表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
共和国・ギラスナ編
38/125

037話『共和国-①』

 いくら国が変わったと言っても、景色は変わらないな。

 今は知らないけど、王国の時は国内最大の港町だったここも少し寂しくなった気がする。

 あ、あれか戦争の影響かもな。


 そんなことを考えながら歩いていると、往来のど真ん中で所謂ヤンキー座りをしてだべっている、いかにも山賊らしき人達が居た。あーやだな……声かけられたらどうしよう。


「おい、兄ちゃんちょっと待てや」


 道の端っこの方をそそくさと通り抜けようとしたが、案の定その中の一人に声を掛けられた。

 まさか、通行料払えとかベタな事言うんじゃないだろうな……


「ここを通りたきゃなぁ……俺たちサザ一家に通行料払うんだな! それとも、痛い目見たいのかよ……」


 あーやっぱりかー、どうしよう……獣王様に貰った報酬で金は沢山あるが……こいつらに渡すのはやだなぁ。

 かと言って戦うのも面倒だ……


「待て待て、お前らじゃ歯が立たんよ」


 三人の後ろから明らかにボス、いやアニキらしき男が近づいてきてそう言った。

 伸び散らかした髪を後ろで無造作に括り、口には長い葉っぱを咥え、腰には日本刀らしきものも差している。

 恐らく脇差も持ってるのだろう。見るからに『武士』そのものだ。


「アニキ! どうしてですかい? 」


 やっぱアニキなのか……どこまでいってもベタだなこいつら。


「あいつは、あのレイニィって野郎だ。死神や何だと騒がれてたっけか」


 それを聞いて、その三人組は震え上がった。そして、一目散にその男の後ろに逃げ込んだ。


「お、あんた良いもん持ってんじゃないか。ん? でもおかしいな……あんたは魔術師だって聞いたんだが、何でそんな上等の細剣(レイピア)持ってんだ? 」


 俺が持っていたミズキの細剣(レイピア)を一目見ただけで、上等な物だと判断した。あの男は、思っていたよりもかなり出来るやつなのかもしれない。


「通行料はいいや……それ、置いてけよ」

「は? やだ」


 誰が何処の馬の骨か分からんような奴に大切な細剣(レイピア)を渡すか。

 しかし、そう言った瞬間男の頭に血が昇ったのかピキッという音が聞こえた。後ろの三人の慌てようを見る感じ、かなり怒らせてしまったようだ。


 次の瞬間、気が付くと目の前に刀身が見えた。ちょっとこれはまずいかも……っと――


「ちっ、今のを(かわ)すか……」


 あっぶねぇ……あと一秒でも遅かったら首持ってかれてたぞ……


「あんた、魔術師の割には中々やるな。ほれ、お前もそれ(レイピア)抜けよ。宝の持ち腐れってもんだ……あ、魔術師さんには……難しすぎるか! アハハハッ! 」


 確かに、細剣(レイピア)は通常単体で使う物じゃない。それに、相手の持ってる日本刀らしきものとは相性が悪いだろう。()()の魔術師ならそれも尚更に。


「まぁ、良いけど」


 さすがミズキの物だ、しっかりと手入れされている。

 持つだけでどれ程愛情を注いで、大切にしてきたか分かる。


「本物の馬鹿だ……遠慮なくいかせてもらうぞ! 」


 さっきよりも格段に早いスピードを出してきた、正真正銘本気って訳だな。やっぱり戦いはそうじゃなくっちゃな。


 いつもその時は、時間がゆっくり流れているように思う。相手の目線、力の入れ方、息遣い、そして己の感覚、全てを用いてただひたすらに剣を振るう。

 そうだ、この感覚だ。

 ふっと時の流れが元に戻ると、背中の後ろでバタッと何かが倒れた音がする。少し経っても静寂に包まれたままだ。本当に時が止まってしまったかのようだ。

 しばらくして、三人がアニキー! と倒れた男に駆け寄っていく。血が付いてしまった細剣(レイピア)を軽く振ってから、鞘に戻した。


「俺の本職は、これ(剣術)だ。運が悪かったな」


 そう言い残して、その場を去ることにした。あ、名前聞くの忘れてた……まぁいっか。もう会わないだろうし。


 ***


「さて、これからどうやった王都まで行くか……」


 歩いていくのは、流石に地獄だ。しかし、馬車なんてどこにも見当たらない。これは困ったな。

 それにしても……この国は今、本当に戦争何かやってるのか? あまりにも実感が湧かない。……仕方ない、歩いて行くか。


「あ、あいつらで鑑定(アプレイサル)試してみれば良かったな……」


 それからの道中で人に会う事は無かった。ただ一人、黙々と歩き続けた。自分の中で、決して言葉には出来ない何かを整理しながら。


 ***


「お、着いた」


 気づけば、王都の入口にある大門の前に辿り着いていた。思ってたよりも早く着いたな。

 急にふと違和感を感じ、少し考えてみると答えはすぐに分かった。


「衛兵もいないなんて、よっぽど戦局良くないんだな」


 王都を守る大切な大門に、衛兵がいないなど通常ありえないのだ。

 それほど逼迫しているのだろう。


「そんじゃまぁ、失礼しますよっと」


 少しだけ罪悪感を感じながら、衛兵専用の小さめの門をくぐり抜け、王都に入った。


「おおおー! 人がいる! 」


 この国に来て、あの山賊達以外でやっと人を見れた。何人かが歩いていたのだ。それに、王都はあまり変わっていなくて少し安心した。


「一休みしてから、ギラスナに向かおうかな。国王とか14号さんの安否が気になる」


 そうと決まれば、北部国境関所を目指すのが1番良いだろう。もうひと踏ん張りだ。頑張れ俺!

ブクマ登録、いいねよろしくお願いします。

コメントもお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ