国王の訪問
今日も日々のお勤めをしております。
最近は、聖女がいるとのことで、教会に足を運ぶ信者の方も増えたように思います。
本当にありがたいことだと感じております。
また、皆さんからの寄付も増えたそうで、枢機卿様も大変お喜びでございました。
こんな私のために、皆が少ない蓄えをこうしてお恵み下さること、感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、日課である語学の勉強に励んでおりますと・・・
「レイア様、ただ今、国王陛下がこちらにいらしております。」
「まあ・・・陛下がですか?」
「はい、何でも、聖女様に一目お会いしたいと。」
「そうですか、失礼の無いよう、お会いしなくてはなりませんが、陛下はヤースの信徒、構わないものでしょうか・・・」
「同じ神を崇拝する者同士、問題はないものと考えます。ガレ様も幾度か陛下にお会いしたことがあるそうでございます。」
「分かりました。それではまいります。」
「私は、ジュスタール・オリオール。この国の王をしております。」
「レイア・ハースティングと申します。聖教の巫女をしております。陛下におかれましては、ここまでご足労いただき、恐縮にございます。お呼びいただければこちらからまいりましたのに。」
「いやいや、聖女様が滞在していると聞きましてね。私の方がお会いしたかったのです。お気になさらずともよい。それに、大国レジアスの聖女であり、また、一時は王の許嫁であった方だ。私の方が足を運ぶべきだろう。」
「そのような・・・今はただの一信徒に過ぎません。」
とても、謙虚な方のようです。
「それにしても、こうして有り難くもレジアスの繁栄の象徴である聖女様にお会いできて光栄です。我が国は小さき国なれど、願わくば是非、この地も豊穣の加護にあやかりたいと思い、参った次第だ。」
「これは大変有り難きお言葉に存じます。元より不出来でそれ故、国を追われた身ではございますが、微力を尽くしたいと存じます。」
「ありがたい。我が国と、この地の民は、あなた様を歓迎いたします。」
「本当にありがとうございます。とても嬉しく思います。」
「しかし枢機卿よ、とても見目麗しい方だな。つい緊張してしまうぞ。」
「はい。歴代の聖女様は皆そうでございます。」
「まあ、ガレ様、お世辞が過ぎます。」
「いやいや、これは神に誓って本心でございます。ところで、失礼ながら陛下はまだ独り身でございますが。」
「まあ、お恥ずかしながら見ての通り見た目でな。ご令嬢は皆、弟の方に夢中なのだ。」
「まあ、それは陛下に対して不敬なのではないでしょうか。」
「そうですな。それに、陛下ならお召しになれば、それを断れる諸侯もおりませんのに。」
「いやあ、相手が嫌がっているのに無理矢理娶るのも気が引けてな。気が付いたら立派な大人になっていた。まあ、私の後は弟の子でも構わないしな。」
「それは政争の元でございまするぞ。」
「まあ、とにかく焦っている訳ではないのだ。それに、今のところは政情も落ち着いている。ああ、このような話をするために来た訳ではないな。」
「こちらこそ、大変失礼をいたしました。」
「良いのだ。むしろ、私は堅苦しいのが苦手でな。小国の王ゆえ、普段は結構自由に振る舞っているのだ。それで聖女様から見て、私はどのような人に見えますかな。」
「はい。とてもお優しく、善性に満ちあふれた方とお見受けいたします。」
「王としてはどうであろう。」
「大変立派な王であると拝見いたしました。」
「そうか。ありがとう。皆にそう言ってもらえるように、これからも努めることとしよう。」
「この国は、穏やかでとても良い国だと思います。こちらに来てまだ2ヶ月ですが、心からそう思います。」
「聖女様にそうおっしゃっていただくと、ちょっとだけ鼻が高くなったような気がしますね。ありがとうございます。今日は良い出会いがありました。神に感謝いたします。」
「私も、陛下にお会いでき、大変嬉しく思っております。」
「では長居しました。またお会いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。」
「はい。お呼びいただければいつでも参上したします。」
「いや、ここがいいな。また来ます。」
そう言うと、ジュスタールは帰っていった。
「大変温厚で、親しみやすい方でしたね。」
「ええ、町にも時々視察にお見えになられます。」
「そうなのですね。」
「どこかの尊大な王とはまるで違いますな。」
「ああ、あのムッツリのカッコつけね。」
「ベティ、お口が悪くなられておりますよ。」
「申し訳ございません。でも、私はこちらの王様の方がいいわ。」
「でも、私たちは、ここにいても良いのですね。」
「はい。とても有り難いお言葉でございました。これも、神の思し召しでございましょう。」
「そうですね。私もこのご恩をお返しせねばなりませんね。」
季節はすっかり春。柔らかな日差しが聖堂内を優しく照らし出す。
それは、ようやく見つけた安堵の気持ちを表しているかのようだった・・・




