04話『地下の秘密』
一体なんだ、この地下に何があるんだ――
暗くじっとりとした階段を降り続けているが、ここが何の為に存在するのか未だ検討もつかない。
それに何故ここは存在を隠されていたのだろうか。
人の気配はなし、ただ俺の足音だけが響いている。
「何なんだここは……」
階段を降りた先には長い通路が延びていて、その側面には幾つもの「地下牢」が並んでいた。
何で家の地下にこんなものが……
一番近くの中を覗いて見たが、空っぽだった。次も空っぽ、その次もだった。
そうして奥へ奥へ進むにつれ、恐怖心が俺を蝕むしばんでいく。
「おいおい、嘘だろ……」
かなり進んだ所に今までの物とは雰囲気がまるで違う空間に辿り着いた。そしてその奥にはまたも通路と地下牢が続いていた。
俺はこの時何かを感じ取っていたのだろう、全身に鳥肌が立ち先へ進むのを本能が拒否していた。
この謎の空間には机と椅子が1つずつ、そして壁には無造作に沢山の鍵が掛けられていた。
覚悟を決めその鍵束を拝借し、俺は更に先へ進んだ。
ここは湿度が高いのか、ジメジメしていて気分が悪い。
「うわぁ!? 」
俺は一つ目の牢内の様子に思わず叫び声を上げてしまった。
そこには、白骨化した遺体と使い古されたお皿だけが残されていた。
その遺体の両腕は壁に埋め込まれた鎖の手錠にかけられ、その姿はまるで……
「奴隷……」
思わず口に出した言葉に俺は震えが止まらなかった。
この世界では、昔に起こったある事件から奴隷はご法度になっていた。
そして、俺はもしかしたらこの先に生き残っている人達がいるのではと思ってしまったのだ。
足早に通路を進むが、チラホラと同じく白骨化した遺体はあるが、生存者は見当たらなかった。
この長い長い地下通路の突き当たりがやっと見えた。そこにも地下牢があった。これで最後……俺は祈るように中を覗き込んだ。
「──! 大丈夫か? 」
考え得る最悪の事態が起こった。
その中では、壁と手錠で繋がれた一人の少女がぐったりとして、全身の体重をその手錠と壁に任せていたのだ。
俺は急いで鍵束の中から鍵を探し出し、扉を開けた。
その音に気づいた少女は顔を上げてこちらを見た。フードを目深に被っていて見えにくかったが、俺はその少女の顔を永遠に忘れないだろう。
その少女の表情は怯えなどの生ぬるいものではなかった。絶望に染まり、もう何をしても無駄なんだと悟っているような表情だった。
この子が今までどんな事をされ、どれほど苦しんできたのか俺には分からないが、心底腹が立った。
「さ、もう大丈夫。早くここから出よう」
と言ってその子のフードを取ると、俺は更に驚いた。その子の頭には二つのかわいらしい耳があった。
「亜人……いや、獣人の子か」
獣人族は本来ラインアース王国があるパーラル大陸には存在しない。
しかし人間が故郷から無理に連れてきて奴隷にし、更には亜人などと不愉快な呼び方をしているのだ。
今は国際法で奴隷禁止令や解放令などが制定され、段々とそんな風潮も薄れつつあるが、当事者だった老人の中には今でも獣人族を亜人だ何だと見下している。
その子は俺が亜人と口にした途端、急に体を震えさせてそのまま気絶してしまった。
どれほど酷い目にあってきたのだろうか。俺はこの子をちゃんと人として生活させてあげなければいけない。
幸いな事に父も母も家にはいなかった。良くあることなので、あまり気にはならない。
まずその子を自室のベッドまで運び寝かせてあげた。
さてと、まずはお風呂の準備かな。
その子は汚れきっていて衛生的に宜しくない状態だった。
あとは、お粥でも作るか。この世界にもお米と似たような穀物があった。
日本人としても毎日お米が食べられるのはありがたい……まぁ本物よりは味は劣るけど。
一旦部屋へ戻ると、その子は体を起こしキョロキョロとしていた。
「気分はどう? お粥、食べれるかな? 」
「あ、ありがとう……」
その子はオドオドとしながらそう答えた。
この守ってあげたくなるような感じ……!
「じゃ、まずお風呂入ってきなよ。そのままじゃ気持ち悪いでしょ? 」
その子はコクっと頷いた。
流石に一緒に入る訳にもいかないので、一人で入ってもらってる間にお粥を作り上げた。
我ながら上出来だ
「あ、あの……」
「おかえり、丁度お粥できたから一緒に食べよ」
体を綺麗に洗ったその子は見違えるほどに綺麗に、かわいくなっていた。
「名前はなんていうの?」
そういえば名前を聞いてないことに気づき、お粥を口いっぱいに詰め込むその子に尋ねてみた。
「名前……? 」
その子はキョトンとした顔をした。まさか、自分の名前も知らない……非常に心が痛い。
「そう、名前。俺はレイニィ・ロメニアーティ。改めてよろしくね」
その子は自分で「名前」というものを理解しようと頭を捻っていた。確かに説明しろと言われれば難しいな。
「レ、レイニィさん……私に名前……付けてくれますか」
何か腑に落ちた顔をして、その子は目を輝かせながらそう言った。
うっ……その上目遣いは反則だ――
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