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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
第一章 ラインアース王国編
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05話『奴隷少女-①』

「レ、レイニィさんが、私に名前付けて、くれませんか……?」


 その子は少し震えながら俺に上目遣いをしてそう頼んだ。

 正直可愛すぎる……元々ケモ耳とか好きだったが、まさか実物はこんなにも可愛いとは……


「も、もちろんだ!そうだな……君は今日からエリスだ!」


「エリス……エリスか、ありがとうございますレイニィさん、エリスこの名前気に入りました……!」

「気に入って貰えて良かった! 」


 目を輝かせ、そのモフモフな耳をパタパタと動かしているエリスを見て俺は心から充足感を感じた。


 お粥を綺麗に平らげた後、エリスは再び眠ってしまった。その寝顔はまるで天使のようで、初めて会った時の恐怖に飲み込まれた子とは別人のようだった。

 しかし、少ししてその寝顔に涙が頬を伝った時、こんなに可愛い子をここまで傷つけその他多くの人を地下牢に監禁していたのは我が父、ハルリル・ロメニアーティだと改めて確信した。

 帰ってきたら徹底的に問い詰めてやる。


 あれから数時間が経つが、待てど暮らせど母と父は帰ってこない。

 時計の針はもう23時を指している。明らかにおかしい、今までこんなにも遅くなることは無かった。


「失礼します」


 何かがおかしいと思い、この屋敷の最上階の最奥に位置する父の部屋に足を運び、ノックをしてから中へ入った。

 もしかすると部屋に篭っているのではと思ったのだ。


「うっ……何だこれは……」


 部屋のドアを開けた瞬間に血の生臭い匂いが俺の鼻を刺した。


「大丈夫か!? 」


 部屋の中央で、腹部をナイフか何かで刺されて倒れている父の姿があった。

 周りを取り囲むように流れた血は、既に冷え固まっていた。


「無駄だと思うが……全生命の母、我が慈愛の女神よ、彼の者の命の灯火を再び照らさん、アドヒール」


 俺が今使える一番高位の回復術式だったが、やはり時すでに遅しだったか。


 父はもう生き返れない、となると犯人を割り出すのはかなり厄介そうだな……

 ふと父の机の上を見ると、一枚の紙が置いてあった。

 冒頭を読むと、それは母からの最後の手紙だった。


 『親愛なるレイ、私は償っても償いきれない大罪を犯しました。貴方はきっと私が居なくても上手くやっていける。ロメニアーティ家の行く末など気にする必要はありません。ただ自由に、貴方の思うままに生きて欲しいのです。私は、貴方にもう会うことが出来そうにありません、どうか強く生きてください、世界のどこかで見守っています』


 それを読み終えた後、何故か涙が言う事を聞かなかった。

 父を殺したのは母だ。


 しかし、何故だ……動機だけが分からない。どうしてこんなことに……これが噂の死神の呪いなのか?


 一旦落ち着こうと下へ降り、元の世界のコーヒーに良く似たコルフィをいれた。

 一口飲むと、暖かなコルフィが緊張した体を解していく。

 これから先どうしたもんだろうか……この広い屋敷に少女と二人……か。


 そんな事を考えていると、扉をドンドンと叩く音がした。時計を見ると、とうに深夜1時を回っていた。

 こんな真夜中に誰が何の用だ?


「夜分遅くに失礼する、私は国家治安維持局の者だ。レイニィ・ロメニアーティで間違いないな?」


 軍服を着込んだこの男は、どうやら俺の父が殺された事件を嗅ぎつけた様だ。

 全く……どこからそんな情報を。


「そうですが、何か?」


 国家治安維持局とは、国王政府直属でその名の通り、国家の治安維持を目的として設立された物だ。元の世界で言う警察のような物だな、こいつらはそのやり方の乱暴さから国民からはかなり嫌われている。


「ハルリル氏殺害事件について、聞きたいことがある」



「どうぞ、暖かいコルフィです」


 こんな寒い真夜中に玄関先で立ち話も何なので、とりあえず家の中へ通し、暖かいコルフィを出した。


「あぁ、すまない。お気遣いなく」


 と言って、男はコルフィを一口飲み、白い息を吐いた。

 噂ほど悪い人たちでは無さそうだな。


「犯人、ルーズ・ロメニアーティは現在逃走中だ。彼女は自分が夫を刺し殺した犯人だと自供する主旨の手紙を送り付けてきた。一体何がしたいのだか……何か分かるか?」


「はい、恐らくですが……母は私に迷惑を掛けたくなかったのだと思います。息子に殺害の容疑を向けられるのは嫌だったのでしょう」


 なるほどなと言って男はスラスラとメモをしていく。

 母の本音など俺には分からない。一番それっぽいことを言っておいた。


「本題だ。お前はこの屋敷の地下にある地下施設を知っているか?」

「えぇ。最も、知ったのはつい昨日の夕方ですが」


 もうあれを突き止めていたのか。エリスの事はまだ黙っていた方が良さそうだな。


「ならお前は今まで多くの獣人族の子供たちがあそこで監禁され、ハルリルに良いように弄ばれていたのを知らなかったと言うんだな?ある者はストレス解消に、ある者は自らの性欲の解消に……」


 男は声を荒らげながらそう言い、最後には声が震えていた。


「悪かった、取り乱した。忘れて欲しい。しかし、最後にこれだけは言っておこう、上はこの事件の責任をロメニアーティ辺境伯家に取らせるつもりだ」


 個人では無く家全体に責任を取らせるなんて、そんなめちゃくちゃな……


「奴隷は国際法、並びに王国法に抵触するだけでなく、世界の秩序を乱しかねん大罪だ。御家取り潰しは免れまい」


「そう言われると当然の事ですね……アハハ」


 お先真っ暗だ。一寸先は闇ってのは本当だったんだな。

 どうやって生きていこう……父がしてきた非人道的な事よりもこの先の未来の方が気がかりだ。


「では、私はこれで失礼する。夜分遅くに失礼したな。ゆっくり眠ると良い」

「はい、ありがとうございました。お気をつけて」


 男は最後の最後まで礼儀正しく、何より丁寧だった。

 噂の国家治安維持局とは全然違う印象だ。所詮噂は噂、尾を引くというわけか。


 とりあえず、先のことは明日考えよう……もう眠たい――

この世界における魔術と魔法の違い

魔術:魔法陣などの媒介物を使う、又は詠唱が必要な物。決まった範囲しか使用できない。(例:回復術式)

魔法:魔術に比べて自由に操ることが出来る。魔術の上位互換と考えると分かりやすいかもしれない(例:無詠唱魔法)


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