011話『メンバーが足りません!』
急に改まって話し始めるミズキに驚くレイニィと、訳が分からない様子のエリスをそのままに彼女は話を続ける。
「Aランクパーティーっていうのはね、そう簡単になれるものじゃないの。危険な依頼クエストも受けなきゃいけない。だからこの三人だけだと、この先必ずどこかで失敗する」
より真剣な顔をするミズキに、聞いているこちらまで力が入ってしまう。
「私たちがまずしなくちゃいけないのは、仲間探しね。最低でも、うーん……あと二人くらいは欲しいわね」
俺もそれはしなければと思っていた。いくらミズキが最高位の白級冒険者だからといって、安心出来るものじゃない。
「二人か……ちなみに俺にはあてはない。ミズキはあるか? 」
人脈の欠片もない俺やエリスにとっては、仲間探しは絶望的だ。
「え、私も無いわよ」
軽く言ったミズキの言葉に、場が凍りついた。頼みの綱のミズキまで……
「何でだ? お前、有名な冒険者じゃなかったのか?! 」
協会の時の周りの人の反応からも彼女が有名なのは間違いないはずだ。
「それが問題なのよね。有名すぎるが故に喋りかけてくれる人も少なければ、まずまず異世界人の私と友達になろうという物好きが少ないのよ」
どうやらこの世界では異世界人への扱いが酷いらしい、俺が思っていたよりもずっと。ミズキは一人で頑張っていたんだな……
「いやいや、私も一応パーティーに入ってたよ? 色々あって解散しちゃったんだけどね……」
同情する俺たちを見てミズキは弁明を始めた。
しかし、彼女の思い出したくない過去に触れてしまったようだ。あまり、深く聞かない方が良いと直感的に感じた。
「あ、あの何て言うパーティーに入ってたんですか……? 」
そんな事を思う俺の横でエリスはそう尋ねた。
この子……デリカシーをどこに置いてきたんだ?
「えっとね、『ルータッタ』っていうパーティーだよ! 」
それでも彼女は笑って答えた。
しかし、よく見ると裏には悲しみが含まれているような笑顔だった。
***
「さて、協会に戻ってきたはいいが、どうやって見つけるんだ? 」
俺たちは仲間探しをするためにまた協会へ戻ってきた。途中、国軍の連中が居なくなっていて良かった。
「何とかなるわよ! 」
こういう時、ミズキは楽観的すぎて困る。なんのあてもなく動き回るのは変わっていないんだな。
とにかく、色々な人に声を掛けまくってみた。しかし、答えはNOばかり……
「なんでよ……なんで白級冒険者の私がいるのに誰も入ってくれないのよ! 」
協会の入口の所で大声をあげる瑞希を見て、通行人たちがクスクスと笑いながら通り過ぎていく。
恥ずかしいったらありゃしない。
「やめてくれ……」
しかし、困ったな。初日からこんなんじゃお先真っ暗じゃないか。ずっとスタート地点で足踏みだ。
「あの、すいません。メンバーを募集してるパーティーがあると聞いて……」
諦めて一旦帰ろうとしているその時に、男女二人組が声をかけてきた。
「えぇ! もしかして、あなた達入ってくれるの? 」
俺が答えようとすると、ミズキが俺を手で遮り食い気味にそう答えた。
「こちらこそよろしくお願いします! 私達もちょうどパーティー探してて、そしたら噂で白級冒険者のミズキ・キノさんがいるパーティーが募集してるって聞いて……スルスナから走ってきちゃいました! 」
スルスナと言えば、ロミンの隣町だな。そんな所からわざわざ走ってきてくれるなんて……ミズキの知名度も捨てたもんじゃないな。
「じゃ、まずは自己紹介だな。俺はレイニィでこっちがエリス。それから……」
「はいはーい! 私が噂の白級冒険者のミズキ・キノでーす! 」
ミズキは嬉しそうに身を乗り出してそう言った。自分の知名度を俺たちにアピールできたのがよっぽど嬉しかったんだろうな。
「俺はロンだ。一応黄級だ」
「私はカテラ、よろしくね。私も黄級よ」
二人とも黄級だと……? 心強いが、悔しい……しかも見た感じミズキと同年代くらいだ。つまり……五歳くらい離れてるのか。
「レイニィさん、そんなに落ち込まないでください……あ、あの私たちは赤級です……」
エリスの励ましが余計に心に刺さる。
良かれと思ってやってるんだろうから一番タチ悪いやつ……
「じゃ、じゃあ改めて我がレーシィへようこそ。これからよろしく頼むな。何しろ赤級なもんで……」
自虐が一番痛かった。誰も笑ってくれなかったもんな……エリスに関しては背中さすってくれたしな……
「え、パーティーのリーダーってレイニィさんなんですか?! てっきりミズキさんかと……」
この悪気ないカテラの一言が俺にトドメを刺した事はもはや言うまでもないだろう。
「さ、さぁ明日からは依頼クエストを受けては鍛錬を積み、依頼クエストを受けては腕を磨く……地獄の日々が待ってるんだからね!今日はとりあえず解散!」
ミズキはへたれこんでいる俺を見兼ねて、苦笑いしながらそう宣言し、各々帰路へ着いたのだった。
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