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小さな変化

 今日は朝から雨です。

 春の雨は優しく、それでいて芽吹きを後押しする、とても力強い一面も持っております。


 そして雨の日は、神が地上では無く雲を光で照らし、水を地上に送る日です。

 ですので、聖女は雨の日も恵みに感謝して、朝の祈りを行います。

 雲の上にある太陽をイメージして。 


 そして、長い祈りが終わり、レイアは顔を上げる。

「聖女様、朝のお勤め、ご苦労様でございます。」

「ありがとうございます。今朝も良い祈りができました。」

「そろそろ朝食の準備が整っております。」

「皆さんには本当にお世話になっております。居候の身でとても心苦しいところではございますが・・・」

「何をおっしゃいますか。私共にとっても聖女様にお会いし、こうしてお世話させていただけるなんて、本当に光栄なことなのでございます。できれば、ずっと居ていただきたいものでございます。」

 こうしてレイアとロザリーは食堂に向かう。


「父たる太陽と母なる豊穣の大地よ。明日の祈りの糧とするため、この食事に祝福を。」

 食堂に集まった皆で祈りを捧げ、食事が始まる。


「しかし、雨は何だか憂鬱な気持ちになりますな。」

「ほう、レジアスでは、そのようにお感じになる方が多いのですかな?」

「ええ、皆さんはそうではないのですか?」

「ヴォルクウェインは元々雨が少ない地ですので、大変有り難く思っている者が多いはずです。特にこれから夏に向けて、ほとんど雨の降らない時期になりますので。」

「まあ、暑いのに大変でございますね。」


「確かに気温は高いですが、湿気が無く、比較的過ごしやすいとは思います。」

「そうなのですね。レヴフォートはそれほどでもございませんでしたが、南部のダレンはとても蒸し暑いと聞きました。」

「そうでございますか。やはり、両国で季候は違うものなのですね。ここポルテンであれば、もっとダレンと似た季候であっても良いと思うのですが、残念なことでございます。」

「それでも、ここ数日は晴れと雨が交互に訪れておりますね。」

「ええ、例年より雨が多いように感じます。私共といたしましては、実りが多いことを祈るばかりでございます。」


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「さて宰相よ。教会の動きはどうなっている。」

「はい、新しいヴァージル枢機卿が内部の引き締めと信徒への教導を強化しているようですな。」

「そうか。なかなかに厄介な男らしいが、今はこちらに手出しするどころではないだろうな。」

「ええ、守勢一辺倒ではないかと。」

「このまま潰れてくれても一向に構わんがな。」

「まあ、そう簡単には行きますまい。こちらの横断幕も静かに効いているでしょうからな。」

「潰れないにしても、政治に口出ししない程度には弱って欲しいものだ。」

「そうでございますな。」


「それと、新たな婚約者についてはどうだ?」

「はい。テンセル侯爵家のセリ-様を正妃とするべく動いております。目下最大の懸案はやはり国内の多数派工作の行方でございます。グレッグ派の動向が何よりも重要でございますので、侯爵の支持は不可欠なものと考えております。」

「そうだな。教会が弱体化している以上、ヤース教徒の姫よりは国内の有力者の娘の方がより適切と言えよう。分かった。先方に異論が無いのであれば、それで内定するように。」

「畏まりました。」


「それともう一つ。リデリアの婚約はどうなっている。こちらの派閥でも他国でも良いのだが。」

「ジェラード様を黙らせるには丁度良いですからな。少し年齢差はございますが、シンクレア家の嫡男をと考えております。」

「ジェラードも私に刃向かうような愚かな真似はしないだろうが、シンクレアをこちら側に引き込めれば恐らくは盤石だ。」

「シンクレア家であれば、誰も反対はし辛いですからな。」

「それに、あそこの当主は保身にだけは長けているからな。こんな時期だからこそ、妹には平穏な暮らしをしてもらいたいとは思う。」

「そうでございますな。では進めてまいります。」

「頼んだぞ。」


「それと、最近雨が少ないようでして。」

「まあ、そういうこともあるだろう。日照りや洪水も今まで全く無かった訳では無い。」

「確かにその通りです。そのための堤防建設でもありますからな。しかし、聖女様を追放した直後の天候不順はこちらにとっての逆風になりかねません。」

「そうだな。しかし、天候不順を聖女不在と結びつけることそのものが迷信なのだ。これを民に啓発していくほかはないだろう。」

「そうでございますな。」


「それに、毎日良い天気ではないか。これに文句を言うのはどうかと思うぞ。」

「ただし、堤防だけで無く、ため池も必要かもしれませんな。」

「そうだな。灌漑水路は多いがため池は少ないからな。なまじどこも優良な農地ゆえ、誰もため池用に土地を提供したがらないからな。」

「ええ、灌漑水路はまだしも、滅多に無い干害のために土地を差し出す者は少ないですな。しかし、そういった備えもあって然るべきとは思います。」

「そうだな。今後の農業改革の項目に加えても良いな。それと、地主改革の素案はできたか。」

「はい。収穫期後の公表と、3年間の猶予期間を考えております。」

「それで良い。」


 こうしてそれぞれは各々の方向に歩みを続ける。


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