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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
第一章 ラインアース王国編
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018話『ルゥナ-②』

 未だ見えない敵との戦いは熾烈を極める、悪いことは言わない。すぐに王都へ帰った方が良い。

 14号さんからそう忠告を受けた。


「俺は、反対だ。この町で好き勝手する奴らを野放しなんかに出来ない」

「私も反対よ。依頼クエストを途中で放棄するなんて……昇格審査に響くわ」

「わ、私も反対です……」

「だってさ、リーダー。あ、私も反対だよ」


 五人で話し合った結果、予想通り満場一致で彼女からの忠告に反対だった。14号さんは、やっぱりかと笑っている。


 その時、俺の魔力感知が久しぶりに働いた。キャッチした魔力は想像を絶するもので、俺は少しの間身動きが取れないほどだった。


「やっと姿を見せ始めたようだね……」


 14号さんもこの魔力に気づいたのか、すっと立ち上がり廊下に向け歩き始めた。


「ねぇ、レイニィ……もしかして魔獣が来たの? 」


 ミズキも薄々勘づいているようだが、確信には至っていないようだ。


「恐らくな。今まで体感したこともないくらいの魔力がすぐそこまで迫ってる」


 常時発動させている魔力感知は、非常に使い勝手が悪い。感知可能範囲もとても狭く、微量の魔力には反応しないのだ。とんだ欠陥品だといつも思うが、今回だけは感謝しておこう。


「14号さんを追おう」


 俺達も立ち上がり、準備を整え彼女に続いた。ここまで来たらやるしかない。例え誰が敵であろうとも。


「14号さんの魔力感知も反応したんですね」


 やはり足の早い14号さんに走って追いつきそう尋ねた。


「魔力感知? 何それ、僕知らないや」

「え? ならどうして気がついたんですか? 」


 どう考えても魔力感知無しで外の異変に気づくのは無理がある。

 それとも俺が知らない索敵能力スキルを持っているのか?


「ここさ、僕は生まれつき鼻が良いんだよね」


 そう言って14号さんは自分の鼻頭をつんつんと触った。魔獣の匂いか……鼻が利くってすごいな。


「さ、ここから先は戦場だ。来ると言ったのならば、覚悟して臨んでくれよ」


 そう言って彼女はニカッと笑い、その扉を開いた。


 町長の家の前には1本の長い道路が続いている。所謂メインストリートってやつだ。その両端に民家やら商店何かが軒を連ねているのだが、そのメインストリートに目的はいた。


「魔獣の群れ確認。ざっと数えて五十いないくらいかな」


 扉の外には、地獄の様な光景が広がっていた。

 依頼書にあったデルーラの他にも、シープレルと言う羊型の魔獣やホーンと言う馬型の魔獣まで、多種多様な魔獣の姿があった。


「それにしても、こんなに魔獣が群れるなんてね……まるで()()()がいるみたいだね」


 基本的に魔獣は、同族以外の魔獣を嫌う。

 つまり、このような事はとても珍しいのだ。14号さんの言った飼い主と、ロンが言った魔獣の凶暴化。どちらもかなり引っかかる。だが、とにかく今はやるしかない。


「この依頼クエスト、絶対完了して帰るぞ! 戦闘開始!」


 いつも通りのフォーメーションに14号さんが加わったことで、かなり厚みが増したように思う。

 彼女は、大きな大きな黒色のハンマーを使う。前衛の先頭に立ちそれをぶん回し、叩きつけて魔獣を蹴散らしていく。

 あの人は間違いなく戦闘狂ベルセルクだ。仮面で顔が見えないところがより一層恐ろしく感じさせているのかもしれない。

 その後、順調に魔獣を狩り続けるが一向に数は減らない。むしろ増えてるくらいだ。

 それに、普通の魔獣よりも明らかに手強い。どこか戦い方に知性を感じる。


「うーん、困ったねこりゃ」


 呟く14号さんも息が上がってきている。エリスやロン、ミズキまで体力の限界が近いようだ。俺とカテラも体力もそうだが、魔力がもう残り少ない。魔力不足は魔術師にとって致命的な問題になる。

 気づけば四方を魔獣に囲まれ、万事休すとはこの事を言うのかと思い知った。


「ロード・ネアロスト……幻想雨霰ファンホールレイン!」


 しかし、そんな状況でも挫けないのがカテラという人なのである。

 全範囲に攻撃可能な水属性系上級魔術を放ち、彼女は力を失ったように倒れてしまった。恐らく魔力が底をついたのだろう。所謂魔力過消費マジックダウンだ。

 しかし、彼女の渾身の一撃のお陰で活路が開いた。


「ここは一旦引いて状態を立て直すべきだ。即時離脱する」


 カテラの頑張りを無駄にしないためにも、今できる精一杯の的確な指示を出す。ロンがカテラを背負い、先程のあの家へと引き返した。


「ごめんね、みんな……僕が不甲斐ないばっかりに……」


 カテラをベッドに寝かせてから、リビングの様な所へ移動しこれからの作戦会議を始めた。そして、口頭一番に14号さんはそう謝った。不甲斐ないのは、俺の方だ。


「いや、俺が悪かった。もっと早く状況判断が出来ていれば……」


 全員が何かしら自分の非を見つけ、その都度反省していては一向に話が進まない。まずは、打開策を考えなければ。


「あ、あの……なんで魔獣さん達は増えてたんですかね……?」


 エリスの素朴だが、とても真っ当な質問は14号さんを悩ませた。彼女で分からないのなら、俺にわかるわけが無い。


「僕の勝手な意見だが、恐らく……いや、ほぼ確実にあの魔獣共には飼い主がいるね。でなきゃあんなに統率された戦い方はできないよ」

「そ、その飼い主が、魔獣さんを次々に送ってきている……?」


 なるほど、つまり魔獣が一匹倒されると飼い主がまた別の一匹を補充する。

 こうすれば数は減らずに俺たちに増えていると思わせることも出来るだろう。となると、飼い主がバックにいるのは確実のようだ。

 なら、何故わざわざルゥナを襲うんだ? バハネラでも王都でもたくさんあったはずだ。


 再び会議は膠着状態に戻った。

 分からないことが多すぎて、話し合いにならないだけなのかもしれない。ただただ時間だけが過ぎていく。こうしてる間にも魔獣が新たに町を襲うかもしれない。

 しかし、俺にはどうすることも出来ないかと思える。実際、俺はさっきの戦闘で自分の無力さを痛感した。今での対人戦とは違い、剥き出しの殺意や単純なパワーの差に少し恐怖してしまった。

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