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白い魔力2

 

「それがよくわかっていないんです。なにしろ言葉を喋るまで成長出来ないことがほとんどなので。魔力の色がそのうち他の色に変わればいいんですけれど、白のままでは希に成長しても、何も魔術が使えない上にとにかく病弱なのだそうで。だから白の間は大抵は家の奥で大事に育てられます。でもどんなに大切にされていても、だんだん弱ってしまうらしく……。だからこんなにお元気なマルガレーテ様は、本当に奇跡なんです」


「私は今までずっと基本的には健康だったの。だから本当にびっくりよ」


「でも王宮の神官様が判定したのなら間違いは無いはずなんですよ。ですから本当に奇跡としか……。あ、でも魔力が白の子が生まれると、その家は繁栄するという昔からの言い伝えがあってですね。だから魔力が白だとわかると、その子はとても大事にされるんですよ。だから、マルガレーテ様はこの王宮からは出してもらえないのではという噂もあって……。もしかしたらこんな寂しいところにいるくらいだったら母国にお帰りになりたいかもしれませんが……」


「あらそれは無いから大丈夫。それにここは静かでいいところだと思っているわ」


「まあ、それなら良かったです。王妃様もここのみんなも、こんなにお若いのにこの離宮に送られるなんて、なんておかわいそうにって言っていたんですよ。まだ病気にもなっていないのにって」


「じゃあここは病気になると来るところなの?」


「……ここは、元々はご病気になった王族が療養するための離宮だったのですが、最近では王族が最期を迎える場所としての方が知られているのです。ここに入ったら生きては出られないと、不吉な場所だとされていて……。なので、王城の人は基本近づかないし、ここにいる私たちも王城への出入りは禁止されています。頼めば必要なものは手に入りますが、基本この離宮の敷地からは出られないのです」


 そう言うリズは、マルガレーテにとても同情する目をして言った。


 つまりはマルガレーテは、この離宮に捨てられたということのようだ。

 どうせ魔力が白ならばそのうち弱って死ぬだろうとでも思われたのだろう。そして弱ってからここに移すよりも、ならば最初から移してしまって手間を省こうということかもしれない。


 第一王妃様の行方不明の王子と婚約させて、第一王妃様側の人間としてまるごと追放されたと言えばいいのかも。


 なるほど、これがこの国の「無能」と判断した者への扱いということなのだろう。


 母国とは正反対だけれど、魔力や魔術によって扱いが変わるということについては根本は同じようなものなのね、と思わず皮肉な笑みが出そうになった。


 私はどこに行っても厄介者になってしまうみたいね。

 でも、いわくはどうあれここの人たちは良い人が多そうだ。 

 

 なら、ここでの生活を楽しめばいいんじゃない?

 

 リズがどんなにここが寂しいところだと言っていても、それでも捨て子だったマルガレーテから見たら十分に立派な場所なのだから。

 あのプライドの高そうな人たちから離れて、ここで静かに過ごせばいいのよ。 

 

 マルガレーテはそう思って、まずその第一歩として新たな家になった離宮の探検に出かけたのだった。


 だって、くよくよしていてもしょうがないじゃない? ねえ?




 次の日のお昼前、マルガレーテは第一王妃様にお見舞いとご挨拶をするために、第一王妃様の寝室を訪れた。


 王妃様の寝室はさすが王族と感心してしまうほどの広さと豪華さだったけれど、そこに横になる王妃様は明らかに疲れて憔悴しているように見えた。


「はじめまして、マルガレーテと申します。縁あってこれからこの離宮で暮らすことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」


 部屋を入ってすぐのところで緊張して挨拶をするマルガレーテに、王妃様は弱々しく顔だけをマルガレーテの方に向けてマルガレーテを見ると、にっこりして答えてくれた。


「よく来てくれたね、マルガレーテ。お会いできて嬉しいわ。私がこんな状態でごめんなさいね。良かったらもっとこっちにきてお話しましょうか」


 そう言って王妃様は、マルガレーテを枕元に呼んでくれたのだった。


 しかしマルガレーテが王妃様の近くまで進んだ時、それまで王妃様のベッドの脇に大人しく座っていた黒い犬が突然立ち上がって、王妃様を守るようにマルガレーテに向かって唸った。


「クロ、おすわり」


 王妃様がそう言うとクロと呼ばれたその犬は渋々といった雰囲気でまた座り直したのだが、それでもまだじとっとした目でマルガレーテをにらんでいた。


「まあ、王妃様にとても忠実な犬なのですね」


「なんだか知らないが、最近ここに居着いてねえ。私の近くから離れようとしないから勝手にさせている。今のところ私の命令だけはよく聞くんだ」


「居着いたのですか」


 王宮の、しかも奥の奥にあるこの離宮に……?


「そう。そして出て行く気はないらしい。まあ侍女たちは可愛いと言って喜んでいるから好きにさせている。よしよし」


 そう言って王妃様が弱々しくその犬を撫でると、その犬は嬉しそうに尻尾を振っている。

 マルガレーテは密かに、この大きな黒いもふもふのワンコともいつか仲良くなれるといいなと思った。

 

「お加減はいかがですか、王妃様」


 マルガレーテは王妃様の青白い顔を見て聞いた。


「……残念ながらあんまりいいとはいえなくてねえ。もうほんと嫌になるね。この私が呪いに負けるなんて」


 そう言っていかにも忌々しいという感じに顔をゆがめる王妃様。

 それを聞いてびっくりしたのはマルガレーテだった。

 

「呪い、ですか?」


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