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間奏
記憶の底にあるあの光景は、一体いつのことなんだろう。
きっと誰もが、そんな記憶を持っているんだと思う。
時と共に、記憶の底にあった欠片は埋もれていってしまう。海の底に落ちたビンが、一秒ごとに新しい砂や塵に埋もれていくみたいに。埋もれたビンは海の底との境界線がだんだん曖昧になっていって、そのうち本当にあったのかさえ分からなくなって、やがて忘れられてしまう。
でも時々、その破片が砂底からひょっこりと顔を出すときがある。
それが、あの光景。涙に濡れて、ぐちょぐちょになった光景だけど。