サイコロを振れ、勝負だ!
人は絶対絶命の危機にあった時、神に祈る、泣き叫ぶ、現実逃避するなどの行動を取ると言われる。
此処にも現実逃避する3人の男達がいた。
3人が乗る麻薬を満載した潜水艇は、密輸する国の海岸数百メートル程の沖合の十数メートルの海底で擱座している。
救命艇や脱出道具など積んでる筈も無く、3人は数時間後には窒息死する運命だった。
しかし彼らはそんな事お構い無しにギャンブルを行っている。
もっとも、擱座した原因は潜水艇を操舵しながらチンチロリンを行っていたせいだったのだが。
「「ヤッター! ションベンだー!ハハハハハ」」
「チクショー!」
「「ハハハハハ、一二三でやんのサッサッと倍額支払え!」」
「クソー」
「ヤリー! ゾロ目だぁー! ホラホラ、お前ら早く3倍額寄こせ」
「「…………………………」」
「ハハハハハ、運が向いて来たー!
今度は四五六だー!」
「ハァ、ハァ、ハァ、何か息苦しく無いか?」
「ハァ、ハァ、ハァ、確かに息苦しいが、そんな事より、サッサッとサイコロを振れ」
「ハァ、ハァ、ハァ、勝負だ!」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハハハ、目なしでやんの、ハァ、ハァ、もう駄目だ………………」
「ハァ、ハァ、つ、次に生まれた時には、チンチロリン何かに手を出さないぞ………………」
「ハァ、ハァ、俺もだ………………」
「舟が出るぞー」
3人の男達は近くから聞こえた大声で目を覚ました。
「「「此処は何処だ?」」」
男達は目を擦りながら周りを見渡し、「舟が出るぞー」と大声で告げている船頭に尋ねる。
「此処は三途の川の河岸だ、舟に乗るなら1人六文銭寄こせ」
男達は財布の中を覗く。
財布の中には水に濡れボロボロになった六文銭の切れ端があるのみ。
「俺、3文しか無い」
「俺は、1文」
「俺は、2文」
「「「……………………」」」
3人の男達は顔を見合せたあと同時に叫んだ。
「「「サイコロを振れ! 勝負だ!」」」