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レイアとベティ

 ヴォルクウェイン王宮に移って来たのはレイアだけではない。


 ベティ・ウォルジーとエルマー・フォーサイスの二人も彼女の世話役として付いてきている。

 ベティは孤児院で育ち、今は同い年のレイア付きの世話係をしている。とても活発で庶民的な彼女だが、温厚なレイアは基本的に誰とでも上手くやれる。


 王宮では婚約者用の部屋が急ピッチで準備中ではあるが、今はまだ客人用の部屋に逗留している。

 ただし、レジアスほどではないにせよ、さすがは王宮の一室だけのことはある。

 そんな彼女の私室での話。


「レイア様、慣れない生活でお疲れではございませんか?」

「いえ。むしろ良い生活をさせていただいて、却って申し訳なく思っております。」

「でも、王妃様になられるのですから、このくらいは当然のようにも思えますが。」

「確かに、王妃としてはそうですね。でも、こんなに贅沢な空間をいただくのは、罪悪感も感じます。」

 そう言って彼女は俯き加減になる。


 真面目な彼女が考え込むのはいつものことであるが、最近は特にそういう表情をすることが多くなったと、常に側にいる彼女は感じている。


「では、お茶を入れますね。」

「ありがとうございます。ベティには本当に苦労を掛けていますね。」

「とんでもございません。孤児に過ぎない私が聖女様の身の回りのお世話ができるなんて、とても名誉なことですから。」

「でも、住み慣れたレヴフォートを去ることになってしまいました。」

「確かに私はあの町で生まれ育ちましたが、良い思い出ばかりではありませんでしたから。」

「それでも、苦労を掛けていることに変わりはありませんわ。」


「レイア様、何かお悩みでもあるのですか?」

 ベティはカップに茶を注ぎながら聞く。


「やはり、レジアスの民やファルマン様のことが心配です。」

「確かに何の罪も無い信徒の方々は心配ですね。でも、こうなってしまっては何もすることができません。悩んでも仕方の無いことだと思います。」

「でも、もし女神の加護がこの国に移ったのだとしたら、私のせいです。」

「その代わり、ヴォルクウェインの民が救われるのですよ。」

「それはそうですが、私がレジアスの民を追い詰めてしまったことに変わりはございません。それが、とても辛くて・・・」


「何ともお労しいことです。でも、元はと言えば、あのアホ陛下が悪いんですよ。」

「それはきっかけです。直接的には私の祈りが原因でしょう。」

「それこそ結果論です。それにレジアスの人たちはそれを知らない訳ですから。」

「バレなければいいというものではございませんよ。」


「申し訳ございません。さすがはレイア様です。でも、悩むよりもっと大事な事はたくさんあります。」

「そうですね。できるだけ早く、より良い方法を考えなくてはなりません。」

「皆さん協力して下さると思います。」

「そうですね。皆さん良い方ばかりですものね。」

「そうです。まずは早くご結婚されて身を固めることです。」

「まずはそこからなのですか?」

「当然です。レイア様は苦労しすぎです。」

「その・・・私の事は後回しで良いのですが。」


「できることからまず整理していく。大事なことですよ。」

「いいのでしょうか。」

「それに、レイア様のお立場が確たるものになるというのは、レイア様だけでなく、この王家やヴォルクウェインの信徒のためでもあるのですよ。」

「そうですね。さすがベティです。」

「はい。エッヘンでございます。」

「本当に、ベティがいると元気が出てきますね。」

「そのために私がおります。」

 レイアの表情はいくらか明るくなったように見える。

 ベティの大好きな穏やかな笑顔だ。


「では、せっかくのお休みです。存分におくつろぎ下さい。」

「分かりました。お言葉に甘えます。」

「それでは、お菓子のお替わりをもらって来ますね。」

「ベティ、食べ過ぎではありませんか?」

「教会では滅多に食べられないのですから、たまにはいいと思いますよ。」

 きっと、ベティに限ってはたまではないだろうが、主に止める力はもちろんない。


「やはり、ベティには敵いませんね・・・」


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