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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
第一章 ラインアース王国編
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012話『魔術とは』

 あれからミズキと話し合い、メンバーは活動中に随時募集すると決めた。正直な話、もうこれ以上の人は必要ない気もする。

 俺は布団に潜り込んでからも、いずれは有名なパーティーにしてやるんだとつい力が入ってしまい、その夜は中々寝付けなかった。




「――ください、レイニィさん……起きてください……」


 エリスに体を優しく揺すぶられて俺は夢の世界から現実世界へと帰還した。

 なんだか暗くて嫌な夢を見た気がする。気がするというのも、その夢の内容は全く覚えてないのだ。

 そう、一欠片も。しかし何故か()()()だったことは分かる。



「そういえばさ、ミズキは俺が最初に話しかけた時なんで俺を信じたんだ? 」


 朝ごはんを食べている途中、無性に気になってしまった。

 怪しさ全開だと、今から思い返せばそれしかない。


「そりゃ分かるよ。良くも悪くも有名な私《召喚者》にあんな軽々話しかけてくるんだもんね、私もびっくりしたよ。とっても嬉しかったんだからね……」


 ミズキは笑いながらそう話していたが、最後のあたりは何故か顔を俯けてしまった。……なぜだ?


「そんなことよりさ! 今日のことを考えようよ、もうそろそろあの二人も来る頃だしさ! 」


 あからさまに話題を変えるミズキに違和感を感じたのは事実。しかし、それを話題にしてはいけない気がした。

 それに、今日からロンとカテラも同じ部屋で寝泊まりすることになったしな……確かに準備しなければ。


 ***


「今日は依頼クエストを受けるためにも、それぞれがどれ程戦えるのか……とか確かめる日にしよう!」


 実際二人ロンとカテラの実力もミズキの実力もまだ分からない。

 そもそも、ミズキが冒険者高位の白級はっきゅうってことが一番信じられないのだ。


「それもそうね、じゃあどうしましょうか……ロンが剣士でカテラが魔術師だったわね。それからレイニィは魔術師が向いてると思うわ、エリスちゃんは……この小刀ナイフを使いましょうか」


 ミズキはパーティー内のそれぞれの役割を冷静に判断した、いつの間に鑑定してたんだか……ロンとカテラも驚きを隠せていない様子だ。

 ミズキはエリスに二本の小刀ナイフを渡すと、ロンと一緒に連れて行ってしまった。


「つまり……俺はカテラに教えて貰えということか」

「そうみたいね……」


 ミズキもかなり自分勝手だなと思いつつ、カテラと共に修行を始めた。


「レイニィ君は確か闇属性適正なんだっけ? まずは一回どんなもんか見せてくれないかな」


 カテラも俺が闇属性適正者だと知っても驚きはしなかった。

 魔術にはあまり自信が無いのだが、やるしかないな。


「わかった……ロード・アクセス闇弾シャドウボール


 闇属性魔術の初歩中の初歩である闇弾を選んだ。

 俺が省略詠唱魔法で発動できる数少ない魔術であり、一番綺麗にできるのがこれなのだ。


「うわぁ、驚き……レイニィ君って赤級しゃくきゅうだよね? もう省略詠唱魔法使えるなんて、すごいね」


「まぁ、闇属性は伊達じゃないってやつだよ、それでどうだったか? 」


 カテラにあそこまで分かりやすく驚かれて悪い気はしないな。ミズキがこれを見てなかったのは残念だなー。


「うん、レイニィ君は魔術に関してはある程度出来るみたいだけど、魔術の本質をまだ理解してないね」

「魔術の本質? 」


 今まで考えたこともなかったその概念に俺は少し戸惑った。


「ちょっと見ててね……ロード・ニアインベート……メアラート凪之響ナギノヒビキ


 カテラが省略詠唱魔法で発動した魔術に、俺は思わず尻を打ってしまった。

 辺りで騒がしくしていた子供の声や、鳥の鳴き声などが一切消えてしまったのだ。その代わりに水が流れる音だけが静かに響いていた。


「大丈夫? これが水属性特殊魔術の凪之響だよ。魔術と言うのはね、平たく言うと体の中を流れる魔力を上手く具現化出来ると、より強力な物になるんだ。だから、大切なのは想像力」


 しばらくすると、何事も無かったかのように周囲では再び活気を取り戻した。手を貸して起こしてくれたカテラの手は少しひんやりとしていた。

 そんなカテラを見て、俺は彼女に強い憧れを感じた。

 そして、俺はカテラをこう呼ぶ事にした……


「師匠!俺、いや私のような若輩者をどうぞよろしく鍛えてください!」


 カテラはニコッと笑って「良いよ!」と答えた。


 ***


 師匠カテラと宿へ戻ると、三人は既に帰ってきていた。

 見ると、ロンとエリスは疲れ切っているようでベッドに倒れ込んでいた。その横にいたミズキは流れる汗を拭きながら、「いやー!良い汗かいた!」と笑顔を輝かしていた。

 心底特訓を付けてもらうのは彼女じゃなくて良かったと思う。


「ロンもエリスちゃんも中々良い線してるよー! これならAランクパーティーも夢じゃないかもね! 」


 ミズキは嬉しそうにそう言うが、果たしてそんなに簡単に行くものだろうかと少し不安が残る。

 いくら良い線してるとは言え、エリスに関してはまだまだ子供なのだ。俺もだけど。


 もう既に日は落ち、辺りは徐々に暗くなってきている。

 今はちょうど夏季の真ん中辺りになるため日は長いが、それでも一日はあっという間に過ぎ去ってしまう。

 こうしてる間にも悪者がどこで何をしているか分からない。そして、あの自称神達の様子も気になる所だ。


「……ねぇ、聞いてるのったら! 」


 いきなり呼びかけられ背中を強めに小突かれた。そこまで痛くはなかったが、あえて全力で痛がりながら小突いた張本人、ミズキに「なんだ? 」と一応尋ねた。


「だから、フォーメーションは私とロンが前衛、真ん中にエリスちゃんを置いて、後衛がレイニィとカテラで良いわよね? 」


 なんだフォーメーションの話か。

 ミズキとロンが専ら敵と戦い、エリスは補助に回る。そして俺とカテラで支援しつつ魔術で攻撃……中々バランス取れてるし良い感じだな。


「良いんじゃないか、俺は支援系の魔術は不得意だがな」


「そこら辺は任せといて、水属性は支援系が多いからね! その代わり……攻撃系魔術は任せたぞ! 愛弟子よ! 」


 カテラは思っていたより、俺が師匠と呼ぶことを快く思っているらしい。もはや俺よりノリノリである。


「それじゃ、明日も早いだろうし今日早く寝るとしようや」


 ミズキにしごかれ疲れきったロンが細い声でそう言うと、俺たち他四人は顔を見合せ「おやすみなさい!」と声を揃えた。

お久しぶりでございます



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