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深まる対立と政争

「そうか、陛下はシンクレアに正式に打診したか。」

「はい。リデリア殿下との婚約発表も年内に行うようですな。」

「かなり焦っているようだな。」

 ここはいつものジェラードの私室。


 既に王宮内は騒がしくなっているが、ここだけは異様に静かだ。

 もちろん、彼に監視の目は光っているが、人出も足りないのだろう。

 それが増員された気配は無い。

 いつものように マシュー・ベッドフォード侯爵が訪れている。


「シンクレアのことだ。どうせ勝ち馬にしか乗ってこぬ。今の状況なら心配せずとも陛下から離れる。」

「それは間違いございませんな。リデリア殿下に付いている者共も、概ねそのような者達でございます。」

「まあ、元々子供を利用したがるような輩だからな。信頼はできんが、数は力だからな。」

「はい。そのとおりでございます。」


「それで、肝心の陛下は誰を妻に選ぶつもりだ?」

「サリー王国のナターシャ殿下を正妃にお迎えすることで決定しております。国王名で正式な文書が発行されました。」

「国内の不安定化を他国の姫で収めるか。しかし、今の状況ならすぐに側妃も必要になるな。」

「はい。以前に候補に挙がっていた二人のどちらかでしょう。」

「婚約破棄直後に随分とお盛んなことだな。」

「そう取られると陛下は頭を抱えるでしょうな。」


「ところで、肝心の我が方の陣容はどうなのだ?」

「はい。グレッグ様の派閥に文官や中立派の取り込みなども順調に進んでおり、4侯爵8伯爵、26子爵に44男爵は確実に計算できます。」

「随分集めたな。下級貴族の数はまだまだだが。」

「それでも、子爵の中にはバレット、スレイブの将軍も含まれております。」

「なかなかに有名人が含まれているのだな。では、足が付かない程度にあること無いことを民に吹聴してもらおうか。」

「そうでございますな。丁度良い頃合いでございますな。」

「教会も巻き込め。しかし、こちらの足がつくようなことはするなよ。」

「ええ。もちろんでございます。」


「それと、辺境伯家はどうだ?」

「はい。どの勢力とも交流を絶っておりますし、分家を始めとする北部諸侯の多くも、これに同調している状況でございます。」

「街道を封鎖して、随分支障が出ていると聞くが?」

「はい。今のところは隣接するカーク子爵領経由で何とか人や物の往来は可能ですが、あそこも辺境伯家の分家なれば、いつ同様の措置を取り始めるか分かりませんな。」

「まあ、暮らしは不便になるが、そうしてくれた方が都合はいいな。」

「では、ハースティングに工作を仕掛けますか?」

「乗っては来ないと思うが、陛下に猛省を促し、伯に謝罪させたいと持ちかければ、話は聞いてくれるかもな。」

「ジェラード様のお言葉であれば、向こうもある程度は信用するでしょうからな。」


「ところで、陛下はこちらに先手を打ってくることは無いだろうか?」

「そのための多数派工作にございます。」

「力の行使はまだして来ないだろう。そんな余裕も無いしな。」

「では、その前にこちらが毒でも盛りますかな?」

「いやいや。今の状況なら兄上が対策に奔走し、失敗してくれた方が良い。今の状況で権力が転がり込んできても困る。そこまでして王になりたい訳では無いぞ。」

「そうですな。しかし、この状況でも殿下に頼ってこないということは、向こうもこちらをそういう目で見ているということでございます。」

「ああ。十分気を付けるさ。それで、聖女様は今、どうしている?」

「さあ、ダレンから船で東に向かったことは分かっておりますが、以降のことは分かりません。」

「あれもカードになるかも知れん。いっそのこと、我が妻に迎えてもいいかもな。」

「しかし、陛下との対立が決定的になります。今は時期尚早かと。」

「発表はな。しかし、当たりを付けておいても良いのではないか?」

「では、そちらも手配しておきます。」


 こうしてジェラードを中心としたグレッグ公爵派は本格的に動き始めた。


 まず、重臣会議の開催をルシアンに要求するとともに、商業ギルドや有力商人に対する働きかけを行い、静かにその勢力を拡大していく。


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