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解放

 八合目まで登ると、広い草原が現れた。急な景色の変化より驚いたのは、ガイドブックに載っていない魔物が群れていた。Cランク相当なので、マン研にとっては処置可能な相手だが、新人達は既に大ダメージを受けていた。慌てて助けに走り、魔物の気を引くように、美咲が雷土魔法を・・・?出せない。陽菜もダメ、

「ボク、失神するパターン?」

七海は魔法を試さなかった。

 風太は石を投げつけようと、スイカサイズの石を持ち上げようとしたがビクともしなかった。

「指環の効きめが切れてる!魔力を打ち消すエリアみたいだ、物理攻撃しか無いな!」

 風太は剣を抜いて、魔物の群れに飛び込んだ。愛子も続いて、バタバタと斬り倒していく。陽菜達は、お互いに背中を預けながら、魔物に包囲された、新人達に合流、包囲の輪を少し大きくした。美咲が拾った弓で矢を射る。精度は滅茶苦茶でも、的が多いので百発百中?飛び道具が苦手なのか、動ける魔物はサッと退いて行った。

 愛子は草原の周囲を調べに行き、風太達は新人達を応急処置。包帯を巻いて止血のマネごと位しか出来ずにいたが、『パリン!』音か何かか解らないが、割れたような感じがした。同じように感じたのは風太だけではなく、陽菜達はそこで魔力が戻り、次々にヒール、新人の中でヒールが使える人も、参加して、全員が(素人判断では)回復出来た。

 新人達がお礼に何かと尋ねるので

「じゃあ、魔石の回収をお願いしてもいいかな?倒れてるだけのヤツもいるかも知れないから、ソコ注意して、怪しいのは先手でトドメを刺してね!」

 愛子がテキパキと指示、恩人に無報酬なのは、助けられた方も気まずいので丁度いいお使いなのかも知れない。


「魔法封じの結界だったんですね?」

風太の問いに愛子は、

「草原の端のほう、入った時にヘンな感じした辺りを調べたら、いかにも最近掘って埋め戻した所があってね、掘ってみたら、水晶玉が埋まってたんだ。割ったらああなったってわけ。」

「1個じゃないよね?」

愛子が頷いて、探索が始まった。ブレスレットの効果も復活しているので、グルリ散歩程度で回収完了。広範囲に強力に働いていたのは、割ったのを入れて15個で構成されていた為だった。


「ん?さくらさん?」

道端に倒れている女性を見て、風太が声を掛けた。愛子が不審感を持ったガイドで見かけは30過ぎ、

「聞いた話しとも、きっすうの似顔絵とも違うけど?横顔だから仕方ないか。」

陽菜は不思議そうに近寄ろうとしたが、

「待って!」

愛子が制止、風太に鑑定を求めた。


白鳥 佐久良 正常(变化)

人間 67歳 女14 A型


失神とか睡眠とかじゃなく正常って事は倒れたフリ?距離を取ったまま、

「さくらさーん、お久しぶりでーす、元オニオン5の風太でーす!起きて下さーい!」

芝居がバレたさくらは、一応芝居を続け、苦しそうに起き上がった。

「ガイドさんが、弓は魔物が興奮して余計危ないって言うから使ってなかったのに、彼女が射ったらあっと間に逃げ出したんですよ!なるべくバラけた方がいいって言うから、そうしてたら、全然歯が立たなくって、逃げてるうちに偶然合流したら、魔物が距離を取るようになったのって偶然ですかね?」

「取り敢えず、ギルドに報告ですね、一緒に・・・」

愛子の話しが終わらないうちに、さくらは、風太に魔力弾を撃ち、クルリと背を向けて逃走を試みたが、盾の反射であっさり捉えられてしまった。


 ギルドに付き出すと、臨時メンバーで入ったパーティーが全滅して、お宝を持って行方不明になる事件が忘れた頃に発生していたそうだ。容疑者はいつも女性だが、年齢も背格好もバラバラでだし、40年以上も前からの事なので、過去の事件を模倣していると思われている。居合わせたギルト職員も何人も被害にあっていた、色々情報交換して風太は、

「夕食の時は決まって赤ワイン、魚の時も、鍋の時も。それで飲み終えたら・・・」

「「「「ああ、生きてて良かった!」」」」

被害者全員の声が揃った。

 佐久良は自白魔法での尋問が決まり、かなりの間、塀の中で暮らすことになりそうだ。

 魔石の買い取りも済んだ頃、カエルの金を売りに行っていた愛子と七海が戻ってきた。

 愛子からの借金を含め、目標の二千万はクリア、今日の魔石は、直ぐには現金にならないのでそのまま持ち帰った。


 馬車で待っていた陽菜と美咲は満面の笑み。

「見てコレ!今日の新人さん達がね、お礼にご飯って言ってくれたんだけど、明日早いし、今にでも発ちたいって言ったらね、魔石灯付けてくれたの!」

御者台のひさしの左右の端っこにサーチライト的な照明が付いていた。


「ギルドからも、プレゼントです。灯りがあっても、1頭じゃバテますからね!」

馬を1頭繋ぎ直して二頭立てにしてくれた、今回の救出を高く評価したようだった。


 翌朝の出発と考えていたが、折角なので、夜のうちに出て2日間ぶっ通しで馬車を飛ばした。一旦施設に帰り、哲を乗せて王都に向かった。また2日間、夜を日に継いで走り、王都に到着した。

 娼館にいた事を、風太達が解っていない設定にする為、娼館での交渉は哲が行い、意外にあっさりと交渉成立。風太達は葵の解放を確認しただけで会わずに、金の龍の山に向かい、葵は哲と愛子が引き取って乗り合いの馬車を乗り継いで施設に連れ帰った。


 山を攻めながら金の龍の山を目指す。最強装備の目処は立って、愛子に借りた六百万を目標に、山を選んだ。

 借金が高額になると、金銭感覚が麻痺して、普段の節約なんて気にしなくなるケースも少なくないが、元々気の小さい4人は、たまの外食も、メニューで重視するのは価格だった。それを察した冒険者が寄ってきた。

「あれ?来生じゃん!なんでお前がこんなかわいい娘連れてんの?しかも3人も!」

サッカー部の連中だった。

「お前なんて、マン研の妖怪トリオで十分だろ?葵といい、この娘達といい、どうやって騙してんだ?」

「俺達といたら、そんなショボいもん食わなくてもいいんだぜ!今からでも、俺達のテーブルに来いよ!こいつのどこが良いんだ?」

美咲の手を引こうとすると、バチンと電撃が走った。

「どこがいいって、背が高くて、可愛くて、優しくて、料理が美味しくて、一緒に寝ると暖かくて、布団蹴飛ばしたら直してくれるし、とにかく好きなんだからそれでいいでしょ?あとね、サッカー部のマンガ描いたけど、アンタ達なんかがモデルじゃないから!」

一年の時、勝手にモデルにするなって、学校祭に出せなくなったって事件があったのを風太も思い出した。美咲だと気付くと陽菜と七海もしげしげと確かめていた。

「布団の件は勘違いされそうだから、言わなくて良くない?」

「じゃあ、床上手?」

「もっとダメでしょ!」

美咲はペロりと舌を出した。

「何、いちゃついてんだ?」

「あぁ、ゴメンゴメン!イメチェン、ビックリだろ?メガネ外したらこうなったんだよ。で、なんか用?」

雲行きが良くないと感じたサッカー部員達はすごすごと自分達のテーブルに帰っていった。

 

 安宿に泊まって山攻め。雑魚ばかりの山だけど、イベントが隠れているので、早朝から登った。六合目に湖があり、湖畔を辿って対岸に行くと魔力アップの泉がある。湧水を飲むと、弱点を改善する効果がある。今回も、ゲームの知識通りに湧水をゲットしたが、風太には効果なし、3人は改善したい項目はそのままで他が少しずつ上がっていた。

「きっすうと一緒なら問題無いんだから心配しないで!」

一応、山頂のボスも倒して魔石をゲット。程々の収獲で山を下りた。

 馬車に戻ると、周りに罠が仕掛けてあった。七海が雪玉を飛ばして発動させて、タイミングを合わせて結界で隠れると、昨夜絡んできた3人が来て、

「なんだ、あれくらいの罠で消えちまうのか?やっぱ見掛けは変わってもマン研なんてそんなもんか。」

 3人はちょっとしたイタズラのつもりが、跡形もなく消えてしまい、ビビっている感じるだったので、居なくなるまで隠れて、馬車でそっと後をつけた。3人がキャンプ場にはいってテントを張ったので、同じ様に罠で馬車を囲んだ。

 結界で隠れたままテントを張って、夕食の支度。暫くすると仕掛けた罠が発動した。上手い具合いに掛かったようで、馬車の周りをぐるぐる、ぐるぐる、ひたすら歩いていた。

 夕食を済ませ、早目に就寝。と、思ったら、

「「「お誕生日おめでとう!」」」

携行食にロウソク。

「ケーキ作るスキルも道具も食材も無いから、これで我慢してね!」

目を丸くした風太に、サプライズ成功と、他のメンバーはご満悦。少し甘くした携行食をかじって、風太の19歳を祝福した。


 朝日と共に起きて次の山に向かう。ついでに、夜通し馬車の周りを歩いていた罠を解除。

「馬車の周りに罠を張るのって最近の流行りなのかしら?」

馬車の小窓から手を振ってキャンプ場を後にした。

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