診断
数日が過ぎ、体力の回復はなんとかなり、魔力の具合いを確かめるため、ギルドで測定してもらった。陽菜、七海、美咲は、通常通りに測ってFから変わらず。魔力サポートを受けて、以前はB相当だったがEに落ちていた。葵はBのまま、魔力サポートで能力は上がったがAには全然届かなかった。因みに風太は結果が見えているので測定はしない。
実験や、これまでの経験等等から推測すると、ステータスにあった謎のSは、ブースター、アジャスター、リザーバー、グローワーと、あと何かがSランク。サポートの効果から考えると、残っているSは、その未知の何かと思われる。
戦力ダウンは、風太のサポート能力が落ちたせいなのが判明したので、治癒師に診て貰うことになり、街の治癒院を訪れた。治療法は解らないが、ブースター、アジャスター、リザーバーがEで、グローワーがF、唯一残ったSは魔具活用だった。鑑定のブレスレットとか、一部の魔具が風太しか使えなかったのは、このスキルが影響していたようだ。治癒師の師匠が、金の龍の街で治癒院を開いているそうなので、そこで診てもらう事になった。風太は葵が一緒に来てくれるか不安だったが、女子4人の中では決定事項だった様で、美咲はポーチを持ってきて、
「きっすう、ハイ!葵の分、出してあげて!」
風太は、会えるかどうか解らない頃から、葵用の武器類を合成して育てていたが、美咲が知っているとは思っていなかった。
「アレ?バレた?って顔してるけど、あたし達も知ってたわよ、きっすうの隠し事ってしっかりFランクね!」
陽菜と七海が見合って笑うと、葵もニッコリ頷いていた。
ヒールと結界でのガードが専門の葵向けに、ガチガチのガード重視と魔力回復をサポートするアクセサリーと、『IX+57』の盾。剣は育成中で『Vl+51』で付加機能が6つ。一般的に『II』で2つの付加機能があれば驚きだし、『+50』は人生で一度お目にかかるかどうかってレベルなので、既に充分に育っている。
途中、カンタンな山を攻めてみる。冒険者なので、生計を立てることがメインだが、葵の剣を『IX』にするのと、用途に合わせて付替え出来るように、アクセサリーを集める事、それと、それぞれの弱点克服も同時に目指している。
Eランク相当を選んで山攻めの梯子。サポートが弱まったせいで、以前より手間が掛かったが、危なげなくクリア。ボス撃破のアイテムは、ガイドブック通りだったが、途中の魔物が落すアイテムが減っているように思え、特に、レベルアップに関わるアイテムは殆ど出なかった。
目ぼしい物は、アクセサリー類が少しと、高く売れる魔石くらいで、今までは結構頻繁に出ていた、剣や盾のレベルアップアイテムは1つも出なかった。
安全が確認できたので山をDランク相当に上げてみたが、無事クリア。アイテムは若干良い程度で、金の龍の街に着くまでで、葵の剣が『+55』になっただけ。
街に着いて宿を探す。普段選ぶランクより、少し高い所しか空いていなかった。ロビーで待っていると陽菜が手続きを済ませて鍵を2本、1本を風太に渡した。
キャンプ場では、愛子に貰った一人用テントで生殺しから解放されていたが、宿では初めてだったので、風太はシングルベッドで大欠伸。快適だが、ツインの部屋に4人は今まで通りで自分だけ個室なのは、ちょっと後ろめたい。そんな時にノックの音。
「きっすう、ミイだよ!」
美咲の声だった。ドアを開けると、当たり前のように着替えて、当たり前のように?ベッドに入った。
「今、葵じゃなくてガッカリした?明日は葵の番だからね!」
ちょっとだけ右側によって、空いたスペースをポンポン、そこに寝転がって灯りを消した。
美咲の密着にXLは固く反応はするが、暴発に至ることはなかった。そのまま朝までぐっすり。スッキリ目覚めた風太は、絡んだ手脚を解いてベッドから抜け出した。朝食までのんびりと思ったが、美咲も目覚め、マンガやゲームの話で、暇を潰した。
皆んなで朝食、その後は葵と治癒院へ、陽菜達はお買い物。
「よく生きていられるな!」
前に診て貰った治癒師の師匠は風太の症状をみて驚いていた。魔力の巡りが乱れていて、昏睡状態でも可笑しくないらしい。色々調べ、治癒台で仰向けに寝ると、額に手をかざして数分、心臓の上で数分、鳩尾でも数分、更に下に移動してまた数分。魔力が漲る感覚がしたが、
「今日は一泊していきなさい。」
治癒師のススメで入院することになった。
風太の治療に立ち会っていた葵は、
「お嬢さん、ちょっと良いかな?」
治癒師に呼び止められた。
「あの少年と、あと、同じ年頃でスラッとした男前の3人とパーティーを組んではいなかったかな?」
「ええ、この人達です。」
葵は、美咲の描いた似顔絵(荒んだバージョン)を見せると、
「おお、もしや、あの応急処置をしたのはお嬢さんかな?」
「はい、力及ばず、酷い傷が残ってしまいました。」
「いやいや、真に的確な処置だったぞ、普通なら派手な外傷に気を取られ、毒の浄化が後回しになって、手遅れになるのがオチなんだがな、傷の手当ても、急所を抑えていた。どれ1つが欠け無くとも、少しでもズレていたら、命は日を越えんかっただろうな。」
思わぬ賛辞に葵は、どう反応すべきか解らなかった。
「お嬢さんなら、彼を治せるかもしれん、傷んだ所を直接癒せばならんが、身近な者にしか辿り着けないのだ。骨だとか臓器だとかってカタチあるモノじゃ無いからな、焦らずに探すんだな。コレ持って行きなさい。」
治癒師の虎の巻を貰い、葵は陽菜達との待合わせの場所に向かった。
風太は葵と別れ病室へ。大部屋で、10人位が雑魚寝、全員見掛は病人に見えないが、偶に、弟子らしき治癒師が来て何か治療らしき事をしている。風太も例外ではなく、若い治癒師が額、心臓、鳩尾とその下に手を翳す。
元の世界では、あまり評判の良くないイメージの病院のご飯、全く期待していなかったが、なかなかの味。しかも、症状に合わせてメニューが違うらしい。風太はレシピが欲しい程気に入って、配膳係の人に聞いたが、有耶無耶にされてしまった。
時は朝食の時間に遡る。襲撃ですっぽかしてしまった七海の誕生日を祝う事になり、本人のリクエストを確認した。
「ユニフォームみたいな服、皆んなで着たいな!」
「私はいいよ、私の為に大金使ったんでしょ?今ある服で十分だよ。」
「折角だから、戦隊風とかは?葵は何色かな?」
SFやバトル系を描く七海は色々提案したが、葵は乗り気じゃ無かった。
「きっすうからも、言ってよ!あ、鑑定してスリーサイズ教えて、病院行ってるうちに、ミイ達で揃えるわ!葵のだけ、特別セクシーにしようかしら?」
3人に押し切られ、洋服を新調することになり、治療の後で合流することになった。
「ゴメン、待ったでしょ?」
治癒院から早足だった葵は息を弾ませていた。
「うん、待ったけど、元々、きっすうの治療がメインだから仕方ないでしょ。じゃあ、下見してたお洋服、早く見て欲しいの!」
「ふぅが居ないの気にならないの?」
「ん?誘っても来なかったんでしょ?」
「ううん、入院したの。ユニークスキルが下がったのって、何か解らない何か?説明しようと思ったら余計解んなくなっちゃった。で、その何かを治せば良いんだって。」
「どのくらい入院?」
「今夜だけ。あとは気長に治すわ!」
虎の巻を見せてガッツポーズ。
「葵が治してくれるのね?じゃあ安心ね、お買い物行きましょ!」
元の世界の様なショッピングモールみたいな物は無く、商店街の店を回る。色々迷い、迷彩柄のベストとショーパン、それに合わせてカーキのキャミとニーハイ。防具と合わせやすいチョイスだった。
「あと、きっすうがずっと欲しがっていたアレ、買っちゃう?」
陽菜が指差すのは3人用のテント。しっかりした作りで、価格もお買い得。しかも古いテントを下取りしてくれるので、今までの2人用と、葵が持っていた1人用を下取って貰った。
その他、日用品というかアウトドアグッズを買い揃えて宿に戻った。同じ宿だけど、ツイン一つだけにして、
「えー、恋バナ?バレバレだからさぁ、でも言っちゃう?」
日が変わるまでお喋りして、修学旅行気分を味わった。
翌朝、風太を迎えに行き、新しい衣装を披露。
「えっ、露出多すぎじゃない?」
美咲は、ターンしながら、
「愛子さんのビキニに視線釘付けだったから、頑張ったのよ!」
下着を選ぶのが大変な位のローライズのショーパンと、短めキャミの間からチラリ、いやくっきりと臍が見えている。美咲は目立たないので気づかなかったが、くびれがグッと強調されていた。動くとベストの中から、両方に肩紐が2本ずつ、黒い方が下着だってハッキリしていているので、風太は、遠くの景色を眺めて気を落ち着けた。
「きっすうは、コレ!着替えてから来てね。」
同じ迷彩柄のジャンパーに、カーキのシャツとズボン。女子のと比べると冬服に見える露出だが、実質的には普通の冒険者スタイルでこれから夏に向けてのチョイスになっている。露出には困惑しつつも、七海のリクエスト通り、ユニフォームっぽいので風太はかなり気に入っていた。




