流民の出現と暴動の発生、経済の変化
こちらのミスでEP45を先にUPしてしまいました。
お詫びの上、訂正させていただきます。
「陛下、ついに王都でも暴動が発生したようです。」
「どうやらそのようだな。」
既に城内は騒然としている。
窓際に立ち外を眺めるルシアンは、あちこちから立ち上る煙を見ている。
そして、彼は窓を見つめたまま話を続ける。
「軍や騎士団は動いたか?」
「はい。すでに鎮圧に向かっておりますが、同時多発的に発生しており、収拾には時間が掛かると思われます。」
「食糧配給に対する不満が原因か?」
「神罰だと叫ぶ声を聞いたとの報告がございます。」
「教会非難が理由なら、まだ救いがあるのだがな。」
「いえ、そのようなことを言っている場合ではございません。既にかなり深刻な状況でございます。これは王家に対する怒りの声に等しいかと。」
「そうだな。しかし、春まで持ちこたえられなかったか。」
「王宮の食事さえ、あの状況ですので、民の暮らしは推して知るべしかと。それに、寒さも例年より遙かに厳しいですので。」
「とにかく、治安の回復を最優先させよ。何をするにしても、今の状況では話にならん。」
「畏まりました。全軍を動かします。」
この命により、軍の治安維持活動は、建国以来例が無いレベルに高められることになる。
また、各地で流民が発生し始めている。
水と食料を求め、一時避難的に居所を去った者もいるだろうが、すでに住み慣れた土地を離れる決心の者もいるだろう。
流民の行き先は、より温暖な南部と、食糧事情が良い北部の二方向に集中しているようだ。
まだ、国民のごく一部のに限られた動きではあるが、この流れがさらに拡大すると経済、治安、食糧配給計画に大きな影響を与えることになる。
そしてそれは、緊急対策の失敗を意味する。
「今は対策の改善を図るとともに、民の不満を和らげる、あるいは別に矛先を向ける必要があるな。」
「歴史上、そのようなときに戦争を起こす為政者が多くいます。」
「さすがに戦争はダメだ。それに、戦に勝って民の不満が収まる手合いの問題では無い。」
「食料を求めて戦をするのは枚挙に暇はございませんが。」
「そうなると、相手はロナスに限られる。ジッダルやヴォルクウェインからは十分な食料が手に入らないのだからな。」
「はい。かなりの強敵となります。」
「やはり、戦争を起こすという選択はない。それに、こんな状況ではとても勝ち目は無い。」
「そうですな。ならば責任転嫁しかございますまい。」
「それも相手は教会に限られる。」
「聖女を追放された教会の方が説得力を持ちます。それも危険な賭けかと。」
「無知蒙昧な民には、迷信が強い追い風になるか。」
「よりにもよって、聖女追放直後のこの状況ですので、喧伝に効果があるとはとても思えません。」
「となると、正攻法で暴動を抑えつつ、食糧支援を続けるほかないな。」
「それが唯一の手立てでございましょうな。」
「それしか無いというのが心細いな。」
「はい。大変残念なことですが。」
「それで、民の流亡先はどのような状況だ。」
「北、南とも多くの諸侯が領内への流入に制限を掛けております。」
「受け入れる余力が無いということだな。北もそうなのか?」
「元々、北に多くを求めることはできないでしょうが、それに加えてハースティングですからな。」
「再度、使者を派遣して粘り強く交渉するしかないな。」
「しかし、謝罪が無ければ動きますまい。」
「残念ながら謝罪も赦免もできん。悪いのは聖女な訳だからな。」
「確かに、謝罪した途端、今回の危機が王家によってもたらされたことが事実として確定しますからな。」
「ああ。王家がもたん。」
「しかし、交渉を諦める訳にはまいりませんな。」
だが、さすがのルシアンや宰相でも、良い知恵が浮かぶ訳では無い。
「今回の食糧不足で、かなり国力を喪失したな。」
レジアスの食糧危機は、水不足に起因するものであり、国民生活や産業のあらゆる面に暗い影を落としている。
もちろん、社会不安や戒厳令、牛馬の減少による運送力停滞により、商業が低迷し、水不足は工業にも暗い影を落とす。
そして、流民や配給に並ぶ国民が本来行っていたであろう労働力の喪失も深刻で、景気が急速に悪化し、物価は上昇するのに所得は減るというかなり危機的な経済状況になっている。
これに加えて、ルシアンが即位後に進めようとしていた農業、商業、公共事業改革などは軒並みストップし、公共投資も滞っている。
レジアスは、今まさに厳しい冬を迎えているのだ。
「ほかにできることは無いか?」
「できるのは、春を待つことだけでございます。しかし、やらないといけないことは、権力基盤強化、軍備の維持、交易の促進、救荒作物への栽培転換など、いろいろございます。」
「前向きなようで後ろ向きだな。」
「いえ、後ろ向きのようで前向きですぞ。」
「そなたのような有能な者が宰相でいてくることが、私にとって最大の僥倖だな。」
「これからもそう言っていただけるよう、何とか頑張ってみます。」




