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目的

 乗り合いの馬車と徒歩で行ける近場の山で、薬草や山菜、キノコ採取の依頼を請け、日銭を稼いで食いつなぐ。

「金の龍は目指さないの?」

実戦になった途端、人並み以上の出力になった魔法でスッカリ積極的になった美咲が、今後の展望を話題に上げた。特に具体的な方針とか、パーティーの方向性とか話し合っていなかったので、良い機会と思って、皆んなの希望を聞いてみた。

「うーん、良くわかんないな。なんか、今の生活も悪く無いっつうか、陰キャとか、妖怪トリオって呼ばれてた元の世界より楽しく思えるのよね。今の姿で戻れるのかな?あっ赤い髪は不味いかな?」

陽菜の意見に、元妖怪トリオの残りの二人も同じような感覚だった。

「僕は、金の龍に会う事が、大前提って思ってたから、当然、帰るつもりでいたんだけど、そういうのもアリ?うーん、龍に会っても帰れる保証は無いし、120年誰も成功していない事を僕が出来るとは思わないんだよね。」

「じゃあ、きっすうは、何をしようとしてるの?ミイは金髪だから、このまま帰ってもギリOK?」

「学校じゃNGでしょ江渕さん。」

「何でミイだけ上の名前で呼び捨てじゃ無いの?ミイも一緒がいい・・・って、このせい?もう9回も!!」

美咲は、荷物の中からゴム製品を見つけ、一箱12個入りを9個消費して3つ残っていると計算した。

「それね、出会った日、泊まる所が無くて、そういう宿に泊まったの。1個貰ったけど使わなくってね、次の日に七海と3人で泊まって2個貰ったから3個あるの。まだ(・・)使ってないわよ。」

風太は『まだ』が気になったが、気付かぬフリをした。脱線した話を戻し、金の龍攻略について話をした。

「共同制作のマンガって、ゲームが元のラノベって話したよね?コッチの世界ってさ、ゲームの世界観にソックリなんだ。そのゲームの攻略法が、ここで有効じゃないかって思うんだよね。ラストの山には、十分な装備が必要なんだけど、蓮達は自力で大丈夫だって、僕の意見なんて聞いてくれなかったんだ。まぁそれで攻略出来れはそれはそれでいいんだけどさ。」

「じゃあ、装備を万端にして、ラストの山攻めるの?ボクは、こっちに来てカラダ動かすの楽しくなったからそれも良いかな?」

「ああ、装備を集めるのも他の山を攻めるから体力勝負だけど、ラストの山は、蓮達に任せたほうが良いと思うんだ。きっと僕らが準備しているうちに、彼等はAランクになってると思うんだよね。最強の冒険者に最強の装備で挑んで貰おうと思って。」

「きっすう、お人好し過ぎ!大好きな葵が、四六時中イケメンに囲まれてるのって平気なの?あの3人って、バスケの強豪校蹴って、葵目当てでウチに来たんでしょ?」

「いや、嬉しくは無いけどさ、僕は僕の出来ることをしようと思ってるだけだよ。」

 ゲームの攻略を説明、イベントでアイテムゲットした山を攻めて、ゲーム通りになるか検証して見る事になった。


 店で手に入る剣と盾を3人分購入、最弱だけど仕方がない。風太は一応冒険者として山を攻めていたのでFランクとしてはまぁ上等な剣と盾を持っている。今回挑む初心者向の山ならば、丸腰でも攻略できるが、装備強化の機会に遭遇した時に、対象の装備が無ければなんのメリットも無いので最強装備の種として用意していた。

 雑魚魔物を蹴散らしながら山を登った。魔力コントロールが苦手の陽菜は、七海救出の時以来、全く問題無く魔法を使っている。魔力量が少なく、直ぐに枯渇状態に陥っていた七海も、今までの苦労が笑える位に自由に使っていた。

「ミイも大丈夫!」

以前は霧吹きみたいだったという水魔法は、しっかりと氷の刃になって魔物を貫いた。色々試して魔法としては全て成功。飛ばした刃が当たらなかったりで改善は必要だが、そのうちに慣れるだろう。


 途中、目立たない獣道に入り奥に進むと小さな滝があった。

「ゲームの通り!あの滝を剣で斬って!あ、僕がやるから、真似してね。」

風太は靴を脱いでズボンを膝上まで捲って、水に入り落ちてくる滝の下に行って、剣で滝を斬った。剣のレベルが1つ上がったはずだが、ステータス表示が見られないので、実感はわかない。女子3人は靴だけで、元々ショーパンなのでサクサクと滝斬りを済ませていた。


 メインルートに戻り更に登る。風太の剣は+7から+8なのでそれ程の進歩は感じなかったが、ノーマルから+1になった3人は、切れ味の違いに驚いていた。

 途中、持ってきたおにぎりでランチタイム。空腹のお爺さんがやって来て、おにぎりを強請る、一つあげると、祠の地図が貰える。ゲーム通りなので、おにぎりは余分に用意してあった。

 地図を頼りに祠に行った。祠には巻き物『鍛冶職人初級』があり、紐を解いて広げるとそのスキルを身に付ける事が出来た。

「コレが無かったら、後から出てくる中級や上級を読んでも効果無いんだ!」

この山のミッションはクリア、一応、頂上のボスを倒してご褒美をゲット、錆止めの塗料だった。

「コレも鍛冶スキルが無かったら使えないんだ、ゲームだとNPCがいるとその分と貰えたけど、どうかな?」

 ご褒美の箱には、剣用、盾用、防具用それぞれ4つ、早速剣と盾に使ってみた。効果の実感は無いが、きっと大丈夫。防具はお金が貯まってからなので錆止めはとっておく。

 雑魚でも数を倒せば、それなりの経験値になり、地道に続けて行けば、それなりにレベルアップ出来る。まぁ焦らずに経験値とアイテムを集めて、最強装備を育てていく。


 下山の時も魔物は出て偶に落すアイテムは登りと変わらなかった。ゲームでは、頂上のボスを倒したら、自動的に麓に戻っていたのでちょっと新鮮な感じで、キャンプの準備を始めた。定住するには、もう少し安定した収入が必要なので、宿より安上がりのキャンプで攻略の梯子をする。

 オニオン5で炊事担当もしていたので、チャチャっとキャンプ飯。なかなかの好評らしく、3人は目を輝かしていた。

 夏休みのキャンプみたいに楽しく過ごしていたが、一つ問題が残っていた。

「ミイの勝ちね!」

美咲がガッツポーズ。どうやら勝手に問題が解決したようだった。

 古道具屋で見つけたテントは小さいのが2つ、3人は無理なので2人ずつになる。そうすると誰かが僕と一緒のテントになってしまう。雨露だけなら外でも我慢できる季節だが、冒険者用のテントには、簡易結界の効果があり、雑魚魔物や普通の獣位なら守られるので外の選択肢は無い。

 美咲が勝ったので、陽菜か七海を予測、一度同衾しているので少しだけホッとしていた風太だったが、枕を抱いてテントに入ってきたのは美咲だった。

「あれ?寝袋は?」

「2番めに勝った陽菜が寝袋ゲットだよ。」

自分と一緒のテントでも、寝袋なら少しは安心出来るかと、奮発して一つだけ買ったつもりだった風太は、シングルベッド並の広さしかないテントで同じ毛布に包まると思ったら、緊張で眠気が吹っ飛んでしまった。

「きっすう。目ぇつむって、着替えるから。」

「あ、いや、僕、一旦出るから、終わったら教えて!」

「いいよ、そんな、気ぃ使わなくても。」

サッサと着替え始め、風太は慌てて背中を向けた。


 脈拍が下がらないまま灯りを消した。美咲は直ぐに寝付いて、しっかり抱き着いてきた。更に脈拍は上がったが、疲れていたせいか、いつのまにか眠れていたようだ。


 翌朝、朝日に起こされ、絡んだ美咲の手脚を解こうとしたが、起こしてしまった。

「おはよ、美咲。」

「おはよ、きっすう!」

「ねぇ、しっかり抱き付いてたんだけどさ、僕が変な気起こしたりしないか不安は無いの?」

「あ、うん、不安は無いこと無いからさ、コレ、1個ずつ分けたの。」

ゴム製品を見せてにっこり。

 朝の生理現象で既にガチガチだったトランクスの中は暴発寸前。なんとか平静を取り戻そうとしていると、

「データでしか解んないんだけど、ソレ、凄いね!ミイって、普段BL描いてるでしょ?どのくらいが良いか検索してたんだよね。」

思わぬ方向に話が飛んで、なんとか平静を取り戻していた。

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