02話『死後の世界で』
「う、頭痛い……」
あれは夢だったのか、ここはどこだ……頭がうまく回らない。
「ここは一体……」
酷い頭痛を抑えながら辺りを見回すと、そこには何も無かった。
ただただ、どこまでも真っ白な世界が続いている。何にもない。
「天国ってわけじゃなさそうだな」
そんな事を思いながら少し歩いてみると、前方に大きな石造りの扉があるのが見えた。
その扉はこの真っ白な世界に少し似合わなかった。
「何だここは……」
恐る恐る扉を開くと、そこには異様な光景が広がっていた。
最奥の玉座に鎮座する大きなのは何だ。それにその前に控えている多くの人達は一体……
「やぁ、よく来たね。蒼弥君」
その時、俺は直感的に感じ取った。
あれが神なんだ。
放つオーラが一般人のそれと違う。そして、その神の前に三角形を描くように立ち並ぶのは、神の護衛隊といったところだろうか、これは圧巻だ。
その頂点にいた何かは俺にそう言った後に両手を大きく広げた。
「あなたは？ ここはどこなんです？ 」
「おっと、失礼……私は大界聖王神様に仕え、三祭神の統括を任されている鬼頭祭神高亜君だ。そして、ここは死後の世界といった所だろう」
やっぱりあれが神なのか……
そうすると、その神の近くにいる三人がさっきの三祭神ってやつだろうな。
「一大四神は……」
「全ての世界を統治し、支配される御方々……」
鬼頭祭神高亜君の両隣に控えていた対象的に見える2人が続けてそう言った。1人は燃え盛るような赤い髪、1人は全てを飲み込んでしまうような漆黒の黒髪……まるで昼と夜、もしくは太陽と月のようだ。
「さて、本題に入ろう。君に一つ頼みがある」
鬼頭祭神がそう言って指を鳴らすと、部屋が一瞬で変わった。先程の他の神も対象的な二人も全員居なくなっていた。
椅子が2つ置かれただけの部屋、と言うより空間は何だか気味が悪かった。
「頼みと言うのはだね、君にある世界で悪・者・を成敗して欲しいんだよ」
椅子に座った後、その鬼頭祭神は改めてそう言った。
悪者か……ちょっと抽象的過ぎないか？
「抽象的過ぎて悪かったね」
微笑みを浮かべながら、その神は俺の考えを見透かしたかのようにそう言った。
「なんですかそれ……読心術とかズルくないですか」
ごめんごめんと笑いながら神は1冊のとても分厚い本のようなものを何処かから取り出した。
「この本に記されている事を、どうか忘れないで欲しい」
受け取って見てみると、それは古い歴史書のようだった。ページ数はそこまで多くなく、とても薄かった。
忘れないでって言われても……俺は記憶力に自信は全くない。
「君が生まれ変わる世界は、正しく剣と魔法の世界だ。ただ、まぁ……争いは絶えないが。必ず悪者を君の手で葬ってくれ」
鬼頭祭神は、俺が一通りその歴史書に目を通したのを確認して、何かを手早く書きながらそう言った。
そして俺の顔をじっと見つめた。
「それより、悪者って誰なんですか？ 」
「それは私どもにも分かりかねる。しかし、必ず現れる」
この悪者がどういう意味で今使われているのか分からないが、異世界の悪者と言ったらどうせ魔王だろう。
何かここまで異世界転生の超テンプレ展開だな……あ、でもチート能力とか特には無さそう。
「さて、そろそろ良い頃だろう。君が転生するのは人元歴450年ラインアース王国。それでは健闘を祈る」
立ち上がり、そう言うと空間自体が高速で飛んでいるような感覚を覚えた。
周りを見てもそう見えたのだ。フラフラと目眩のような感覚がして、立っているのもやっとだった。
そして、何も見えなくなった。
異世界か、きっと楽しいセカンドライフが待っているんだろうなぁ……
***
「鬼頭祭神よ、あの者は大丈夫なのか。いや、お前が見込んだ男だ。今更とやかく言うべきでは無いな」
大界聖王神、世界の頂点に君臨する絶対神だ。
その下に控えるは鬼頭祭神高亜君、そして氷舞祭神、海命祭神、陽宋祭神。
彼らは総称して一大四神と呼ばれる。
「はい、彼ならきっと我らの願いを叶えてくれましょう」
「そうであるならよいのだが……」
鬼頭祭神は、何故かとても自信に満ち溢れていたように見えた。
「おい、彼は今どうなっている」
先程送り出した彼の様子がとても気になったのか、祭神は部下の一人にそう聞いた。
「予定通りです」
問われた神官は、表情を変えずに答えた。
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