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船出

初投稿です。

よろしくお願い申し上げます。

気候もよく、豊かな土地、活気のある海、豊富な資源を蓄えた山。

自然のおりなす山海の城壁に守られた小国ハインザーク。

小国ながら、大国とも対等に渡り歩いて来れたのは、攻め入る隙を与えない優れた王の統率力と、王に応えんとする有能な家臣達がいるからだ。

外から崩せないと悟り、近隣の国々が行う事はただ一つ。

身内を送り込む事。

こちらの事情など考えもせずに、彼女が強引に婚約者の座に収まったのは最近の事。

王城に入ってきた時の傲慢さは、甘やかされて育ってきたのがよく分かった。

こんな小さな国に何故自分が嫁がなければならないのかと、癇癪を起こしていたとも聞く。

それが目を見張るような身代わりの早さで媚びてきた時は、うんざりしたものだ。



「この旅が終わったら、やっと結ばれるのですね。」

「そうですね。」

「いってらっしゃいませ。クロード様。」


険しい山を隔てた隣国で最も美しい姫として囁かれる婚約者が微笑む。

国同士で決めた婚約。

それは王太子としての務め。

国の為に世継ぎを残す事。

兄弟のいない俺に架せられた役目。

いずれは彼女と結婚し、父の後をついで、この国の王となる。

この旅は、その前の果さねばならぬ事。

父王と母、祖父母、婚約者や多くの民が見守る中、俺は船に乗る。

俺は王太子としての務め果すべく海に出た。



国を発って3日。

海はまだ穏やかで、荒れ狂う姿はない。

俺の国には昔からのしきたりがあり、王位を継ぐ者――王太子は遥か南の海に浮かぶ島に小さな島へ旅に出る。

その道程は楽なものではない。

波も荒い海域で天候が荒れる事も多く、無事で帰って来れるという保障も無い。

過去、何度かあの島を目指し出向した他国の船が海に底に沈んだらしい。

自然の摂理によるものか、招かれざる者達を何かの力が阻んだのか、それは分からない。

何も知らない他国の者は、そんな危険な旅ならば、行かなければいいという。

俺が船に乗り込むと共に、早々に馬車に乗り込んだ姫君も例に違わず言ったものだ。

婚約者である隣国の姫も、危険な旅など止めてしまえばいいと言った。

彼女の父王までもが介入してきた。

旅を取りやめろというのであれば、結婚も無かったものにすると話しただけで、以降、旅を止めろとは言っては来なくなった。

元々強引に押しつけてきた婚姻話しだ。

こちらには断ったところで、困る事はない。


この旅を無事に終える事以外に重要な事は何一つないのだから。


名目上は、そこに住んでいる魔女に国の行く末を占ってもらい、魔女を通して神に長く安寧な国であるように祈りを捧げてくるというもの。


この国の王となる者にかせられた宿命ともいうのか。

王となる事を運命つけられた日、俺は何か大切なものを奪われた。

とても大切な何か。

それはきっと、この旅の果てにあるもの。

それを取り戻す為に旅に出る。

必ず取り戻す。

俺の大切なものを。




途中でいくつかの港を経由して進む事になる船旅は、少なく見積もっても片道半月はかかる。

そしてここが島に最も近いとされる港。

ここから先に陸地はない。


この旅が終わったら……俺の人生は変わる。

遥か遠くまで続く、水平線を眺めながら、この先に続く未来を思った。

俺はどこまで行くんだろう。

俺の未来はどこに繋がっているのだろう。

行き着いた先は何が待っているのだろう。




先の見えない俺の旅の果て。

この先で俺は運命の人と出会う事になる。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





また、お付き合いいただければ幸いです。

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