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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
共和国・ギラスナ編
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048話『ギラスナ-⑤』

 想像以上のスピードで、試験に合格した天衣と別れ雨の様子を見に行くことにした。

 その直後、久々に魔力感知が振り切るほどに反応した。


「これは……」


 何か大きな魔力、いや違う……小さな魔力が大量に集まっているんだ。

 つまり、大規模な魔物又は魔獣の群れ……いずれにせよ厄介だ。


 少し離れた天衣もこの異常に気づいたようで、小走りで戻ってきた。


「先生、この魔力反応は一体……」

「分からない、だが放っておく訳にはいかないだろう」


 隣のクラスの生徒は全員避難させ、その魔力の塊の方へ近づいた。雨はどこに行ったんだ? 無事なんだろうな……


 空を往く鳥の群れが、悠々と赤みがかった夕焼けに向かって一糸乱れず進んでいく。もう夜は近い。


 ***

 人元歴458年1月――


「そうなの、ギラスナ連邦ね……」


 突如現れたギラスナ連邦のニュースで、ここカラトニア連盟大国でも話題になっている。


「何や言うても、物騒な世の中ですわ」


 連盟大国王都の中央部から少し逸れたところに、特級冒険者パーティー「ルータッタ」の拠点があった。

 そこには、リーダーであるアマンダイト。そして、新メンバーであるロキ。更にもう一人いた。


「ほんま、楽しい世の中ですわ」


 ルータッタ創設メンバーであり、現ルータッタの有力幹部の一人でもある彼女の名は、神乎(かぐや)という。

 人呼んで、夜の姫君。巷ではそれなりに名が通っているお姫様だ。


 本人は自虐ネタとよく話すのだが、彼女の家はある国で力のあった由緒ある御家だった。

 しかし、彼女の父と激しく対立したある大臣からあらぬ罪を着せられ、その御家は間もなく没落してしまった。

 そして、彼女は父と家を助けるために自らその身を売ったのだ。それからの事は彼女があまり話したがらない為、誰も知らない。


「ほな、そろそろ行きましょか」

「もうそんな時間……」

「ほらはよ行くでー」


 外に出るとずっと室内にいたからか、あまりに眩い太陽の光に驚いてしまった。

 レイニィも何処かでこの太陽の光を受けているのだろうか……


「行こう、藝華へ……」


 ルータッタメンバー合計十人。他パーティーからの助っ人合わせて総勢五十人というかなりの大所帯で藝華へ向かう。

 藝華では今、魔物や魔獣が活発になっているらしくその討伐を依頼されたのだ。

 それも獣王様直々のご指名で。連盟の国王様と、獣王はとても仲が良いらしくそのツテだ。


 よし、頑張ろう……!――


 ***


「何? ここ……」


 もう怖いよ……先生、天衣どこなの? 今さっきも爆発音したし、もう何が何だか……

 舞泉雨は、絶賛迷子中だ。レイニィ達の元から元気よく駆け出し、すぐにこの薄気味悪い森に迷い込んでしまったのである。


「もう、何で魔力感知が反応しないのよ……! 」


 彼女が気づいた時には、もう魔力感知は何かに阻害されているように上手く働かず、濃い霧のせいで自分が今どの方角に歩いているのかすら分からない。


 その時、前方から何かが動いて草が揺れる音がした。何かいる、だが気づいた時にはもう遅かった。雨は何かに囲まれてしまっていた。そして、それらは一斉に飛びかかってきた。もうダメだ……


 先生助けて――



 それとほぼ同時刻、レイニィは全力で頭を回していた。どうすれば雨を見つけられる、どうすればこの魔力の元に近づける……

 無数の魔力の塊は、近づけど近づけど一向にその距離が縮まらない。

 近づいて行っても、気づいた時には通り過ぎてしまっているのだ。こんな調子で、かれこれ一時間はウロウロしている。

 何か、何か見落としてないか? きっと入口的な物がどこかにあるはずだ……


「先生、これを見てください」


 少し離れたところで探していた天衣が何か見つけたのか、俺にそう声をかけた。


「これは……」


 そこにあったのは、主に結界を張る時に使われる結界石だった。

 そうか、人避けの結界が張られていたのか……気づかなかった。それにしても……


「この結界、無茶苦茶ですね。私でも、もうちょっと上手に出来ますよ」


 通常ならば、結界石も隠れてしまい簡単には見つけられない。

 そう、この結界は穴だらけなのだ。もはやそれは、結界として機能しているのかどうかすら怪しいところだ。それに、結界を張る専門の結界師にかかればこんな結界、速攻で見つけられてしまう。


「よし、入ってみよう」

「えぇ……」


 もしかすると、雨もこの中に迷い込んでしまったのかもしれない。

 どちらにせよ、この魔力の主は確認しておかなければ。


 結界内は、やけに静まり返っていた。少しでも気を抜くと、無限の静寂に呑み込まれてしまいそうになった。

 一歩足を踏み出す度に、その魔力は近づいてきて気持ち悪さが増してくる。それは、天衣も感じ取っているようだ。


 少し歩いて、天衣が俺の手を握った。


「少しだけ、良いですか? 」


 彼女も、きっと怖くて不安なのだろう。俺とそう歳の変わらない天才と言われた少女も、また一人の人間でしかない。

 それは、彼女の少し冷たくて、小刻みに震える小さな手から強く再認識した。

 不思議なことに、手を繋いでいるといつもよりも遥かに心強く感じられた。


「あれ、何ですか……? 」


 顔を青ざめ、震えた声で彼女が指さした方には木造の建築物が見えた。それもたくさんの。


「恐らく、この魔力の主たちの集落だろう。まさか、魔物がそんな技術を……」


 いくら知能がある魔物だからと言って、あんな建築物を建てられるとは思えない。

 まさか、魔物よりも知能を持った新種……或いは魔人の入れ知恵か?


「雨も見つかりませんね……」

「あぁ、捕まってなければ良いんだけどな……」




「あのー、すいませーん……ちょっとだけ出してくれないですかね……」


 その集落の中心にあり、一番高い木の上の方に雨はいた。それも、木製の牢屋……いや鳥かごに近い物に入れられていた。

 先程から何回も、見張りの魔物にそう話しかけているのだが、全く聞く耳を持たない。

 見張りの魔物は、兎のような姿形をしている黒兎(ブラビット)と呼ばれる下級魔物だ。大きな耳は飾りなのかと思う雨だが、それを言ったら面倒なことになると流石の雨でも分かったようで、グッと我慢した。


  ***


  「あーあ、天衣と先生……早く助けに来てくれないかな」


 少し時間が経って、変化を求めふと口に出してみた。結果は勿論反応無し。


 それに確証は無かった。推測でしか無いが、ここは恐らく結界内。

 いくらあの二人でも簡単には見つれられないだろう。それに、こんな森の中に結界が張られていると気づくかどうか……

 だが、それでも私は助けが来るのを願って待つしかないのだ……でも、一生ここで暮らすのは嫌だ……!どうにかして逃げる方法を考えよう。


 脱獄方法を思案していると、何やら下の方がザワザワしてきた。見張りも慌てて走って行ってしまった。


「あれ、これ大チャンスなのでは……? 」

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