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見て見ぬふり
昔僕は虐められていた。
住んでいた町の町長の息子である同級生に。
町に住む人は誰も町長に逆らえない。
町に住む大半の人が、町長が営んでいる会社で職を得ているかその会社が落とす金で生計を立てていたから。
だから学校の先生を含めて町の人は誰も助けてくれず、見て見ぬふりされた。
虐めから逃げるため知っている人が誰もいない遠くの県の高校に進学する。
高校に進学してから1度も以前住んでいた町の人と会うことは無かったのに、就職した会社の親睦会で森林公園に遊びに来たら他の会社の親睦会も行われていて、その中に僕を虐めていた同級生を見つけた。
向こうは僕に気が付かなかったので近寄らないようにする。
それが今、森林公園の中を流れる結構流れが急で水量の多い川に酔った同級生が落ち流されているのを目撃した。
周りに僕以外の人はいない。
だから僕は見て見ぬふりをすることにした。