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襲撃

 施設に戻った葵は、何も無かったように朝食の手伝いに加わった。何も無かったように食事を済ませると、何も無かったように教会に行って、信者さん達のヒールの準備をしていた。

「ボクも手伝うよ!」

七海が追いかけると、陽菜と美咲も続いた、簡単な手当てが出来るようになっていたので、戦力になるだろう。風太は気まずさを感じ、魔力サポートに影響の無さそうな施設の隅っこで待機していた。

 ヒーラーが増えて葵は重症者に注力出来て、かなりの効率だったが、

「冒険していた頃なら、もっと踏ん張りが効いたんだけどな、Aランク並みの治癒が出来てたんだよ。あんな小さな子が片目なんて可哀想よね。」

葵は、回復剤を飲みながら愚痴をこぼした。陽菜は葵の手を取ると、

「葵はマン研(パーティー)の一員よね?」

「えぇ、マン研(どうこうかい)よ。」

「だったら、きっすうを信じて!」

葵は何かを感じると、

「もっかいチャレンジしてみるわ!」

女の子の目の治療を再開、みごとに両目の明るさを取り戻した。


 ランチタイム、

「陽菜のお陰で上手く出来たわ、ありがとね!」

「あたしじゃなくて、きっすうのチカラなの!」

陽菜が魔力サポートの事を説明すると、

「ふぅが抜けた後、ヒールが弱くなったのは、そのせいね。蓮達が弱くなって、ヒールの量も質も大変になったから、上手く治せないのかとも思ったけど、やっぱ、ふぅのお陰で、実力以上だったのが、サポート無しで、本来の力しか出なかったんだね!でも、どうして急に?」

「パーティーに参加しないで、ここに残るって言ってたでしょ?それでサポートの対象じゃなかったんだけど、私達のパーティー『マン研』っていうの。あの時、マン研(パーティー)の一員って葵が宣言したから、きっすうのサポートが活きたんだと思うの!」



 治療を終えると、

「ねぇ、温泉行かない?」

葵の誘いで4人は街外れの温泉に向かった。魔力サポートが届くかは不明だが、治安は悪くないし、葵と一緒ならと、風太は心配せずに送り出した。

 温泉には結界等はなく、中に入っても、風太のサポートは届いていた。のんびり浸かって、ロビーで寛いでいると、

「コレ、ふぅの好物のレシピ、ふぅママとうちのママに習ったのを、コッチで手に入る食材でアレンジしてるの、良かったら使って!」

「「「良くないに決まってるでしょ!」」」

3人が、声を揃えた。

「それって、自分が居なくなる時のパターンよね?きっすうが、どんだけ会いたがっていたか解らないの?」

珍しく七海が大声を出した。

「ふぅに娼婦なんて似合わないよ。」

「そりゃ、気にしないって言ったら嘘になるかもしれないけど、きっすうは乗り越えたんだと思うよ。」

陽菜が諭すように言うが、

「ふぅが許しても、私が許せないの!」

美咲は妙に落ち着いた口調で、

「葵はさ、美人で優等生でスポーツ万能だからさ、下の立場がわからないんじゃない?ミイはいつも、助けて貰う側だったけど、葵はそんな事無かったでしょ?偶に、こっちに来てもいいんじゃない?」

葵が反論出来ずにいると、

「マンガのキャラだったらさ、今カノにカレシの好物のレシピを渡す元カノって結構イヤな奴よね、葵の場合、善意しか無いの解るからいいけど、気を付けたほうがいいわよ。」

七海の分析に葵は赤くなって謝った。

「きっすうに黙って居なくならないって約束してくれたら許してあげる。」

「あっ!駄目だよ七海、あれもお願いしとこ!」

湯上がりの影響でなく、真っ赤になった3人は、いきなり滑舌が悪く、トーンもボリウムも急降下。葵が耳を澄まして聞き取る。

「きっすうのお嫁さんになったら、第4夫人まで認めてね。」

一夫多妻制で、正妻が認めた人数まで娶ることが出来る。葵も更に赤くなって、

「じゃあ、この中の誰が正妻になっても、第4夫人までって約束でいい?」

冷たいお茶(麦茶風)で乾杯、帰る支度を始めたが、一斉に目眩を感じ、風太のサポートが途切れたのが解った。慌てて馬車に向かうが、ガラの悪い男達4人が行く手を塞いだ。

「バラバラに潰せば楽なもんよ。」

先日返り討ちにした時に、逃してしまった盗賊達だった、

「女が一人増えたな、順番待ちにならんくて好都合だ。」

素の魔力では、男女の腕力差を埋める事は不可能。押し倒された葵は、

「私がキッチリ楽しませるから、他の子は見逃してくれない?」

「ヘッ、面白そうだな、取り敢えず試してみっか!お前ら他の女、見張っとけ。」

葵は、男達をソファーに並べ、ボスらしい男のベルトを外し、ズボンとトランクスを下ろして、固くなったモノに浄化魔法を掛けてから軽く握った。右手がゆっくりと上下して、

「先ずはご挨拶に序ノ口から、皆さん順番ですから、少しだけ待っていて下さいね。」

同じ事をあと3回繰り返すと、ボスらしい男から順番に眠っていった。息を荒くして揺れ出して、服を脱いだと思ったらお互いに触ったり舐めたりし始めた。

「よし、こんなもんね。ふぅが心配ね、先ずは施設に戻りましょ!」

絡み合う盗賊達を放置して馬車を走らせた。


 施設に残った風太は、温泉が羨ましいと言う子供達を連れて、近くの銭湯に来ていた。そう頻繁に風呂に入れるのはかなりの富裕層なので施設の子は週一だけ。銭湯の方も、日曜休みで一日置きに男湯、女湯交互に営業している。今日は男湯なので、10歳前後?小学生くらいの子を5人連れての入浴だった。水遊び目的だった子供達をしっかり洗って、風呂のマナーを教え、さあ、上がろうかというタイミングで武装した男達がなだれ込んできた。丸腰どころか真っ裸の風太は、洗面器を盾に応戦し、なんとか子供達を逃し、奪った剣で応戦するも、圧倒的な戦力差は埋められず、力尽きてしまった。風太の呼吸が無い事を確認した盗賊達は、

「ふん、ふざけた事しなきゃ、長生き出来たのにな、俺達も早く、女の方行こうぜ、結構な上玉だったよな。」

葵達のいる温泉に馬車を走らせた。


 子供達が帰った施設は大騒ぎ、愛子が銭湯に走ると、哲は子供達を既に帰った、ヒーラー達へ伝令を頼んで、ありったけの回復剤を持って愛子のあとを追った。

 愛子は途中、盗賊らしき馬車とすれ違った。銭湯は裸で逃げた他の客が戻って服を着ている所だったが、愛子は気にせずに浴室に駆け込んだ。倒れている風太は剣が腹を貫通していて、床は真っ赤に染まっていた。息も脈も無いが、刺さっている剣が、徐々に抜けていき、カランとタイル貼りの床に落ちた。

 

「んー、やられ過ぎたな。」

大きく欠伸をして風太が起き上がった、

「うわっ、フラフラする、こんだけ出血したら貧血だよね。」

「ふ、風太くん?さっき、息してなかったよね?」

「ああ、コレ!」

風太は、致死レベルのダメージでも、ギリギリのところで命を繋ぐ事ができる、合成アクセサリーの組み合わせを説明した。

「首を落とされたり、仮死状態の時にトドメ刺されたりしたら流石にダメだけどね。」

 ストレッチを試している所に葵は達が駆け付けた。全員でヒール、

「ボーっとしていた頭がスッとしたよ。」

 哲も着いて、回復剤を煽った。ヒーラーの往診も受け、取り敢えず真っ直ぐ歩けるようになって、施設に戻った。十分に栄養を摂って睡眠。頭が枕に付くかどうかで爆睡し、目覚めたのは3日後の朝だった。

「おはよ、きっすう!」

枕元で看病していた七海が、皆んなを呼びに行った。

 バタバタと集まって涙目の4人は、3日間、眠り続けていた事や、魔力サポートが途切れていることを伝えた。

「心配かけてゴメン、ちょっと、自分のステータス見てみるよ。」

しばらく装着していなかった鑑定のブレスレットを付けて自分を調べた。

「あれ?変わってない?」

一番に気を引いたのは、性別の表記が変わっていなかった。思わず口にしそうになったが、グッと飲み込んで、他をチェック。『正常』表記に安心し、他で変わっていたのは、謎の5つのSが、EEEFSになっていた。

「XLのあとだから、スモールのSだと思ってたけど、スペシャルのSだったみたいだね。」

 そう言って笑い、無意識に葵と目を合わせてしまった。葵のステータスを見たく無いので、鑑定のブレスレットを付けていなかったが、一瞬で葵のステータスが脳に反映した。風太が見たくなかった性別の表記、『女99+』を想定していたが、まさかの『処女』、娼館で裏方だったとは思わないし、風太自身との事もカウントもされていなかった。それからユニークスキルにSが一つ、多分ヒールだろう。想定外の事では、ブランクになっていると思っていた、名字が『来生』になっていた。勘違いじゃ無かったら嬉しい誤算かな?少しのんびりして、復活を確認するまで、施設で厄介になる事になった。

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