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聖ポルテン教会

 一週間の船旅を経て、レイアたち一行はヴォルクウェイン王国の首都であり、滞在先でもある港町、ポルテンに到着する。



「やっと着きましたな。」

「ええ、長かったですね。」

「しかし、これでもう安心でございます。」

 目の前には港町特有の喧噪と活気がある。

 この街は、西のレジアス王国との交易こそ盛んでは無いが、東や北の国との交易はそこそこ盛んであり、この街も交通の要衝として栄えている。


 ヴォルクウェイン王国は、国土のほとんどが荒地であり、国土面積は広いが小国という扱いである。

 ただし、このポルテン地方一帯は季候に恵まれて豊かであり、ここだけを見るとそれが実感できない賑わいを見せる。


 ちなみに、この国における聖教の影響力は決して大きいものでは無く、国民の約1割程度の信徒数しかおらず、大半はヤース教という宗教の影響が強い。


 この宗教は、聖教の元となった宗教であり、聖女を信仰するかそうでないか程度の違いでしか無く、よって、両国の文化や宗教的価値観は近似している。


「ここでは、聖女も偽聖女もないのですね。」

「まあ、聖教の信徒にとっては大きい違いでしょうが、そもそも実際に聖女様を見たことがある者もごくごく一部でしょうから。」

「そうですね。レイア様は貴族のご令嬢としか見えません。」

「ですが、たとえ外国の、とはいえ、良家のお嬢様であることに変わりはございません。町中は何かと危険もございますゆえ、ご注意を。」

「はい。わかりました。」

「では、ポルテン教会に向かいましょう。」

「はい。」


 案内するエルマー自身、この町は初めてである。

 しかもヤースの教会が複数あり、聖教会を探すのには苦労したが、それでも何とか夕方にはたどり着くことが出来た。


「ここが聖ポルテン教会ですね。」

「小さいですね。」

「そうですね。この国には7つしか聖教会はございませんし、ここがそれでも最も大きいと聞いております。」


「もし、聖ポルテン教会の方でしょうか。」

「はい。私はこの教会で助祭を務めておりますフィロメナ・オジェと申します。失礼ですが、ご用の向きは何でございましょう。」

「突然お伺いし、大変恐縮でございます。私、セントラルワース大聖堂で司祭をしておりますエルマー・フォーサイス、そしてこちらにおわすは聖女レイア・ハースティング様でございます。」

「へっ?あの・・・その・・・」

「突然お伺いして大変申し訳ございません。俄には信じられないことかとは存じますが、ガレ枢機卿様であれば、私を存じ上げておりますので、できますればお会いいたとうございます。」

「あ、あの、しかし・・・」

「これが私の身分証でございます。」

「た、確かに司祭様でございますね。では中へどうぞ。」


 確かにいきなり聖女ですと言ったところで信じてもらえるはずが無い。

 オジェ助祭の対応は、至極真っ当なものだろう。



「おお、これはこれは聖女様、お久しゅうございます。ジャンパール・ガレでございます。」

「こちらこそご無沙汰しております。」

「それで、突然のご訪問、いや、聖女様が他国に赴くなど前代未聞ではございますが、一体、どのようなご用で?」


「実は、十日前にレイア様が突然、婚約破棄され、国外追放処分になり、こちらに参ったものでございます。」

「何と、何故にそのようなことに・・・」

「レジアスでは新国王が即位したのですが、王が聖女を眉唾だと一方的に決めつけ、追放したのでございます。」

「それは何と嘆かわしいことを・・・」

「そこで、大変不躾なお願いで恐縮なのですが、しばらくここでお世話になることはできないでしょうか。」

「も、もちろんでございます。まあ、セントラルワースと比べれば、ここは小さく質素で、ご満足いただけないとは思いますが、どうぞここで落ち着いていただければと存じます。」

「枢機卿様、ありがとうございます。」

「いいえ、これは我々にとってもとても名誉なことでございます。誠心誠意、務めさせていただきます。」

「大変恐縮ですが、よろしくお願いします。」


 こうしてどうにか三人は滞在場所を確保することができた。

 元より質素な生活には慣れている三人である。


 教会も小さいとはいえ、三人増えたくらいなら何とかなるし、これから総本山からの援助もあるだろう。どうにか落ち着いた日常を取り戻すと思われる。


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