「余がこう言っているのだ。それ以外は無い。」

「申し訳ございませんでした。」


 その翌日、聖ポルテン教会に向かうレイアの馬車が何者かによって襲撃されたが、警備に当たった騎士団により撃退された。


 これを受けて、ポルテン港からダレンに向かう船便は、国王命令により全て出港禁止となった。

 また同様に、シェンドラ王国行きの船についても、出国者は身分証の提示と保証人による証明が必要になった。ヴォルクウェインやシェンドラ国民ならともかく、滞在中のレジアス人にとっては、出国の手段が事実上無くなったといえる。


 そして、ジュスタールは犯人の検挙に全力を挙げることとなった。

 また、いくら海路があまり使われていないとは言え、レジアスにとっては大きな影響が出ることになるだろう。


「やはり、強硬手段に出てきましたな。」

「まあ、ロナスの手の者という可能性も残ってはいるが。」

「しかし、このタイミングならレジアスでしょう。」

「そう思わせておいて、ロナスかもよ。」

「まあ、今は犯人検挙に全力を尽くすのみですな。それと、当面は王妃殿下は教会に行くことはなりませんぞ。」

「ご心配とご迷惑をお掛けし、申し訳ございません。」

「いや、とにかく無事で何よりだよ。」


「まあ、どのみちご懐妊となれば、城外に出ることはできなくなりますが。」

「叔父上、そう急かすな・・・」

「せっかく、立派になられたと思いましたのに・・・」


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