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干ばつと凶作

 さて、レジアスは夏本番を迎えたが、雨が3ヶ月近くまともに降っていない。

 夏は農業だけでは無く、生活用水も一年で最も消費する時期である。


 すでに、都を流れるロットホック川の水位はかなり下がり、中部や東部で最も大きいサリュー川も中流域の一部区域で干上がっているそうだ。

 もちろん、井戸も例外なく水位が下がり、浅い井戸などは既に干上がっているものも多い。


 農業も既に大きな被害を受けており、穀物、野菜、果樹問わず生育は悪く、既に今期の収穫を諦めた農民も増えているし、秋冬の食料需給予測をはじくために役人は奔走している。


「しかし、由々しき事態になりましたな。」

「全くだ。ここ数十年無かった事態がよりによって今年起きるとはな。」

「陛下のご即位と聖女追放が重なった年でございますからな。」

「そんなことは分かっている!それで今後、どのような対策を講じるかだ。」

「そうでございますな。多少苦しい状況を迎えたとしても、手厚い施策で民の動揺を押さえ込まなければなりません。」


「まずは食料庫の開放だな。」

「しかし、今後が見通せない以上、ふんだんに出す訳にはまいりません。」

「冬を越す最低限度に止めておく必要があるな。しかもこれらの食料は軍備でもある。」

「そのとおりでございます。軍の支持を繋ぎ止めるためにも、他国に備える意味でも全てを供出する訳にはまいりません。」

「それで民が持ちこたえてくれるかだ。」

「予算の一部を執行停止し、他国からの輸入に回す必要もございます。」

「そうだな。それと、商人による穀物の買い占めも厳しく取り締まれ。」

「御意。」

 宰相は早速、関係各位に対して指示を出すため退室する。


「クソッ!何でこんな時に・・・」

 ルシアンは激しく机を叩く。

 そして状況を整理しつつ対策に漏れが無いかを確認する。


 食料の供出は行った。元々豊かで備蓄の概念があまり無かったとは言え、他国から常に狙われてきた我が国にはそれなりの蓄えがある。これは食料もそうだが、購入代金に充てる財力についてもそうだ。


 現在の備蓄量を考えれば、切り詰めれば半年程度は持ちこたえることができるだろう。

 後はロナス、ジッダルを始めとする周辺諸国からの輸入を増やす必要がある。

 また、国内全ての地域の実情を把握し、特に干ばつが深刻な地域に手厚く支援物資を回さなければならない。


 次に民や教会、高位貴族や評議会対策だ。

 奴らがこの機に乗じて結託すると厄介この上ない。

 特にグレッグが弟と手を組む状況は最悪だし、強硬派が実権を握った教会も厄介だ。

 彼らが手を組むのを防ぐためには理論と力の両方で上回る必要がある。

 さあ、どうすればいい。


 もうここで雨が降っても当面の食糧難は避けられない。

 いや、食料は何とかできても水はあるのか?クソッ!どんなに善政を敷いても天気ごときに勝てないのか?


 とにかく堤防建設は不味い。却って民の不評と嘲笑を招く恐れがある。

 作るならため池だし、商業ギルドの締め付けではなく、商人の売り惜しみの方に注力しないといけない。

 人口の多くはセントラルワース地方に住んでいるのだから、川の上中流部で水を使いすぎてくれるのは困る。

 しかし、取水制限などどうやって掛けるのだ?


 考えれば考えるほど憂鬱な気持ちになる。

 自分が即位すれば新たな施策を次々に打ち出し、明るい空気が充満すると思った矢先にこれだ。

 無能と見下げていた父の時代より状況が悪いのはさすがに我慢できない。


「王に試練はつきものだ。」

 ルシアンは再び机に向かい、対策を纏めていく。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 宰相や内務卿の懸命な情報収集により、国内のおおよその状況は分かってきた。


 まず降水の状況であるが、デリラ山脈を抱える北部以外の地域では押し並べてここ三ヶ月の雨量が皆無であり、各所で水不足が深刻化していること。

 農作物の作況は例年の1割程しか見込めないこと。


 また、そのような状況では秋に播く種も大いに不足することが判明した。

 国内各地にある軍の食料庫を全て開ければ、半年は何とかなるとの事であるが、水の備蓄などは無い。


 そのような中で、政府は商人の買い占め禁止、井戸掘削やため池、灌漑水路建設の奨励、食料庫からの備蓄穀物供出、近隣国からの食料政府直接買付など、矢継ぎ早に緊急対策を講じることになる。 


その間、雨が降ることは無く、水不足が深刻さを増す中で、暑い夏はまだ続く。


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