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確信

 春も本番を迎え、日差しにも初夏の力強さが混じってくる5月。

 新しく開墾した農地では早くも初めての実りがもたらされている。


「いやあ、こないだ種を播いたばかりじゃが、もう収穫かえ?」

「確かにカブやほうれん草は早いもんだが、それでも去年までは荒れ地だった訳じゃからのう・・・」

「年に何回も収穫できたりして・・・」

「さすがに麦はそういう訳にはいかんが、それでもこれだけよく育つ畑は滅多にないのう。」

「おう、植えたものが全部順調なんて、普通は無いことじゃからな。」

「隣村の奴ら、予定地より奥まで耕し始めたって言うぞ。」

「ワシらも早う広げんと、周りの村に土地を取られてしまうぞい。」


 そう、ジュスタールたちは春を迎えるに当たって、ポルテン地方辺縁部の各村に開墾予定地を割り当て、更に新規開拓団の村落建設予定地や既存開拓団の経営規模拡張まで見据えた計画を立てていた。


 しかし、農民たちにとっても経験がないほど優良な土地が広がるのを目の当たりにした彼らは、驚くべきスピードで自らのテリトリーを増やす行動に出ており、開拓ラッシュが起こっているのである。


「しかし、この季節になってもしっかり雨が降ってくれますなあ。」

「これなら昨年を更に上回る豊作が期待できるのではないかな。」

「ええ。これも全て王妃様のお陰でございます。」

「そうだな。ありがとう、レイア。」

「あの、たまたまではないでしょうか。」

「神のご加護を聖女様が一番信じていないというのも、おかしな話だなあ。」

「陛下、王妃様は謙虚なのでございます。」

「そうだな。そこがレイアの一番良いところだからな。」


「しかし王妃様、さすがにこれは確定ですぞ。すでに市場には春に種を播いた作物が出回り始めております。それも大量に。」

「それはとても喜ばしいことですね。それで、農家の方々はどんどん畑を広げているのでしょうか。」

「ええ、すでに今年度の開拓計画分は、ほぼ農地に変貌しております。これから役人を派遣し、新たな線引きをしないと、村ごとの争いに発展しかねません。」

「陛下、それと同時に王室所有地を設けて、そこを森にすることをお薦めいたします。」

「わざわざ優良な土地を森にするのか?」

「はい。かつてレジアスでも同じ事が起きたそうです。人口が急激に増え、それに伴い農地ばかり増えた結果、薪が大いに不足したとのことです。」

「なるほど。それは確かにそうだな。」

「それも早急に進め、農民に徹底させましょう。」


「薪は住民が自由に採取して良い代わりに、森を守っていただきましょう。」

「そうだね。王家で管理する余裕は無いからね。」

「それを村の境にしても構いませんな。」

「それと叔父上、灌漑水路などは必要ないのか。」

「それが、現状では雨と井戸水が農業用水の全てで、元々川すら無かった地ですから、これといった水源がございません。」

「ならば、最初はため池を作って、そこから水路を引くことになるな。」

「まあ、農民がその気になってくれるかどうかですが。」

「水に困っている訳じゃないからなあ。」


「でも、いざという時の備えは必要ですし、大規模化するなら一度に大量の水を使える体制は作っておくべきですね。」

「さすがは王妃様。どこかののんびり屋とは違いますな。」

「ポールももう少ししっかりしてくれるといいんだがな。」

「そういうところですぞ、陛下。」

「さ、さあ、今日もたくさん仕事したし、一休みだ。」


 微妙な顔の摂政を部屋に残し、ジュスタールとレイアはテラスに出る。

 昼下がりの日差しは優しく、遠くの海は少し霞んで、いかにも春らしい穏やかさだ。


「今日も町は賑やかそうですね。」

「人々に活気があるのはいいことだ。」

「小鳥もたくさん囀っています。」

「平和そのものだ。」

「そうですね。穏やかという言葉そのものの風景が広がっていますね。」

「そう言えば、明日は雨だね。」

「分かるのですか?」

「だいたい四日おきに雨が降っているからね。」

「そうなのですね。さすがです。」

「うん。もう確信してるよ。この国はもっと豊かになるって。」


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 一方、こちらはレジアス国内のとある村である。

「ダメじゃ。タダでさえ少なかった雨がまた降らんようになってきた。」

「去年もこんな感じじゃったな。」

「どうするよ。今年もこれじゃと、もう持ちこたえられん。」

「また今度も、井戸が涸れる寸前じゃ。」

「まだ5月になったばかりじゃぞ。」

「こんなことなら、ため池を作る話があった時に土地を売って、余所に出て行った方がマシじゃった・・・」

「そうじゃのう。しかし、今からでは土地も売れんじゃろうのう。」

「作物ができん土地など、誰も欲しがらんわ。」

「それはそうとしてどうする?」

「村長に相談じゃ。」

「相談してどうするよ・・・」

「夜逃げするかのう。」

「どこに行っても同じじゃ。ワシらはもうダメじゃ・・・」


 彼らも既に確信している。これが天の気まぐれではないことを・・・


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